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地獄から帰って来た者


3人の話を聞き終わった私の感想としては心意気というか、今ある覚悟は十分に足りているな、だ。

ニコニコとしている要も特に不満は無いっぽい。


昴達に後でアレコレ聞いてやると声をかけたのは私だが、今回の問答を始めたのは朱莉だ。答えは朱莉が出すべきだろう。

文句ありげに視線を向けられるが、逆にお前が答えろと視線を返す。


「はぁ~」


そこまでやって、朱莉も観念したというか。認めたのだろう。ため息をされた昴達は戦々恐々といった様子でダメなのかとビビり散らかしているようだが。


「わかったわ。実戦方式で鍛えてあげる」


答えはOKだ。3人の師匠は本来なら碧と真白だが、その2人が今ダメになってるからな。どのみちこいつらを鍛え上げてやる必要がある。


どちらにしろ誰かが請け負うようになる。その方針が徹底的な基礎から実戦形式でのパワーレベリングに方法が変わっただけだ。

キツイのがどちらかは言うまでもないだろう。


「ほ、本当ですかっ?!」


「ただし!! 弱音を吐くことは許さないわよ。良いわね」


「「「はいっ!!」」」


溜め息という前フリからOKが出るとは思っていなかったのか、昴達の顔色がどん底みたいな鈍い色から明るい色になる。

明るすぎて星とか光のエフェクトが出てるような気がするぞ。


何と言うか性根が明るいというか、分かりやすいというか。そうだな、まっすぐだよな。この雰囲気は舞に似てるか。


アイツには色々苦労をかけているというか、我慢を強いているというか。ここぞという出番まで表には出て来ないようにしてもらっているところが実はあるんだ。

これは私達の戦略のひとつみたいなものだ。組織だった戦い方を要求された時、舞と墨亜はここぞという場面まで出番を抑えるようにしてある。


普通ならこういうところは嫌がるというか、地味な役回りは損に感じるもんだ。特にスピードタイプでガンガン前で戦える舞を温存する理由は色々あるんだが、アイツはそれを笑顔で承諾した。


メンタルのタフさがしっかりある。我慢強く、目標に向かってひた向きだ。


舞と昴はそういう部分がそっくりだ。そう言えば舞もだいぶパワーレベリングだったな。懐かしいもんだ。今じゃ私達でも手を焼く最速の魔法少女。


昴も化けるかもな。そう思うと少しゾクゾクするような高揚感が湧いて来る。3年前の舞がここ一番での切り札になったように、昴達もそうなるかも知れない。


人間の可能性の高さについては私達が一番よく知っている。


「誰が誰を教える?」


「ちょうど3人だからな。マンツーマン指導にするか」


「異議なし」


さて、ちょうどここに昴達と同じ3人いるわけだし、分割した方が良いだろう。1人で複数人の面倒を見るよりマンツーマンの方が圧倒的に効率が良い。パワーレベリングならなおの事だな。


問題は誰が誰の面倒を見るか、だが……。


「まぁ、私がリベルタだな。飛行能力を活かした戦法を叩きこんでやる。ボコボコにするから覚悟しろ」


「それじゃあ私がリリアナちゃんの面倒を見ようかな。魔法も私がこの中だと一番得意だし、盾の使い方の応用とか氷の魔法がやれることでなんかありそうだし」


「それじゃあ昴は私のところね。喜びなさい。この中で一番キツイわよ。何せドラゴン相手の修行だからね。気を抜いたら火だるまになって死ぬわよ」


ここも少し考えたらすぐに結論が出た。こういうのは1人決まればとんとん拍子に決まるものだ。


リベルタが私。リリアナが要。昴が朱莉。


で修業を付けてやる。この中で一番ドギツイのは言葉通り朱莉のところだろう。私だってドラゴン達に混じった訓練を連日連夜しろと言われたら白目を剥きそうだ。


「「「よろしくお願いしますっ!!!!」」」


それでも昴達は怯むことなく声を張り上げる。良い根性だ。指導する側も腕がなるってものだ。


「ま、まずは怪我を治してからだけどね」


「真白ちゃんに言えばなんとかしてくれるかなぁ。でも、今の真白ちゃんに負担が行くのはうーーーん……」


問題は3人が現時点でボロボロだってことだ。真白が何も無ければ治療を頼むところなんだが……。


と頭を悩ませていたところに風に乗って上から声が聞こえて来た。私達にとってもこの世界にとっても飛び切りの吉報であると共に。


「そうか……。やっぱり、お前はその道を選ぶんだな」


少し、哀しい気持ちにもなる。それは将来的な私達姉妹の別れが来ることが決まったのと同意義だからだ。


「千草、どしたの?」


「いや、何でもない。風の噂が聞こえただけだ。喜べお前ら。真白から治療を受けられそうだぞ」


報告は真白本人から直接あるだろう。無粋なことをするつもりは無い。ただ、真白の決心が聞こえたのなら治療も問題なく受けられる。

浮足立つ昴達を諫めながら、私達は真白のもとに向かうことにした。

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