瑠璃色の慟哭
「その後、私は戦災孤児として帝国兵に占領されたこの街でなんとか生活をしていました。その後、パッシオーネ団長がレジスタンスを率いてサンティエを奪還して、私はレジスタンスに所属することになった、という感じです」
しれっと言っているが、この期間が1番の地獄だったハズだ。
戦災孤児なんて、まともな衣食住が出来るわけがねぇ。妖精だから食い物は魔力で良いが特に雨風を凌ぐような場所には困っただろうな。
元貴族の戦災孤児。その辺の子供より荒れた街で生活するための手段なんて全くわからねぇだろ。
「外では、そんなことが……」
特に衝撃を受けていたのは妖精界でも閉鎖的な生活をしていたエルフのリリアナだった。
顔は青ざめ、ふらふらと倒れそうになっていて心配になるくらいだ。
同じ妖精界で都会のトゥランに住んでたリベルタや、戦争ではないが人間界の魔獣被害の深刻さを身に染みて理解している昴は冷静に聞いていた。
「旧ミルディースではありふれた境遇です。パッシオーネ団長からはテレネッツァお姉様の妹という事で目を掛けてくださっているんです。さっきは散々言いましたが、感謝しています」
レジスタンスとして活躍するためのイロハを教えたのはパッシオらしい。
まぁ、死んだ許嫁の妹が生きてたらそりゃ目に掛けるよな。パッシオもちゃらんぽらんのフリをよくしてるが、クソ程真面目だしな。
「私の境遇はそんな感じで、わっ?!」
「そんなに辛く大変な境遇をよく話してくれた。私程度では力になれないかもしれないし、むしろ世話になってばかりかも知れないが、何かあったら力になる!!」
なんでもない風を装うサフィーにリリアナが鼻を啜り抱き付いたあとに手を取り、ブンブンと手を振って少しでもサフィーに寄り添おうをいう姿勢を見せる。
見た目のクールな雰囲気とは違い、リリアナは案外情に厚いというか、熱血な部分がある。
繋いだ手を振り回されて目を白黒とさせているサフィーを見て、腕がおかしくなる前にリリアナを宥めてやる。
「落ち着け落ち着け。気持ちはわかるけどな」
「はっ?!すまない、つい感情的に……」
「いえいえ、大丈夫です。意外と熱血さんなんですね」
「その見かけによらない熱血さが、頭の堅い森エルフ達を動かしたのさ」
みんなで笑って、暗くなった雰囲気を吹き飛ばす。リリアナのこのガッツのある気持ちは人の心を動かすよな。
大体こういうのは戦いでは突貫気味になるんだが、リリアナの変身するスルトメモリーの武器は盾。
ある意味相性が良い。努めてクールにならないと絶対に役に立たない武器だ。
感情的になりがちなリリアナが重くて扱いにくい武器のおかげで頭の回転に能力を割けるのは上手く鍛えればいい感じになるだろうな。
「良いチームだなお前ら。きっと強くなるぜ」
「ありがとうございます。期待に応えられるよう、頑張ります」
リーダーシップと機転の良さ、段違いの成長スピードで突破口を開く昴。
体格の良さ、思い切りの良さから来るパワープレイで真正面から戦えるだろうリベルタ。
タンクから飛び道具。縁の下の力持ちのリリアナ。
まだまだ足りねえ部分もあるが、こいつらのチームのバランス自体は悪くない。
鍛えりゃ良いチームになる。コンビネーションの訓練もしねぇとな。
その辺りはちょうどいい。アイツが1度サンティエに合流する予定がある。
アイツは真白とパッシオと同じくらい、連携攻撃が得意だからな。
「おーし、なんか食いに行くか。奢るぜ」
「よし来た!!」
「美味しいところですか?」
「安心しとけ、人間界から料理人連れて来てる」
妖精界の飯は、素材は悪かねぇんだが素材そのまま過ぎてな。
魔法少女上がりの料理人ってのも何人かいてな。そいつらがこの前から常駐してるから、飯の味は保証するぜ。
サフィーと昴達を引き連れて、ウチはその料理人がいるレジスタンスの施設に足を向ける。何食うかねぇ。




