3組の謁見者
「ふぅ……」
エルフの里を出て数日。私達は今度こそ無事に旧ミルディース王国の首都『サンティエ』へと辿り着き、あっという間に旅の目的を完遂し終えたところだった。
今は真白さんとの謁見も終えて、案内された部屋で一息ついているところ。
とにかく緊張した。憧れの魔法少女、アリウムフルールと面と向かって話が出来るなんて実際にここに来るまで実感がなかったし。
そのアリウムフルールさんもとい、真白さんがこちらでは王族だっていうんだから、なお緊張する。
真白さんの隣に立ってたお兄さん達が明らかに下手な事したら殺すくらいの視線を向けて来てるしね。
特にカレジって人の目つきが怖くて怖くて。パッシオって呼ばれてた人はどちらかと言えば友好的だったと思うけど、決して私を信用しているわけでもないといった具合。
何にせよ、めちゃくちゃに偉い立場にあるってことはそれだけでわかるでしょ?
人間界で言うところのSPみたいなもんだよねきっと。少なくとも私達が何かしようものなら、一瞬でボコボコにされてたんだろうなって思う。
「しっかし、変わった人だったなあの姫さん。俺はてっきりもうちょいフランクなもんだとばかり思ってたぜ。大将と同じ、人間界ってところから来たんだろ?」
「むしろ私はもっと王家の方は厳しい人だとばかり思っていたから、随分と柔和な方だなと思ったよ」
リベルタさんとリリアナさんではそれぞれ違った印象を受けたみたい。
元々予想してた人物像の違いから来るからだと思うけど、私からするとフランクでもあるし、引き締めるところは引き締める人だな、という印象。
なんて言えばいいのかな。んー、メリハリがある?
「私達にも出来るだけ対等に向き合おうとしてくれていたのがよく伝わって来た。あそこまで民に隔たりなく接せるとは、生まれながらに上に立つ人は違うな」
「そこも意外だぜ。てっきり大将だけが評価されるとばっか思ってたんだがよ。だって捜索されてたのは大将だけだろ?」
「貴殿は自分の評価が低過ぎる。いなかったら私達はまともにサンティエに辿り着くことすら難しかったのだぞ」
感心するようにリリアナさんは腕を組みながらうんうんと頷いている。
彼女はすっかり真白さんの人柄に惚れ込んでいるみたいで、ああなりたいとさっきから口々に言っていた。
ちょっと卑屈な物言いのリベルタさんは自分が評価されて報酬まで支払われるとは思ってもいなかったみたい。
それが不思議で仕方がないみたいだけど、リリアナさんの言う通りリベルタさんがいなかったらどうにもならなかった。
それを評価してもらえるなら、その方が良いし正しいと思う。真白さんの性格からして、報酬がケチなこともないだろうし白紙になることもないと思う。
そういうところも、一度決めたら覆さない人じゃないかな。
「良い人なのは間違いないよね」
「間違いない」
「ちげぇねぇ」
2人とも真白さん達がいい人たちだというのは変わらない印象らしい。
後は細かい話を詰めるみたいなんだけど、真白さん達は日頃から忙しいみたいで少し時間がかかるとのこと。
それまで私達は自由にしていいそうだ。しかも生活費はレジスタンス持ちだと言うのだから太っ腹。
人間界ではお嬢様、妖精界ではお姫様。そして魔法少女としての実力もトップ。
神は二物を与えないなんて言うけど、本当に凄い人は2つも3つも特別な何かを持っているものなんだなともまざまざと思い知らされる。
「んで、どうすんだよこれから。一応、各自目的は果たしたようなもんだろ?」
話は変わって、今後の自分達の身の上についてになる。リベルタさんの言う通り、私達の旅は目的地である旧王都サンティエに辿り着き、真白さんと直接話が出来たことでその殆どが達成された。
達成率で言えば98%くらいじゃないかな?もうほぼお終い。ゲームで言えばエンディングを迎えているところだけど、私達は現実を生きている。
エンディングの後の生活だって当たり前にある。目的が達成された今、これからどうするのかを話し合うのは当たり前のことだった。




