到着、スフィア公国
「――以上が僕の身の上と立場、そして考えです。僕は兄の暴走を止めたい」
「それが何を意味しているかは、十分に分かっているだろ?」
スタンのそれなりに長い説明が終わるとリアンシさんから再度、語気も強めに確認される。
兄を、帝王レクスを止めるという事が何を意味するのか。
経緯や真意はどうであれ、何も知らない外野から見れば王弟のクーデターだ。成功か失敗かの結果に関わらず、国民は大きく巻き込まれることになるし、情勢は大なり小なり荒れるのは間違いない。
何より、兄を引きずり落としてでも自分が王になる覚悟がちゃんとあるのか。
公国領主であり、もう一人の兄貴分であるリアンシさんからしつこいくらいに確認されるのは当然だよね。
「はい」
「……そう決めたのなら、僕から言うことは無い。今から僕らは正式に協力関係だ。魔法少女協会側にも連絡をしておこう」
短く返したスタンに、リアンシさんは一瞬だけ目を瞑って何かを考えるそぶりを見せた後すぐに元の様子に戻っていた。
誰だって、昔から仲の良かったハズの兄弟が国を巡って対立するなんてことを見たくはない。昔から王族同士の交流のあったというリアンシさんなら尚更。
それでもすぐに気持ちを切り替えたのは王や領主という立場に立っているからこそなんだと思う。
「それにしても気になるのはレクスの様子だね。僕はてっきり今までとは違う、横暴な暴君になり下がったのかとばかり思っていた」
「王城で見かける兄の様子は今までとそう変わりません。至って冷静で優しく民を想う、いつもの帝王レクスでした」
「……だと言うのに、反乱の起こった王国に兵を差し向けて滅ぼし、公国とも完全な戦争状態に突入した、か。アイツが何を考えているのか判然としないね。まるであべこべだ」
口元を覆いながら考え込むリアンシさんの疑問は自分がイメージした帝王レクスと、実際の帝王レクスとの行動の差に異様にも見える乖離が見える事だ。
国の外に出れば、他国を侵略する暴君。内にいれば、民を思う賢君。
そんなことがあるの?まるで同じ名前の別人がいるかのような違いを感じる。
「帝国の人は何とも思わないの?」
「国という集合体である以上、国家間の問題は国民同士の諍いにもなります。何かあっても国家主席の意思に従いがちなのが国という集合体な部分があるんですよ」
そういうものなのかと思うけど、確かに真白お姉ちゃんに連れて行かれた外国の感じはそんな感じだった気がする。
日本みたいに海で囲まれてない大陸の国は、民族とか宗教とかで国が別れてる。
関係のない外から見ればどうとでもなりそうなことでいざこざを起こして戦争状態になったりとかもあるって教わった。
それは妖精界でも変わらないってことなのかな。
情報の操作とか、プロパガンダ、だっけ?そういうことも行われるのが戦争、だもんね。
「戦争の歴史が少ない妖精界では、どうすればいいかわからないというのもあるでしょう」
「レジスタンスみたいな帝国への対抗勢力だって、旧王国内で見ても少数派だしね」
「分からないから、とりあえず何もしないってのは確かに心当たりはあるっすね……」
ガンテツさんやマロンさん、舞お姉ちゃんからも帝国民の様子にはある程度の理解をしていて、特にガンテツさんや舞お姉ちゃんが言っていることには私も納得出来た。
「ショルシエについては何か知ってるのか?」
「基本的にはあまり僕には接触して来ませんでしたね。僕自身も兄の暴挙以来、城からは距離を置いていましたから」
「『獣の王』というものについては何か?」
「それなら、スミアの方が話せることがあると思います。彼女が手に入れた力についても説明した方がいいでしょうし」
大人しくしていたら突然話を振られてびくりと肩を震わせることになる。
あ、その話必要ですか?あ、はいします。
紫お姉ちゃんに睨まれて、姿勢を正す。さて、何処から話そうかと考えて、遺跡での出来事から話すことにした。




