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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
千夜祭

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千夜祭


「『隷属紋』に操られている間のことは覚えてないとは言わせないぞ、アズール」


胸ぐらを掴み、無理矢理引き寄せて怒りを露わにするフェイツェイさん。


額と額を突き合わせるようにして睨み付けている形相は敵であるはずのサフィーリアさんやピリアに対してのものより数段上の怒りが込められていた。


「っ……。すまねぇ、しくじった」


「しくじった、だと? それで済む事態かコレが。お前がいながらこの始末。お前がやらなきゃいけないことをなんで新人が命をかけてやっている!!」


「……」


黙り込むアズールさんをサフィーリアさんはもう一度殴った。

三度瓦礫の中に身体を埋めることになったアズールさんは身じろぎもせずにされるがままだ。


返す言葉もない、ってことなのかな。確かにアズールさんは私達のリーダー格。全体を見渡して指示を出したり、私達に修行を付けてくれる指導者的立場だ。


それがあっさり敵の術中に嵌ったわけだから、そのリーダーとしての責任を問われるのは当然かもしれない。


だとしても、フェイツェイさんの怒り方は凄まじい気迫でそれだけで怒っているわけではないようにも見える。


「挙げ句の果てに妹分に裏切られて『隷属紋』をむざむざかけられるだと?」


「そうだな、まるでなっちゃいねぇ。……サフィーのことにもまるで気が付いて無かった。ウチの失敗がこの状況を作った原因のひとつ、だろうな」


瓦礫の中から立ち上がりながら、アズールさんはそう応える。


自分のミスが原因のひとつと口にしたところでフェイツェイさんが飛びかかるようにして今度は両手で胸ぐらを掴んで持ち上げる。


怒りの表情は更に深まって、深まり過ぎたのか言いたい文句が多すぎるのかパクパクとくちを開けては閉じを繰り返したあと、ぐっと歯軋りをしていた。


「そこまでわかっているのなら、こうなる前にどうにか出来ただろう……!!」


「出来なかったのが事実だ」


「3年前のお前なら気付いていたハズだ!! 周囲の小さな変化に気付かないお前じゃない!! だが最近はなんだ!!」


3年前なら出来ていた。フェイツェイさんはそう主張する。

それが本当なのかは私には分かりようがない。3年前の私はただの一般人だし、当然みんなと知り合ってもいないから。


でもグレースアさんも何も言わないあたりがそれが出来ていたんじゃないかと感じさせる。

事実じゃないならきっとグレースアさんは訂正する。


「いつからか現役を退いた風を出して、後進の育成ばかりに精を出すようになったな!! まるで自分に伸び代は無いと言わんばかりだ!!」


「……」


「『魔法具解放』の修行の時でさえ、お前は自分からその話を降りた!! 出来る出来ないじゃなく、お前は最初から訓練に参加すらしなかった!!」


衝撃の事実だ。フェイツェイさんの話が本当ならアズールさんは自分は強くなる努力をしなかったってことだ。


確かにアズールさんはそもそもにその辺の魔法少女よりは強いし、これ以上強くなる必要がないのかも知れない。


でもフェイツェイさん達はより強くなるために修行を続けて来た。

その中でアズールさんだけがそうしなかった。或いは自分の修行を最低限に留めた。


言われてみれば確かにアズールさんが自分を鍛えているところを見た事がない。


アリウムさんも、ルビーさんも自分を鍛えるために過酷な訓練を積んでいるのを見て来た。

クルボレレさんもそうだと聞いているし、アメティアさんは魔法の研究を続け、ノワールさんは新しい力を身に付けたという。


フェイツェイさんとグレースアさんは見ての通りだ。


アズールさんだけがそういうところを見ていないし、聞いてもいない。

それを理解してくるとフェイツェイさんがここまで怒っている理由も見えてくる。


「リーダーのお前がなんで真っ先に腑抜けてるんだ!!」


みんなを引っ張る立場の人がそれなら確かに私でも不満を感じるかもしれない。


きっとフェイツェイさんはそれをずっと心のどこかで感じながらモヤモヤとしていたんだ。

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