マジックチャージャー
「ふぅ……」
ボクは遺跡から出た色々な物を運び出して台車に載せて、運転手の人に合図を送って出発してもらう。
「悪いねぇマイさん。アンタにこんなことをしてもらうのは心苦しいよ」
「いえいえ。仕方ないですよ。人手不足は何処も一緒ですし」
今ボクがいる轟きの遺跡、その周辺にある発掘調査のためのなんて言えば良いんですかね。キャラバン?普通に調査隊?
とにかく、ボクは妖精界に来て以来ここを帝国とか盗賊とかから守りながらじっと皆の支持を待っている生活をしているっす。
その役回りについてボクは特に不満は無いっすね。裏方の裏方、みたいな立ち位置を強要されているってはたからみたら思うっすかもですけど、ボクは納得してこの役回りをしているんっす。
別に誰かに比べてボクが劣っているとか、弱いとか、使えないとかじゃないんすよ。紫ちゃん曰く、一点特化の能力は対人、対組織相手なら隠してた方が良いらしいっす。
ボクらの中だとボクと墨亜ちゃんがその一点特化の魔法少女。スピードと狙撃っていう一芸だけに完全に能力を全振りしたのは見せびらかすのは良くないらしいっす。
ここ一番のリーサルウェポンだって言ってました。
ボクにはイマイチパッとしなかったっすけど紫ちゃんがそう言うならそうっす。ボクは信頼して、自分の役割に徹するっす。
実際、ボクと戦ったショルシエ側の敵はカトルっていう4本尾の分身体だけっすかね。
あの時は痛み分けで済ませておいたっす。全力でやれば多分もうちょっと善戦出来たんっすけど、少しセーブして戦ってました。
工夫次第で戦えるなってのがボクの印象です。ただ倒し切れるかはちょっと微妙でしたね。
ボクの今の魔法だとすこし火力が足りないんっすよね。分身体っていう存在自体がどうも魔法に対する耐性が物凄い高いっぽいんですよね。
朱莉ちゃんとか千草さんとか、碧さんみたいな火力に振ってる魔法少女なら良いんすけど、ボクみたいに単純火力を犠牲にしてスピードに振っているタイプはちょっとその魔法耐性を抜くのが難しくって。
基本、ボクの戦い方っていうのは超高速で手足に纏った雷魔法を叩き込むって言うシンプルなモノなんっすけど、手数で押すにも中々。
この辺の魔法耐性は紫ちゃんと要さん、真白さんが四苦八苦する部類っすよね。3人とも器用っすから、何とかは出来ると思うっすけど、さっき言った火力特化組みたいに簡単にはいかないはずっす。
墨亜ちゃんも単純火力は無いかもですけど、魔法の弾丸の貫通能力はかなりあるっすからね。一点集中の攻撃を何回か続ければ多分突破出来るっす。
そういう点ではボクは分身体に対してちょっと火力不足と言うか、単純な相性が悪いんっすよねぇ。
スピードで圧倒は出来るんすけど、決定打がお互い無い、みたいな感じになっちゃうんっすよ。
そうなると持久戦になって、ショルシエの分身体の方が有利になっちゃうんっすよね。
流石に魔力量は負けてますから。というか、分身体に魔力で勝てるのは真白さんと紫ちゃんくらいっす。
あの2人の魔力量はバケモノ級っすから。
この待機時間にボクはその弱点を克服したいなって考えているんすけど、これが中々上手くいかないんっすよねぇ。
戦闘スタイルの関係でスピードアップに使う魔力を攻撃に回すと自然とスピードが落ちるっす。
それがそのまま隙になっちゃうんっすよ。高火力の魔法自体は使えないわけじゃないっすけど、足を止めなきゃいけなくて。
元々手数で攻めてたところで手数を緩めればそれはそのまま反撃のチャンスじゃないですか。それが通用するような敵ならそもそも手数で押し切れますし、通用しない敵なら止めたら反撃される。
だから高火力魔法を使おうにも使えないんすよ。ジレンマってやつっすね。