屈せぬ光、変わらぬ白
「先手必勝!!行かせてもらうぜ!!」
初手は譲る。これはあくまで彼らの実力を測るためのものであるし、私との実力差も考慮しなければならない。
やろうと思えば一瞬で終わらせることも出来る。ただそれだけで終わらせてしまうのは何処か勿体ない気もする。
「……ふふっ、甘いわね。私も」
期待している自分が間違いなくいる。どう考えて私達からすれば彼女達は私に勝てない。ここにいるほぼ全員が同じことを思っているハズだ。
私にどうやって勝てるのかを予想しているんじゃない。私に対してどれだけの時間持ちこたえられるのか、野次馬に来ているような面々はそういう予測を立てていると思う。
でももし、もし彼女達が私達の想像を超えて来るのなら。
それを期待している自分は間違いなくいる。そういうところは番長の事は言えないわね。
「どっせい!!」
低い高さで滑空しながらバカ正直に真正面から殴りかかって来たリベルタさんことブラザーメモリーの拳を障壁で受け止める。
体格とスーツからの魔力の補助を得て、彼の膂力は中々のモノだ。張った障壁は2枚ほど割られ、3枚目で止まる。
翼から得られる機動力も武器だろう。メモリースターズの切り込み隊長と言ったところか。
「すぐに退いて!!」
「あいよ!!」
「逃がさない!!」
ルミナスメモリーの指示によって、ブラザーメモリーは深追いすることなくすぐに後退。当然こちらはそれを逃がすつもりは無く、彼の身体を拘束するための障壁を展開しようとするが、その障壁を光の弾丸が破壊。
次いで身の丈ほどの盾が回転しながら飛んでくるではないか。流石に驚いて障壁で盾を弾く。
弾かれた盾はブーメランのように弧を描きながら持ち主であるシルトメモリーの手へと戻っていく。
面白い使い方をするものだ。ただのタンク役ばかりだと思っていたけど、攻撃にしっかり関与している。
ルミナスメモリーの射撃能力もしっかりしている。恐らく魔法の補助こそ入っているものの私が展開しようとした障壁を確実に撃ち抜いている。
「散開!!」
「「了解!!」」
初動の攻撃は通じないとわかるや否やフォーメーションを変え、それぞれ別の方向に移動する。武相の都合で足の遅いシルトメモリーはその場だが、翼での移動と光弾を放ちながら走り、3方向に分かれて的を絞らせない作戦の様だ。
しかもこちらに向けて光弾を放ちながら移動をしたルミナスメモリーの判断は素晴らしい。
攻撃手段に乏しいシルトメモリー。恐らく遠距離攻撃が不向きなブラザーメモリーに意識が向かないように敢えて自分にヘイトを向けさせるしっかりとしたヘイト管理だ。
間違いなく、司令塔として十分な機能を果たしている。
素直に賛辞を送ろう。ただの女子高生という評価は少なくとも撤回だ。彼女は少ない実戦経験の中で間違いなく強くなっている。目を疑う成長スピードと言っていい。
「はあっ!!」
ルミナスメモリーの銃から今度はレーザー光線が放たれる。一点特化の攻撃は貫通を目的とした攻撃だ。
光属性はとにかくその属性の中に様々な要素を内包しているため、数ある属性の中でも非常に汎用性が高いという研究結果が出ている。
光、熱、速さ、浄化、生育、癒し、守護。様々な要素を内包しながら固定の形を持たない光属性はとにかく自由度が高い。
魔法は様々な事が出来るが、属性によって向き不向きがあるのは当然なのだが、光は様々なイメージと結びつきやすく、とにかく魔法のレパートリーが多いのが特徴。
勿論、こういう属性は希少なもので使い手はあまりいないのも特徴なのだけど、ルミナスメモリーはそれをしっかり使いこなしている。
「甘いっ!!」
だけどただのレーザーを真正面から受け止めるわけもなく、障壁を斜めに配置して反射させる。味方への誤爆を狙った形だ。
ここは足の遅いシルトメモリー目掛けて反射をするが、シルトメモリーも立ってるだけではなく反射されたレーザーをしっかりと受け止め切った。
「だったら!!」
「行くぜ大将!!」
続けざまに上空からの強襲、レーザーを光の鞭へと変化させた攻撃が同時にやって来る。
ルミナスメモリーの切り替えの早さとブラザーメモリーの阿吽の呼吸で飛び込んで来るタイミングと思い切りの良さ。
始まったばかりの戦いだけど、既に予想を上回る良さに私は無意識に笑っていた。




