エルフの里
「なんだ、お前の親父さんはどっちかっていうと俺ら他種族に友好的というか、今の状況をどうにかしたいって本音のところでは考えてるんじゃねぇか?」
「それは思うな。私達のことを悪く言っているのは一度も無かったし、こうしてある程度は自由にしてくれてるし、さっきも私達が長く里にいれば、エルフが他の種族と仲良く出来るきっかけになるかもって言ってたしさ」
「むぅ……」
確かに、父上が里長になって数百年。エルフの里と外界との争いごとは少なくなっているとは聞いている。
一部の、特に今回もスバル達に難癖を吹っかけている連中を中心に腑抜けの里長と揶揄されているのも知っている。
過去の里長達は他種族が里の近くに近付こうものなら攻撃して追い返したり、捕まえて拷問するように言っていたようだ。
だが、父上はそう言った指示自体は出していない。特にここ百年。私や今の若いエルフ達の世代が生まれてからは、捕まえた他種族は里の外の街道に離すように指示をしていた。
そう、父上は記憶する限り遭難した者を無意味に拷問したり、他種族を攻撃するようには一言も言っていない。
流石に他種族から攻撃を受けた時は反撃しているが、抗争になるような大きな戦いは私が生まれてからは一度も無い。
過去のエルフの里は他種族とそういった争いを何度も繰り返していたのにだ。
「私が思っている以上に、父上は他種族との融和を積極的に目指しているのだろうか?」
「そうだと思うぜ。ただまぁ、魔力崇拝主義やら、今までのエルフの価値観なんかが邪魔すんだろ。そういう考えを持つ奴はさっさと里を出ちまったから味方もいねぇしよ」
「あぁいう人達もいるしね。圧倒的少数派なのに、それを頑張って浸透させようとしてるんじゃないかなぁ」
そう言われると段々そう思えて来た。父上は自分の周辺や里の守りを私も含めた若い者達に任せている。
私はエルフの未来を考えた時、他種族との軋轢は少ない方が良い。なんなら魔力崇拝主義なんて邪魔だと思っている。
流石にそこまで極端な思考はしていないだろうが、若いエルフ達は他種族。特に他種族の持つ多様な技術や思想に興味関心を持っている節はある。
娯楽の少ない森の中で過ごすエルフだ。外部の者、他種族と接触できる里の防衛という仕事はこうして見ると若いエルフ達に外に関心を持ってもらうための策なのかも知れない。
長命のエルフは500年くらい普通に生きる。が、長生きしても800年。それ以上の長寿は記録に無い。今の里の最高齢も650歳だったか。
「ちょっとずつエルフの意識を変えるつもりだったのかもねぇ」
「にしたってちっと長い目で見過ぎだけどな。エルフの時間間隔だと普通に200年とかかかるだろ」
「父上も大概だからな……」
積極的に変えたいのなら、もっと抜本的なやり方を……。いや、それだと里の者達が猛反発するだろう。ただでさえ変化を嫌うエルフが残りに残って濃縮したような里だ。
特に300を超えたそこそこの年齢になったエルフともなれば、自分達の暮らしを変えられることに反発的なのは間違いない。
だからこそ若者から少しずつ、なんだろうが、少しばかり気が長すぎる気がする。
「そう考えると、スバル達は良い起爆剤なのか」
「滞在してくれってのもそういうことだろうよ。ちゃんと考えてんだよ、お前の親父は。里の事もお前のこともな」
そういうリベルタの顔が何故か妙に哀愁漂うのが気になるが、事情を知らない私が首を突っ込むのは気が引ける。
何も気が付いていない事を装いつつ、さっきまで自分がイライラして父上にアタリ散らかしていたことを反省する。
ちゃんと父上が考えているのなら、連中を放置していることにも何か理由があるのかも知れない。
だとしても話せることは話してほしいものだがな。全く、口下手にもほどと言うものがある。
「とりあえずさ。私達も言われっぱなしは嫌だし、しばらくここにいるよ」
「んだな。旧王都に用事はあるけど、ここまで首を突っ込んでじゃあサヨウナラもな」
「恩に着る。私も可能な限り協力しよう」
「うんうん。私達も実は仲間がちょっとずつ情報を集めているからね」
ぱちんとウィンクをするスバルに、へへっと笑うリベルタ。仲間が他にもいるというのだろうか?
意外とこの2人は抜け目が無いのかもしれないな。




