瑠璃色の慟哭
私にとってお姉様という存在はなくてはならない存在です。それはテレネッツァお姉様であっても碧お姉様でも変わりません。
どちらも私に優しく手を差し伸べてくださった人達。もちろん、他にも手を差し伸べてくださった方はたくさんいます。
でもお姉様という存在が私の特別なのです。テレネッツァお姉様が両親の代わりに私の面倒を見てくれたことから始まっただろう私の姉という存在への妄執ともいえるようなものでしょう。
自分が歪な心を形成しているのはわかります。テレネッツァお姉様を喪ってしまった心の隙間をその力と意志を受け継いだとも言える碧お姉様を使って埋めようとしている薄汚さには辟易とします。
それでも、止めれない。そうやって碧お姉様にずっと隣にいてほしいのです。私のこの心が癒えるその時まで。
「どうした?なんか調子悪いのか?」
「あ、いえ。少し考え事を」
「なんだよ、一人で悩んでねぇで相談しろよ?お前はすぐに自分で抱え込むからな」
昴さん達を招いてやって来たレジスタンスの庁舎の一つで食事をしていた私は対面にいる碧お姉様に声を掛けられ、ハッと顔を上げる。
いけません。私としたことが碧お姉様の手を煩わせることなんてあってはなりません。
すぐに笑顔を張り付けて取り繕います。ぎこちない笑みになっていないかが心配でしたが、周囲の様子を見る限り大丈夫なようです。
「サフィーリアの姐さんは真面目過ぎる気配がするから碧姐さんの心配もわかるぜ。誰かに頼るってのも大事なんだよな」
「なんだよ、しみじみと言いやがって。実体験か?」
「そりゃ実体験ですよ。誰かに弱音を吐いた時に今まで付き纏ってた憑き物が落ちたって感じがしたもんで」
「グレてたって言ってもんなぁ。徒党を組んでたんじゃねぇのかよ?トゥランの暴走族の頭だったんだろ?」
「最初の方はそうだったんですがね。最後の方は俺はほとんどと言っていいほど関与してなかったんですよ。一応、アニキっては言われてたけどその時の俺はもうただの無気力なヘタレ野郎でしたから」
慣れた手つきでナイフとフォークを使っているリベルタさんはそう言いながらお肉を口に運びます。
洗練、とはいきませんがこの世界基準でいえばかなり上品な食べ方で見た目や口調の粗っぽさからは想像が出来ない所作です。
トゥランの街を取り仕切っていた方が親だと言っていましたから、やはり育ちは良いのでしょう。そういう部分はちょっとしたところで出てくるものですからね。
逆に見た目は可憐でどこかのお嬢様のようにも見えるリリアナさんは非常に不器用に食べています。
隣ではスバルさんが見本を見せながら彼女にステーキの食べ方を教えていました。
「んだったな。ついうっかり忘れちまうんだよな。ここにいる連中ってのはほぼ全員ワケアリだってことをよ」
「その気持ちはわかりますよ。大将がそういう気持ちを忘れさせてくれるってのも俺からするとありますかね」
「かもしれねぇな。不思議な魅力だぜ。ウチらの仲間でもああいうタイプはいなかった」
碧お姉さまも同じで女性にしてはかなり荒っぽい口調と丁寧に食べる所作は美しいとも言えます。
リベルタさんのそれと違って、お姉様の所作は洗練されていると言っていいでしょう。これはお姉様が人間界では名家のお生まれだからでしょう。本人はあまりそれを吹聴したり誇示したりするのは嫌がっていらっしゃいましたけど。
「サフィーもなんか心配事があったらちゃんと言うんだぜ。無理に話せとは言わねぇけどよ」
「新入りの俺が言うのもおかしいが、やっぱ腹の内まで話せるのが仲間ってもんだからさ。碧の姐さんに話せなかったらリリアナとか大将に話すだけ話すのもありだと思うぜ」
「お前は入ってねぇのかよ」
「女の悩みは男の俺にはわかんねぇんで」
2人が私を心配して、そういってくれるのは本当に嬉しいことでありがたいことです。私みたいな堅物に親しくしてくれるだけでそれだけでも感謝すべきことで。
(お姉様とすぐに意気投合している……)
だというのにこんなことを先に頭に浮かべる私の馬鹿々々しさをお姉様には知られたくはないと心の底から思うのです。




