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千夜祭


「なんだか久々だね。こうやって歩くのは」


「そうね。最近はパッシオも人間の姿ばっかりだったし」


3年前だったら当たり前だったパッシオの省エネモードも妖精界でやる必要はない以上、見るのは久しぶりだ。

こうして肩に乗せて歩くのも同じように久々。


ついこの間のように感じていた3年前に当たり前だったことをこうして改めてやると、懐かしさが胸に沁みる。


こうやって2人であれこれ喋りながら街を歩いたりしていたのが本当に懐かしい。


「そういえば、妖精本来の姿になることも滅多にないのね」


「やっぱり不便なんだよ。ペンは持てないし、尻尾は案外邪魔だしね。仕事をするには人間とか他の人型種族に寄せた方が色々と都合が良いんだよね」


パッシオやカレジ、他のレジスタンスの人達もそうだけど所属している妖精族の人達は本来動物に似た姿をしているけど、妖精の特性を使ってその姿を人に似た姿にしている。


もちろん、そうでない人もいる。そういう人は元々人に近い。猿に近い見た目だったり、必要な時に必要な箇所だけ適切なカタチに変化させていたり。


「あとこっちに戻ってから気が付いたんだけど、大体なんでも人型を想定して物が作られてるから、日常生活で不便を感じるようになっちゃってね」


「便利を覚えた弊害ね」


「珈琲が飲めないのは特に困るね」


人間界は便利な物が溢れてるからね。一度あっちに行って、便利を覚えると便利な方が何かと良いし、不便にストレスを感じるようになっちゃうのは仕方のないことよね。


「妖精が人型を取るようになったのはそういう流行り、みたいなものだよ」


「パッシオとカレジが帰ってから?」


「いや、それよりちょっと前からだね。と言っても人間界基準だと15年くらい前からになるのかな?」


「流石に長命種が多い世界だと時間の感覚ものんびりなのね」


人間界の情報伝達が早過ぎるんだよ、とパッシオは苦笑いだ。確かにそっちの方が正しいかも。


インターネットがない頃の流行なんて地域限定みたいな物だったでしょうしね。

長命な種族が多い上に、人も物も情報も移動が遅い妖精界じゃ流行の移り変わりとか伝達ものんびりと進んでいくみたいだ。


そう考えると最近の人間界の方が異常よね。流行や娯楽なんてどれだけ素早く消化するか、なんてことがタイムパフォーマンスなんて言って重宝されているんだし。


「時は金なり、なんて言うけど生き急ぐのも考えものってことか」


「まぁ、人間は生きても精々100年でしょ?それなら仕方ないと思うけどね。僕らからすると100年は短いよ。妖精界の種族の大半はもう少し長生きするからね」


エルフ、ドワーフ、ドラゴン、妖精なんかが妖精界では特に長生きだとされているけど、それ以外の種族も大体人間に比べると長生きな傾向がある。


半分妖精の私も、寿命は100程度じゃないだろう。妖精の平均寿命がどのくらいかは詳しくは知らないけどね。

その辺りも落ち着いたら教えてもらった方が良いかもね。


人生設計ってやつに少しは余裕が出るかも。まぁ、それはそれで面倒なこともあるでしょうけど。


150歳とかまで生きたら、絶対に騒ぎになるもの。その辺りもいつかは考えないといけないのよね。


「って、お祭りの時にする話じゃないでしょ」


「ホントだわ。2人になるとこんな話にばっかりなって嫌ね」


気が付いたら真面目な話になってて2人でハッとする。せっかくのお祭りにこんないつもしてるような話をするのはもったいない。


どうせなら、何かそれっぽい。このお祭り騒ぎに乗じて、一歩踏み込んだ話を聞くのも良いのかな。


なんて思って、ごくりと生唾を飲み込む。そう考えたらまた緊張してきた。

でもここでこうして踏みとどまってたら、いつもと変わらない。


みんなには散々後押しされてるんだから、私が一歩動かなきゃ。


「パッシオはさ」


「ん?」


全部が終わったあと、私の隣にいてくれる?


そんな少し意地の悪いかもしれない質問。絶対に彼を悩ませてしまうだろうけど、私にはそう聞くのが精一杯だったんだけど。


「ーーッ!?」


その一言は突然全身に奔った悪寒によって、飲み込まれることになったのだった。、

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