3組の謁見者
「妙な謁見希望者?」
何かと忙しい毎日の中で、比較的平穏なお昼を過ごしていた私は渋い顔をしたカレジからの報告を聞きながらお昼ご飯のサンドウィッチを口にしていた。
「どのあたりが妙なの?」
「帝国からの商人が1人、素性の割れない者が2組です。うち1組は人間だと自称しているのですが……」
「人間?もしかして、その子って女の子じゃない?」
実は謁見の申し立て自体は割としょっちゅうある。大体が私に取り入ろうとしたり、直接何らかの陳情をしに来た人、単純に王族を一目見たいという人だ。
1番目の人はガン無視。3番目も論外。2番目に該当して、簡単な内容を聞き、詳しい話を聞く必要がある人にだけ、直接会って話をしていたりするのだけど、今回はカレジの言う通り中々珍しいお客さんが揃っているようだ。
その中でも特に最後の人間を自称する人物に、私は心当たりがあった。
「確かに女子高生くらいの見た目でしたが……。他にも同伴の者が――」
「今すぐ連れて来て。保護対象よ」
しかも女子高生くらいの見た目年齢と言われたらほぼビンゴだろう。番長にも連絡しないと。あの人が一番心配していたからね。きっと、今ある仕事を一旦全部放り出して来るはずだから。
新城 昴さん。まさか私達が見つけるより先に、自分の足で私達の下にやって来るなんて。
純粋に凄いと思う。番長の言っていた通りタフさを持った女の子なのは間違いのない事実。
色々な話を聞くためにも直接あって話をしないとね。
カレジを急がせ、昴さんと思わしき人物とその同伴者との謁見の準備を進める。
本当ならこんな手間のかかることをはしたくないんだけど。何度も言うように、そして実感させられるように。
私は妖精界では王族だ。どうしても何か行動する時は周りを動かさなくてはならない。
同じテーブルを囲むくらいの距離感で良いのだけれどね。そうもいかないというのは少し肩が凝っちゃう。仕方が無いのだけどね。
「ようこそ。お名前を伺っても?」
「新城 昴です」
「リベルタだ」
「リリアナと申します。エルフ族を代表して、エルフ族の現状と支援のお願い。並びに盗賊の引き渡しなどを直接お願いしに参りました」
やって来たのは3人組。女子高生くらいの女の子と強面の鳥人族の男性。若いエルフの女性という組み合わせだ。
中々ユニークな組み合わせで、特にエルフ族の女性がいることが珍しい。
見た目からして街住まいのエルフではない。森エルフと呼ばれる古い生活を続ける一族の出身だろう。
人間界で言うアマゾンやアフリカの原住民のようなもので、他の地域から来た人物に対しては排他的であり、トラブルを起こすこともあるとは聞いていたが、そんな種族がわざわざここに出向いて来たとなると、何かあったらしい。
ともかく、先に昴さんの話だ。
「美弥子さん、カーテンを開けて」
「かしこまりました」
謁見の際は安全の都合上、私と謁見者の間にカーテンがある。このカーテンは私の姿を隠しながら、こちらからは相手の顔までハッキリ見えるというもので昔からこういう形式が執られていたいたようだ。
まぁ、王族だからね。何かあってからでは遅い。私からすれば障壁で十分なんだけどね。
私のカーテンを開ける発言にそばに控えていたカレジが一瞬ぎょっとするけど無視無視。相手に危険性が無いのはよく分かっているしね。
一方のパッシオは特に何とも感じていない表情だ。ニコニコ笑ってはいる。何かあったら飛び出せるようにはしてあるけど。
「ようこそ、サンティエへ。長い旅路で疲れたでしょう?」
「い、いえ。こちらこそ色々とご迷惑を……」
「ふふっ、ごめんなさい格式ばっちゃって。色々事情があってね。肩の力は抜いて良いわ。お互い人間界から来てるのだし、ね?」
「ははははは、はい」
こういうお高くつとまってしまっている状況には慣れていないのか昴さんは緊張した様子。同伴者のリベルタさんとリリアナさんもそれぞれ緊張の面持ちでどうにもやりにくい。
やっぱりこのスタイルどうにかならないかしら。




