二国間会議、開幕
「帰って来ないなぁ」
美弥子さん達に夜のお手入れタイムを無事に済ませてもらったのだけど、頃合いを見て帰って来ると言っていたパッシオが全然帰って来ない。
窓から見える妖精界の月がキラキラときらめいている良い夜なのに、話相手がいないのは退屈なモノだ。
「どうせ途中で誰かに捕まったか、やる事を思いついたかして仕事をしてるんですよ」
「団長さんならやりかねませんよね」
「姫様もね」
何も言い返すことができない。隙間時間が出来たら絶対に仕事をしている自信しかない。
むしろ今も明日の会議の内容について詰めておきたい気持ちもあるんだけど、資料は全部お祖母様に没収されてしまった。
お祖母様曰く、仕事ばかりしていて心配になるんだそうで。いや、ホントに申し訳ない。
「美弥子さんはどう思う?」
「私ですか?でもまぁ、間違いなくお仕事の話で立て込んでいるのかと」
だよねぇ、そうなるよねぇ。むしろ1択だ。それしか考えられない。
放っておくと朝まで仕事してそうだし。仕方ない、探しに行くか。
ソファーを降りると美弥子さんがサッと上着を着せてくれて、マーチェとグリエがテキパキと部屋の外に出る身支度を整えてくれる。
2人の仕事ぶりもどうに入って来た。美弥子さんに彼女達の指導を任せているから、美弥子さんの指導力も流石のものだ。
「探しに行かれますか?」
「うん。とりあえずそんなに離れていないだろうしね」
夜だし、頃合いを見て戻ると本人が言っていたのだから、そこまで離れたところには行ってない。恐らくはブローディア城の敷地内にはいるはず。
レジスタンスの建物はブローディア城の外だからね。城の何処かで何かをしているんだろうから、探せば見つかるはずだ
「マーチェは待機。美弥子さんとグリエはついて来て」
「かしこまりました」
マーチェはこの部屋に、美弥子さんとグリエは側に着けさせる。
二手に分かれるのはパッシオとの入れ違いを防ぐためでもあるけど、万が一の可能性を考慮してだ。
もし部屋を空っぽにして、そこを侵入者が狙わないとも限らないし、私1人で行動したところを狙うのもまた定石。
厳重な警備の中でそれは難しいと考えるし、私相手に襲撃を仕掛けたところで返り討ちにする自信しかないけど、用心するに越したことはない。
全く、私を守るのが仕事の1つなんだからあんまりちょろちょろしないで欲しいんだけどなぁ。
「どの辺にいると思う?」
「誰かに捕まっているなら、城のエントランスとかじゃないですか?」
「王族の方に捕まっている可能性もありますね。リアンシ様はパッシオ様にちょっかいをかけておりましたし」
「あー、リアンシ様路線ありそうだなぁ」
何かとちょっかいをかけるのが大好きな人だ。ウロウロしてたパッシオを見つけて絡んでる可能性はありそうだ。
紫ちゃん辺りに電話してみるか。と思い至って電話してみると。
【あのバカは部屋にはいませんよ】
「……なにしたの?」
【何もどうもありませんよ。全く、大事な会議のために訪れたというのに、部屋に戻ればぺたぺたぺたぺたと!! あまつさえ恥ずかしげもなくあっちこっちにきききき……!!】
「……キスでもされた?」
最後は「わーっ!!」という悲鳴と共に通話を切られた。あっちはあっちで大変そうだなぁ。
いや、ただの惚気を聞かされただけではこれ?紫ちゃんもスミに置けない。
やっぱりなんだかんだと上手くやってるんだなぁ。リアンシ様がぐいぐいいって、それで紫ちゃんがキャパオーバーで怒ってるって感じ。
最終的には紫ちゃんが押し切られるんだろうなぁ。文句は言ってるけど、拒絶はしてないもんね。
見た目的には朱莉がツンデレだけど、実際は紫ちゃんが1番のツンデレだよねぇ。
「リアンシ様に捕まってそう」
「では割と近くにいそうですね」
「あ、さっきの絶叫はスルーなんですね」
切られ方からしてスマホを投げた気配はあるけど基本スルーで大丈夫大丈夫。ただの惚気話だし。
壊してたら番長に紫ちゃんが怒られるだけだよ。




