屈せぬ光、変わらぬ白
その驚きもほどほどにすぐに思考を切り替える。ここで働くということがどういうことなのか、彼女はわかっているのだろうか。
私達のやっていることは遊びじゃない。血みどろの争い。血で血を洗う戦争というのが事実であり現実だ。
どんなに私の理想である無用に誰かが傷付かない世界とは遠い現実。そうするために絶対に乗り越えなくてはならない戦い。
「貴女、自分が何を言っているのかちゃんとわかっているのかしら?」
流行のFPSのゲームとはわけが違う。自分が少しでも関わったからと言って、自分に出来る事があるなんて思ってもらっては困るのだ。
「わかってる、つもりです!!」
「つもり?つもりで何が分かっているのかしら。貴女のそれは勘違いでしかないのよ。たかだかその辺の女子高生に何が出来るの?言ってごらんなさい」
だから努めて残酷に現実を突き付ける。こんな戦いに一般人を少しでも関わらせてしまうこと自体が私にとってはNOだ。
出来うることなら私だけで解決したいとまで思っている。だけどそれは非現実的。だからみんなに手伝ってもらっている。
私が許容出来るのはそこまで。それ以上、ただの一般人である彼女の関与は許せない。私は最初、番長が昴さんを妖精界に送ろうと考えていたことすら本心では反対だ。
あの時は連絡を取り合う手段も無かったし、最終的な決定権は立場が上の番長さんが持っているから、私が言っても結果は変わらないだろうけど。
私なら最初から門前払いをする。一般人は一般人。何度も言うように、私達の戦いで役に立つことは無い。
「少しくらいなら戦えます。小間使いでもいいです。雑巾がけでもなんでもします」
「根性論を話しているのなら話にならないわ。それこそ貴女の代わりなんていくらでもいるの。代えが効く人材に貴女を使ってやる理由が無い。それに、ちょっとは戦えるですって?」
「……っ」
雑用だろうと何でもいいと主張するのは勝手だ。それで雇うのは構わないとしても、やはり私達に利点は無い。用務員なら既に事足りているのだ。
ここでもやはりプロの仕事を減らしてまで女子高生のバイトを雇ってやる理由なんて無いのだ。
何より、ちょっとは戦える。ですって?
「舐めるな」
感じたことが無いだろう魔力の圧力を容赦なく昴さんにぶつける。おおよそ、今までの小競り合いでも感じたことが無いだろう規模の魔力に違いない。
彼女は今までそういう強大な敵に運よく遭遇してないだけなのだ。運が良いから解決出来たに過ぎない。
その運の強さもまた才能なのも認めるけど、それだけで自分が戦えるなんて思ってもらっては困るのだ。
「貴女みたいなバカから死ぬのよ。私達がしてることは貴女のような平和な環境で育って来た人間が想像するより遥かに過酷なの」
「だと思います。きっと、私なんかが役立つことは少ないと思うんです。でも、私はこっちが良いんです。やりたい事が、見つかりそうな気がするんです!!こっちの方が私には合ってる気がするんです!!お願いします!!」
まぁまぁ酷い言葉を何度も投げかけて、脅しもして、それでも昴さんは食い下がる。
自分が馬鹿なことを言っている自覚はあるんだろう。彼女は決して頭が悪いわけじゃない。悪かったらとっくの昔に死んでるだろうから。
って事は、よほど何かやりたい執着があるのか、帰りたくない事情があるか、精神的な後ろ盾があるのか。
大方、番長の入れ知恵ね。あの人は自分が気に入った人には厳しいけど甘いんだから。全く、仕方がない。
「そこまで言うなら見せてもらうわ。お友達を連れて来なさい。貴女達の実力を私が直接図ってあげる」
「……もし、真白さんが納得出来る実力を私達が持っていた時は?」
「その時は認めてあげるわ。ま、万に一つも無いでしょうけど」
敢えて悪役で、彼女達を挑発する。1対1ではただのイジメだからね。せめて仲間を呼ぶことくらいは許可してあげないとお話にならないでしょうから。




