マジックチャージャー
「また考え事か? そんなに気になるんなら一回王都とやらに行けば良いじゃねぇか」
色々考えているとボクがまたそうしていることをお父さんに指摘されます。ニーチェにも指摘されるくらいですから、ここ最近は考え込むことが無意識に多いみたいです。
いっつも何かしてるボクが大人しくしているのが変に映るんだとは思いますけど、ボクだって色々考えることはあるんっすよ。
「そんな簡単なことじゃないよ。ボクに求められていることは戦いになってからだし」
「んじゃどっしり構えとけ。お前が浮足立ってちゃ周りも落ち着かねぇよ」
「そりゃそうだけど……」
だからそう割り切れたら良いけど、そんな簡単には割り切れないよ。焦ってるっていうか、ここでじっとしてていいのかって気持ちはやっぱどっかにあるっすよね。
でも、待機をするのはずっと前から決まってた作戦だし、今更それを適当なことやって滅茶苦茶にするわけにはいかないし。
あー、真白さん大丈夫かなぁ。パッシオさんと離れたらあの人寝込んで起き上がれないんじゃないかな。
メンタルつよつよに見えて、繊細というかパッシオさん関連は完全にクリティカルヒットっすよねぇ。
「あーーー」
「横で唸るな。何かしてねえと落ち着かねぇならちっとは手伝え」
「……へいへい、わかりましたー」
何をしても文句言われるっすね。そんくらいうざったいってことなんでしょうけど。
仕方ないのでお父さんの手伝いをするために次の修理場所について行くっす。
無機質な金属の壁と天井からぶら下がる白熱電球を頼りに僕らはどんどん遺跡の奥に進んでいきます。
ここまで来たことはそういえば無かったっすね。ボクが来た頃はまだ入り口のちかくの部屋ばっかりで、何と言うか色々人が集まる目的が多い部屋が多かったっぽいんすよね。
たぶん、入り口が近いから、そこで準備とか休憩とかしてから外で作業とかしてたんっすかね。
「今日はここで最後だな。ま、コイツが一番厄介なんだが」
「んんん?うわ、何このでっかい歯車と機械」
やって来たのはなんか今までに来た部屋とは全然違うところっす。薄暗いけど物凄く広い部屋の中でおっきな機械の塊と巨大な歯車。
見たことも無いようなサイズっすよ。人間何人分かって話っす。見上げるほどにはデカいっすよ。
照明が足りなくて、上の方は見えないくらいっすね。
「お、来た来た。今日も待っていたよ」
「悪いな。他にも頼まれたことがあってよ」
「こっちも助かっているよ。魔法ならともかく、機械的な分野はさっぱりでね」
そこに待っていたのはさっきボクとニーチェにお説教をしていた東堂さんの姿が。研究所の方じゃなくて遺跡の方に来てたんっすね。
って言っても、こんな大きな機械ってどうやって直るんですか? てかこれなんすかマジで。こんなに大きな機械、直すも何もないと思うんすけど。
「ははは、舞君もここに来るのは初めてだったか」
「そりゃ東堂さん、まだ俺とアンタとここの発掘調査チームの主任のヒョクさんだけじゃねぇかよ」
「そう言えばそうだった。なにぶんこんなもの見せた日には妖精界の人はひっくり返りそうだしね」
3人しか知らないんじゃボクは知りようが無いっすよ。東堂さんもこの辺微妙に適当な人っすよねぇ。
研究者って人種の人はどうにも報連相ってのをしない傾向がある気がするんすよね。特に何かに没頭してる時。
紫ちゃんも研究所にいる時は全然連絡つかないっすからねぇ。
「それで、これってなんなんです?」
「船のエンジンだよ。しかも大型船のね」
「この規模感の大型船用エンジンなんて、今じゃ国お抱えの企業しか持ってない技術だぜ。人間界に持ち帰るだけでも研究者とか開発者は喉から手が出るモノってヤツさ」
「まぁこんな巨大なエンジン。バラバラに分解しても人間界に運べないがね」
ハハハハと笑う東堂さんとお父さんが言うに、目の前にあるこれはなんと大型船のエンジンらしいっす。
船のエンジンってこんなにデカいんっすか。てか、なんでこんなところに船のエンジンがあるんすか?
話を聞けば聞くほど意味不明で首がそろそろ90度より曲ることになりそうっす。