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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
私立郡中女子学院

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これまでの事、今の事、これからの事


「真白!!真白っ!!真白ってば!!」


「っ」


慌てて飛び出した足を止め、街の中まで戻って来た私達はパッシオの怒号に近い声で、私はその足をようやく止めた。

肩で息をするほど一心不乱に走り続けていた私は壁に寄りかかりながら息を整えると、変身を解いて郡女の制服姿に戻る。


やってしまった。息を整えながら、冷静になり始めている頭にまず浮かんだ感想。

何も考えずに、飛び出してしまった。いくら自分の姿を知っているクラスメイトが突然現れたとは言え、テンパり過ぎた。


焦った、ビビった、恐れた。表現する言葉は多々あれど、やらかしたことに関してはただただ後悔をしてしまうだけだ。

心証はさぞや悪いことだろう。魔法庁とは以前から直接的な接触は避けて来たけど、今回は今まで以上に密接した任務への参加だった。


魔法庁としては受けた恩恵とこれからの事を考えて、それなりの交流はしたいだろうし、今ならパッシオの事についても言い訳が効く。女子モードでの対応さえしっかりすれば身元云々はどうにかなるかも知れないし、正体を明かさない交流でも雛森さんならどうにか付き合いが出来るかも知れなかった。


なにより、これからあの男達との戦いがまだまだあるはずだ。その連携を密にする必要は絶対にある。

その機会を棒に振った今回の行動は、どうしようも無いくらいのやらかしだった。


「……ごめん。やっちゃった」


「……そうだね。僕もこれはちょっと弁明しようが無い、かな。まぁ、やっちゃったものはどうしようも無いよ。これからどうする?」


どうしよう。あの場から逃げ出してしまった気おくれもある。すぐに諸星の屋敷に戻るのも、なんだかなぁと言う気分だ。

と言うか移動手段が徒歩しかない。お小遣いは出ているが、普段は使わないので諸星の屋敷の自室にある。……いざとなったら変身して帰るかな。


なんて思いながら、変身を解いた路地から出るととあることに気が付いた。


「あれ、ここアパートの近くじゃん」


「え?そうなの?」


周囲の風景から察するに、ここは本来の私の自宅。あのボロアパートの近くであることに気が付いた。


もう一か月以上帰っていない。諸星家の屋敷に居ついたのも突然の事で、財布やらなにやらの貴重品の類も残しっぱなしだし、片付けやらなにやら必要になっていることだろう。


……因みにあまり大きな声では言えないのだが、アパートの鍵は普通のカギとダイヤルの鍵があるのだけど、普段からダイヤルの方しかカギをかけていない。こんなオンボロアパートに何がある訳でも無いし、実際取られる物も置いていない。


改めて考えると全く防犯対策もなにもしていない。良くそんな状況で呑気に暮らしていたな、と今なら思うのは、価値観が変わってきている証拠だろうか。


「……戻ってみようか、アパート」


「真白がそうしたいなら良いよ」


今は少し気持ちが落ち着かない。誰かに会うよりは一人で考えたいし、アパートの事もある。私達は久しぶりにアパートに戻ってみることにした。










戻ったアパートの中は一か月半以上は放置していたせいか、酷く埃まみれだった。


「うわぁ、埃だらけ」


「僕降りたくないなぁ。毛が埃まみれになりそう」


歩けば埃まみれの床に自分の足跡が残るくらいの埃の量。パッシオが嫌がるレベルのそこに足を踏み入れ、窓をガラガラと空けて換気をして、床を箒で軽く掃き掃除をする。


自分の事を自分でするのは久々だ。諸星のお屋敷に居つくようになってからは自分の事は美弥子さんにお世話されていることが圧倒的に多い。むしろ自分の事を自分でやろうとすると、美弥子さんに仕事を取らないで下さいと怒られてしまう。


「ザックリだけどこんな物かな?」


「まぁ、最低限だけどね。と言うか、なんか物減ってない?」


「そう?こんなものだったと思うけど?」


簡単に掃除をし終えて、愛用していた座椅子に腰かける。対面の座布団にパッシオが座る。

この感じも久々だ。たった一か月半とかそのくらいなのだけど、随分昔の事のようにも感じる。


何やらパッシオが首を傾げているが、私は特に違和感も感じない。前からこのくらいの殺風景さだったように思う。


「で?どうするの、これから。飛び出して来ちゃったけどさ」


「どうしようか。……このアパートに戻るって選択肢も、あるんだよね」


「そうだね。元々諸星の屋敷に転がり込んだのも、事故みたいなものだったし、君の症状も落ち着いてきているように思う。本来の君が過ごしていたこのアパートに戻ると言う選択肢は、アリだよね」


座椅子に体育座りをして、私は自身の身の振り方、と言うのを改めて考えてみることにした。


委員長の件ももちろん大事だ。これからも追うし、委員長を助けるという意思は勿論ある。


ただ、委員長を始めとした郡女のクラスメイト達とも、諸星の家の人々とも、この街の魔法少女達とも、自分は本来あり得ない形で関わっている。

皆とは根幹の部分が決定的にズレている、歪んだ関係なのだ。それを、正すのにはちょうどいい機会なのかも知れない。


私は、運よく出会った境遇に甘え過ぎているようには、常々思っていた。


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