星の子よ!! 我が名を讃え、呼号せよ!!
やるじゃん、と素直に思った。自分は大して強くないと言っていた割にはしっかり動けている。基礎は出来てるって感じだ。
それなりに鍛えてはいたんだろう。でもまぁ、よく考えれば1人で旅をしていたのに腕っぷしがへなちょこな訳もないか。
なんてことを思いながら、【31式自動小銃】で襲って来る妖精の太ももを撃ち抜き、動きが鈍ったところで思いっきり側頭部を蹴り抜く。
身体を捻りながらもう2回引き金を引いて次の妖精も脚を狙う。
次は動物の姿になってるけど、狙う場所は大体腿だ。生き物としてのカタチをとる以上、腿に怪我をすれば動きはどうしたって鈍る。
鈍ったところでまた頭部に容赦なく蹴り込む。妖精も頭を狙えば昏倒するのは分かってる。
姿形をある程度変えられるとは言っても、他の生き物と似通うようになってるのか。
詳しい仕組みは知らないけど、急所は変わらないのは楽で良い。
「スミア、少しは手加減した方が……」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ!! これでも死なないようにはしてるわ!!」
ヘッドショットをしないだけまだ温情だと思って欲しい。そもそも私の魔法は手加減というのが物凄く苦手なのだから。
それにしても襲いかかってくる数が多過ぎる。これじゃあ前に進めない。
1人妖精を黙らせてからというもの、脚を止めなきゃいけないほどに妖精が次から次へと襲いかかって来る。
代わりに民間人が逃げたりする時間が稼げているけど、私たちがしたいのはそういうことじゃない。
どうしようかと悩んでいると、視界に映る奥の方から土煙を上げながら何かが突き進んで来るのが見える。
かなりのスピードで襲って来る妖精達は襲いかかって来るものの突き進む何かに突き飛ばされていた。
「ぶるるるっ!!」
「ふんすっ!!」
土煙を上げながら爆進するそれは私達の、正確にはスタンの前で急停止すると、自慢げに鼻息を荒げていた。
気合い十分の彼、あるいは彼女達は私達が今まで一緒に旅をしていた魔車を引く二頭の魔物だ。
当然のように、二頭の後ろには私達の荷物が載った車両がある。
「お前達!!来てくれたのか!!」
思っても見てなかった登場にスタンは魔物達に駆け寄る。
その隙を見て飛びかかって来た妖精達は魔物が巨躯を活かしてモノともせずに弾き返した。
成る程、この子達が1番しっかりしているのかも。その辺の雑魚ならこの二頭が蹴散らしていたんだろうね。
「よしっ!!スミア、乗って!!」
魔車に乗り込んだスタンを守りながら、出発の準備を手早く整えたスタンの掛け声に合わせて私も荷台の脇に取り付けられた梯子に飛び付く。
「全速力だ!!行けっ!!」
「ぶるるるるるっ!!」
「ヒィーン!!」
梯子を掴み脚をかけた瞬間、魔物に鞭を打ったスタンの指示に前脚を大きく上げ、嘶いてから魔物達が急加速する。
かなりの急加速に振り落とされるかと思ったけど、何とか耐えて追いすがる妖精達を迎撃。
無事にスタートダッシュを決めた魔物達は普段は絶対に出さないようなスピードで公国首都『オーヴェン』の街道を突き進んで行く。
「スタン!!3分だけ耐えて!!」
「任せろっ!!」
移動中に装備を整えるため、3分だけ妖精達への対処が出来なくなることを伝え、私は窓を蹴破って魔車の荷室へと飛び込む。
床に置いてあるライフルバックを掴み、すぐに魔車の屋根の上へ。
用意するのは【31式狙撃銃・改】だけど、そこに銃座を取り付けて簡易の機関銃にする。
魔法陣を広げ、展開。屋根の上に魔法による銃座が現れ、固定されるとその上にさらに狙撃銃を換装した機関銃をセット。
「道を開けろぉっ!!」
妖精を避けながら3分耐え切ったスタンと入れ替わり、進行方向に怒鳴り声と一緒に引き金を引き絞る。
相当に荒っぽいやり方だけど、これでも妖精だけ狙ってるから任せて欲しい。




