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千夜祭


「……?」


数秒は待った。死ぬことを覚悟して、ただ待つだけだったというのに痛みも衝撃も何も無い。


「お前だな?期待の新人というのは」


「もう大丈夫だよ」


異変を感じて顔を上げようとすると同時に声をかけられる。ゆっくりと顔をあげるとそこにいたのは、今はここにはいないと聞いていた魔法少女が2人。


日本刀型の魔法具。細身の、アズールさんの巨斧に比べたら枝のように細い刀身と片腕だけで力自慢のアズールさんの一撃を受け止めているのは『翠剣の魔法少女 フェイツェイ』。


私を庇うように屈んでいるのは『氷華の魔法少女 グレースア』。


最強コンビと名高い、2人1組の魔法少女の姿がそこにあった。


「な――」


「……っ!?」


止まるはずの無かった一撃。確実に刺せるハズだったトドメを止められて、サフィーリアさんとファルベガから声にならない声と息を呑む音がそれぞれ聞こえる。


かく言う私も、一体何がどうなっているのかちゃんと理解することはさっぱりで、いないはずの2人がなんでここにいるのかとか、そんなことを考える余裕もなく、思考は完全にフリーズしていた。


「よくやった、よく耐えた。期待の新人とみんなが太鼓判を押すのもよく分かる」


「うん。本当に凄いよ。少なくとも魔法少女になりたてだった頃の私とは大違いだね」


ただ、一つだけ分かったことがある。


「「あとは任せろ(任せて)」」


考え得る限り、最強最高の助っ人がこの場所に現れたという事だけは、疑いようのない現実だった。


「グレースア、新人たちを頼む」


「わかった」


短いやり取りをするとグレースアさんが私に弱い氷の魔法をかける。どうやら失血を防ぐために傷口を氷で塞いだらしい。

倒れているリベルタさんとリリアナさんも氷の魔法で持ち上げて、近くに運んでくると同じように応急処置を施してくれた。


「あり、がとう……、ございます」


「お礼なんて言わなくて大丈夫。本当なら、私達がやらなきゃいけないことをやってくれてこちらこそありがとうって言わないと」


応急処置と恐らくは私達の安全の確保を買って出てくれたグレースアさんにお礼を言うと彼女はふるふると首を振る。

それ以上の言葉は水かけ論になりそうだし、その体力も気力も今の私には無い。


何より、目の前で起ころうとしている戦いの気迫が、『翠剣の魔法少女 フェイツェイ』の放つただならぬ雰囲気に味方であるはずなのに飲み込まれそうになっている。


「立派な新人だな。実力なんてまだまだだろうに、この地獄見たいな状況で求められているだろうことの100点を叩き出したと言っていい」


ギリギリと音を立てながら、受け止めていたアズールさんの巨斧を日本刀型の魔法具と右腕一本で押し返していく。


『激流の魔法少女 アズール』と言えば、魔法少女の中でも屈指のパワーファイターとして名高い。

対してフェイツェイさんは圧倒的な技量の剣術と飛行能力を駆使したテクニカルなスタイルのハズ。


真正面からのパワー勝負なら、本来アズールさんに軍配が上がるはずなのに、目の前で起きている光景はまるで真逆のそれ。


「それに比べて、貴様はどうだ。アズール」


とうとう完全に押し返すと、巨斧と日本刀。それぞれの魔法具がガチガチと火花を散らし始める。

軽々と行われているような攻防に見えて、おそらく2人から発せられているパワーは鋼鉄がひしゃげてもおかしくないんだろうな。


勘だけど、きっとそういうレベルのやり取りが目の前で行われていて。


「貴様がその体たらくはなんだ!!!! アズールっ!!!!」


怒髪天を衝くという言葉が相応しいくらい、怒りの籠った声と一緒に日本刀が巨斧を弾いて振り返ったフェイツェイさんがアズールさんを蹴り飛ばす。


「――『魔法具解放(ウェポンバースト)』」


そして、続けざまにとんでもない魔力と暴風が私達のもとにまで襲い掛かって来た。


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