千夜祭
「基本戦術はいつも通りに!! あとは2人を引き剥がすように動いて!!」
「「了解!!」」
冷静に観察を続けることでやることとやれることがわかって来た。
今まで受けて来た訓練と勉強が肌身に染み込んでいる実感もある。
100%活かしきれてる自信は流石にないけど、確実に今までの戦い方や考えている思考に迷いが少なく出来ている。
イケるとは思わない。勝てるとも相変わらず思ってない。
でも戦えている。前ならこんなに戦えていない。
「囲んだところで勝てるとでも!!」
「思ってない!!」
三方向からサフィーリアさんを囲み、まずは遠距離攻撃が出来る私が引き金を引いて光の弾を連射する。
避けるサフィーリアさんを更に追撃。しつこく追い回してアズールさんから少しでも引き離す。
「大将だけに気を取られてると痛い目みるぜぇっ!!」
サフィーリアさんも私達に対して情報を持っている。恐らく彼女は私に対して強い対抗心と警戒心を持っているハズ。
私がどういう特性を持っているのかを知ってるだけで、最も脅威と捉えると思う。
『魔法少女協会』やレジスタンスの人達との模擬戦での評判も私が1番高いから。
でもブラザーメモリーやシルトメモリーが成長してないとか、劣等生的なわけでは決してない。
「おらおらおらっ!!」
以前の大振りに殴りかかる喧嘩殺法とは明らかに違う、コンパクトにまとまったフォームで拳の連打を放つブラザーメモリー。
それは残念ながら操られた水により防がれてはいるけど、元から当たるとは思っていない牽制なので問題無し。
「暑苦しい図体で鬱陶しいのよ!!」
「っと、そいつはどうも!!」
大柄で筋肉質な身体付きと性格が暑苦しく思えるのは否定はしないけど、以前とはやはり見違える。
魔法を放たれても受けるんじゃなくて避ける。それも大雑把にではなく、やはり小さくコンパクトに。
時には魔法を拳で殴り潰しながら接敵。そのスピードも少し前とは全く違う。
明らかに速い。身体の使い方、武術的なもの、身体強化の魔法に風の魔法も織り交ぜたそれは確実にサフィーリアさんに牙を剥いている。
「シルト!!」
「言われなくてもっ!!」
「ぐっ?!」
ラッシュを続け、サフィーリアさんを動かし続けたブラザーメモリーの掛け声と共に待ち構えていたシルトメモリーが大きな盾を使って殴りつける。
シールドバッシュという技術で盾を使った近接格闘技術だ。
その一撃は盾の大きさに比例して威力が上がるとか。
重くて巨大な盾による打撃は多少の防御程度なら平気で貫通する。
魔法で防御を試みたサフィーリアさんはその攻撃力の高さを見誤ったらしく、とうとう私達から一撃をもらっていた。
障壁魔法の使い手、アリウムフルールからシルトメモリーはパリィとバッシュを徹底的に教え込まれている。
短い期間とは思えないくらい、その技術は高い。代わりにそれ以外の訓練がまだまだだと言ってたけどその技術が加わっただけでどれだけ戦術が広がるのだろう。
「新米のくせに、舐めるな!!」
サフィーリアさんに張り付き、魔法を主体に戦う人が1番戦いにくいレンジを保ち続ける2人に痺れを切らしたのか、かなり強引に海属性の魔法を広範囲に放って、無理矢理2人を引き剥がす。
ブラザーメモリーが足が遅いシルトメモリーを素早く回収しながら上空へ退避。
2人は距離を取らされてしまうが、こちらの思惑通りだ。
「舐めてるのはどっちだよ」
「私達を侮り過ぎだ」
鼻を鳴らして返す2人の言葉にニヤリと私も笑みが出る。
そう、サフィーリアさんは私達を舐めている。
自分なら余裕で対処出来ると思っているのがバレバレだ。
私の知っている彼女なら決してそんなことをしない印象だけど、気分が高揚しているのか普段とは違う言動が多い彼女は私達を格下としか見ていない。
そこに付け入る隙がある。
「フルチャージ完了。ぶっ放すよ!!」
【必殺!!】
煌々と溢れる光の魔力の輝きが、構える銃から溢れ出る。
2人が戦ってる間、私はこうしてデカい一撃のためにチャージしてたってわけ。
どでかいの喰らってもらうわ。




