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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
千夜祭

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千夜祭


サフィーリアさんは妖精にしては珍しい姿をしている。


普通、妖精は動物の尻尾がある。その形は人それぞれだけど、殆どの人は人間界で言うところの犬とか猫とか。そういう陸上の動物っぽい尻尾を持っている。


でもサフィーリアさんはそういう尻尾じゃない。正確な言葉で表すなら尾びれだ。尻尾かと言われると私達人間的には若干首をひねるけど、妖精的には立派な尻尾に当たるらしい。


だからサフィーリアさんは足が無い。お尻から尻尾が生えているんじゃなくて、腰から下がまるっと妖精の尾に該当するから。


尾びれを使って空中を泳ぐみたいに移動する姿はまるで人魚。サフィーリアさん自身もとっても美人で、私達が想像するおとぎ話の人魚そのものとも言えるくらいサマになっていて綺麗な人だなっていうのが私の印象の一つだった。


「あはははははははは!!!!!!」


だった。そうだった。羨ましいと思う事すら憚られる程だったその美しさは今、目の前で儚く砕け散ってしまった。


「力が、力が漲って来る!!」


青く海のような紺碧の髪は、白磁のように白くて手入れの行き届いた肌は。良く手入れをされた指先と爪は。湧き水みたいに透き通るような瞳は。陽に当たると薄く虹色に輝く綺麗な鱗は。


「これなら、お姉さまに群がる害虫どもを一匹残らず駆除できる!! あはははは!!ははははははは!!!!」


ヘドロのように汚れ、タールのように重く、粘り気さえ感じるようなどす黒い魔力が彼女を覆い、醜く肥大した6mは超えるだろう巨体を持った人魚へとその姿を変貌させていた。


「『ビーストメモリー』……っ!!」


何度も聞いたそれは私達にも因縁が深い。行く先々で私達の脅威になって、沢山の人を苦しめる簡単に言えばそう、闇の力とかそういう類のもの。


法外かつ『災厄の魔女』と呼ばれる存在から分け与えられた邪悪な魔力と『獣性』と呼ばれる人外の力。

その2つが組み合わさっている『ビーストメモリー』はヒトの在りようそのものを変えてしまうものだ。


これらは私達の仲間、ブラザーメモリーもその『ビーストメモリー』を一度その身に宿したことがあるからこそ分かって来たことで、他にも何人かの被害者あるいは容疑者からの事情聴取によって『ビーストメモリー』が持つ特徴だとか性質だとかが見えて来た。


というのは碧さん達から聞いた話だ。ブラザーメモリーからも勿論聞いているけど、法外かつ悪性に満ちた魔力と獣性というのはその人が持つ善性の殆どを飲み込んで塗り替えてしまう。


とは言え、その善性全てを消し去れるわけじゃない。『ビーストメモリー』は元々性格の悪い。物凄く言葉を悪くするとクズな人と相性が良い、らしい。


元々持っている善性が薄くて、欲とか悪意を強く持っている人ほど『ビーストメモリー』との親和性が高いんだとか。

逆に強い善性を持つ人は『ビーストメモリー』に完全に飲み込まれない。ブラザーメモリーがその例だ。


彼は内に秘めた強い正義感で自分を飲み込む悪性を押し返した経験がある。


「コイツは、やべえぞ!!」


『ビーストメモリー』の脅威を最も知る1人であるブラザーメモリーが変貌したサフィーリアさんを見てそう口にする。


私から見てもよく分かる。彼女が物凄く高いレベルで『ビーストメモリー』と親和性を発揮していることを。


「一旦、退く――」


「させるわけがないでしょおぉぉぉっ!!!!」


『人魚』の『ビーストメモリー』がどんな能力を持っているのかもわからない。ここは一度、退いて情報を整理する。


「シルト正面!!ブラザーは支えて!!」


そんな安易な目論見は濁流と一緒に押し流される。海属性の魔法の規模が明らかに上がっていて、ヘドロみたいに粘り気のある液体が辺りの瓦礫を飲み込みながら私達に襲い掛かる。


津波みたいな水の壁を避けるなんて無理だ。その中に紛れている瓦礫も合わさってあんなのに飲み込まれたら死ぬ以外選択肢はない。


シルトの盾で受け止めるだけじゃ当たり前に足りない。光の障壁を斜めに囲うように配置。襲い掛かる瓦礫も出来るだけ撃ち抜いて衝撃に耐える。

私達に出来ることと言えばそれくらい。


あとは運に任せるしかなくて、私達はあっという間に濁流にのみ込まれた。


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