屈せぬ光、変わらぬ白
「『ルミナスシュート』!!」
シルトの盾を背にして誰もいない空中に『ルミナスシュート』を撃つ。何も意味が無いことをしてやけっぱちになってるわけじゃない。
今、私達がいるのは足も竦むくらいの高い高い場所。足場はシルトの盾くらいしか無い。もし落っこちたらいくら変身している今の姿でもただでは済まない。そんな高さだ。
でも、これだけの高さから魔法の推進力を得て突撃すれば、流石のアリウムフルールさんだってただではすまない。
これで決まるような人ではないのはわかってる。せめて、これであの鉄壁の障壁を少しの時間だけでもどうにか出来れば……!!
「いっけえええええええっ!!」
花びらみたいな障壁をかき分けてシルトと2人でアリウムフルール目掛けて決死の覚悟で突撃した攻撃は。
「発想は悪くないわ。ただし、私相手に真正面からの攻撃を選んだのは悪手ね」
何枚もの障壁で勢いを殺された後、スポンジみたいな柔らかい障壁でいとも簡単に跳ね返されてしまった。
強い衝撃に耐えようとしていた私達は完全に虚を突かれて体勢を崩したまま、地面に投げ出される。
ゴロゴロと何とか受け身をとって転がった後、追撃をされないように引き金を引いてありったけの弾丸を撃つ。
それも凄く冷静に対処されてしまった。やっぱり、あの花びらみたいに沢山ある障壁をなんとかしないと、こっちの攻撃は絶対に届かない。
『花びらの魔法少女 アリウムフルール』。障壁魔法最強の使い手という異名を持つ人から一本取れという条件は私達が想像していたよりも遥かに難しい事だった。
「貴女の才能は認めるわ。妖精界に来てたったの二か月。そんな短い期間でこれだけ魔法を操って、冷静に戦況を見極めるその才能と頭脳。そして何よりも度胸。並み大抵ではない」
ゆっくりと歩き、それでも花びらのような障壁を無数に操って少しの隙も見せないアリウムフルールさんが私にそう話しかけて来る。
褒めてくれているんだと思う。認めてくれているんだと思う。きっと、アリウムフルール。諸星 真白という人は人に対する評価とか、そういう事で嘘をつく人じゃない。
物凄い努力と才能を持っている人が、私の才能を認めてくれている。それはきっと凄いことだ。
あのアリウムフルールに褒められた。それだけで人生一生自慢が出来るくらいの事だと思う。
「だからこそ、貴女を無駄死にさせるわけにはいかないわ。その才能を活かしきるには長い時間努力をし続ける必要がある。近い将来、貴女はきっとその素晴らしい才能を開花させられる。そのための場所も環境も私が用意する。だから、今回は――」
「嫌です!!」
そんな人に認められて、私の為に色々用意をしてくれるらしい。でも、嫌だ。嫌なんだ。
それじゃ遅いじゃないか。だって今、今この時こそ世界がピンチになってるんじゃないか。全部解決してもらって、平和になってから才能を開花したってしょうがないじゃないか。
私なんかでも、やっと出来そうな何かが見つかったんだ。やっと認めてくれる人たちがこんなに出来た。リュミーくらいしかいなかった友達が、妖精界に来たら沢山出来た。
そんな良い人達が、友達がたくさんいる世界がピンチなんだ。私だけ呑気に人間界で平和に暮らしてるなんて、そんなバカな話ってないよ。
「リュミーの生まれ故郷が大変なんだ!!リベルタさんとリリアナさんだって大変なんだ!!巻き込んだのは私なのに、私だけ関係ないなんて言えるわけがない!!」
絶対にヤダ。諦めて何てやるもんか。今回がダメでも何度でも直談判する。
「やっと、ずっと居たい場所が出来たんだ。それを守るためなら、どんなことだってしてやる」
さぁ、考えろ。あの障壁を突破する方法を。私に才能ってやつが本当にあるなら、このくらいのことを超えられなきゃ意味が無い。




