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任務失敗

今日だけで何回砂埃やら何やらを被ったのか、早く帰ってお風呂に入りたい。髪の毛の中に砂が入ってる感触がして物凄く気持ち悪い。


とりあえずだ。


「このおバカ」


「あいたぁっ?!何するんすかアリウム先輩?!」


盛大な砂埃を上げてこの場にいた全員に砂を被せたおバカ一人の頭に拳骨を入れておく。

少しは考えて行動しなさいな。あーあー、医療班が持ち込んだ簡易の医療キット類まで砂を被せちゃって全く……。


砂を払い、軽く身なりを整え、クルボレレに改めて対峙すると本人はいたって不服そうに拳骨を落された部位を撫でている。

本人に悪気は無いのはクルボレレの性格上よく分かるけど、無さすぎるのはそれはそれで問題。配慮が足りないと言われてもしょうがないので、本人にはそこのところをしっかり分かってもらいたいところ。


「く、クルボレレちゃん……。とりあえず、降ろしてもらって良い、かしら……」


「あ、すみませんでした!!」


「うえっ、完全に酔った……。吐く……」


ここでようやく私はクルボレレの背中に誰かが乗っていることに気が付いた。


少し暗がりにいるのでまだ表情はうかがえないけど、非常に体調が悪そうだ。と言うか、多分クルボレレが何にも考えずに高速移動をして、声音からして女性と思われる人を運んで来たのだと思う。


「きゅぅ……」


同情するようなパッシオの鳴き声からも察せるように、どうやら女性は体験したことのないような高速での移動に耐え兼ねて、完全に乗り物酔いのそれになっているようだ。

可哀そうに……。


「大丈夫ですか?」


「ちょ、ちょっと待ってて……」


心配するアメティアの声を遮り、のろのろとした動作で木陰まで向かった彼女からえづくような声が数回聞こえる辺り、恐らくTVではモザイク処理がされるような状態になっているようす。


あまり酷いようなら治癒魔法を掛けてあげるとしよう。乗り物酔いの類に効果があるかは正直分からないけれど。


「おえっ、し、失礼しました。私は魔法庁、魔法少女部、魔法少女監督課、南東北エリア統括監督者の雛森 鈴と言います。長ったらしくて済みませんが、簡単に言うとこの街の魔法少女を指揮監督管理を任せられている責任者と思ってください」


「私達政府所属の魔法少女の上司さん、って認識でも問題ないよ~」


そして、戻って来た彼女の顔と自己紹介を受けた私とパッシオは、その身体をピシリと硬直させることになる。


ウィスティーさんの軽い補足なんて全く耳に入っていない。普段はきっちりと着こなしているだろうレディーススーツと特徴的な大きな丸眼鏡とショートポニーテールは、つい一ヶ月半かその辺りに久々に再開したクラスメイトだったのだから。


「っ?!?!?!」


もう頭の中はパニックだ。確かに今の職場は国家公務員だとかなんだとか言っていたように覚えているが、それがまさか魔法庁の、しかも直接魔法少女達を監督する立場の割と上の方の立場の人間だとは思いもしないだろう。


いつも通り肩に乗っているパッシオも「あっ、ヤバいわこれ」とか言ってる。言ってるがそれどころではない。


変身解いたら絶対バレる。確信できる。絶対バレる。

だって仮に女の子の身体と言ったって、小さくなった身長と髪の長さ以外はそんなに男の頃の私と大差がない。悲しいことに大差が無いのだ。


しかも俺自身が特徴的な見た目をしている。少なくとも同じ髪色と瞳の人に出会ったことは無い。バレる、絶対バレる。メチャクチャヤバい。誰がどう考えてもヤバい。


「まずは、任務終了お疲れ様でした。結果は、芳しくないと言うのが正直なところですが、なってしまったものは仕方がありません。うっぷ……、開き直るとは違いますが、私も指揮を取れなかったことを踏まえ、皆さんは良くやってくれました。最善の結果ではありませんが最悪は免れたはずです。その心持ちで行きましょう」


冷や汗だらだらの私達を知る由もなく、雛森さんの話は進んでいく。

マジでどうするべきか、悩んだ末に私が出した結論は……。


「それと、クルボレレさんとアリウムフルールさんも多大なご協力に感謝します。特にアリウムさんには以前から無償の協力をしてもらっていることも踏まえて、是非お礼を……って、あれアリウムさんは……?」


「え、さっきまでそこに……、ってああ!!」


背後から聞こえるルビーの大声と、地下研究施設の入り口に施されていたカモフラージュ用の魔法障壁を模倣した障壁が割られる音が響き渡る。


そう、私はこの先の事を何も考えず。その場を逃げ出したのだった。それが正しいことなのかは分からない。テンパった故の急いた選択だと言えば確かにそうだし、考えなしの愚策だと言われればその通りでもある。


本当に、何も考えていない子供のような行動だと思う。ただ、色んなものや事、人に秘密がバレてしまうかも知れないと言う恐怖感。

それに伴って、色んな事が崩れてしまうことを恐れての行動だったことは、自分でも何となく分かっていた。


「……」


「……」


その逃走劇の最中、フェイツェイと雛森さんがちらりと目くばせを交わしていたことは、誰も気付いていない。


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