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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
蛮族エルフと解けない誤解

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エルフの里


思わず手が出掛けた私を父上が片手で抑える。


「父上、お退きください。この痴れ者どもを叩きのめすのが筋というものです」


「叩きのめすのは簡単だがその後が面倒になる」


「父上!!」


これ以上つけ上がらせてどうするのか。父上に向けた非難の声を上げるものの、父上は退くことはしない。


それに連中は変わらずへらへらとしているだけだった。


「どういう意味か、一応話を聞こう」


父上はあくまで里長として、広く住民の声を聞く立場にある。


それは分かる。分かるが、それが連中を付け上がらせる原因にもなっている。


優しく強い父上だが、それを利用されているのもわかっているはずなのだ。

こればっかりは父上の性格を恨む。これだけ好き勝手言われるのは面白くない。


「簡単でございます。他種族が我々を貶めるために送り込んで来たと考えた方がそもそもに自然ではありませんか」


「我々の懐に潜り込み、上手く何人かのエルフを絆せればあとは魔物を呼び、自分達で倒す」


「そうすれば里の者から一定の信頼が得られるでしょう?そうやって内部に入ってから我々に危害を加える機会を伺うのです」


「戯言を!!その証拠が何処にある!!」


自分達の危険を顧みずに私に里を者達の安全確保を優先させるような人物が、里にそのような危険を持ち込もうとするか?


もし連中の言うように里に魔物を呼び込むのなら、まずもっと弱い魔物を用意する。


自分達が倒すのに苦労するようでは意味がない。それでやられてしまったら本末転倒どころの話じゃないからな。


それにもっと大々的に見せつけるだろう。


それこそ、里の者達の危険を考えずに里の中にまで引き込んで倒したほうが見栄えが良い。


印象にも残るようにすれば、連中の言う懸念とやらは現実味を帯びて来るが、スバル達は人のいない里と森の境目で素早く迎撃に入った。


里の者達の安全を考えているからこそ、ここで止めるという判断だったのはその場にいた私がよくわかっている。


たった1日。大したことも話していないような間柄だが、スバル達は尊敬に値する人格者だ。


それを愚弄されて、頭に血が昇らないほど大人ではない。


「証拠など都合よく魔物が来たことを疑うだけで十分でしょう?他種族ですよ?」


「いい加減にしろよ貴様ら。そのふざけた思想こそがエルフが孤立している理由だとなぜ分からん」


「孤立がなんだというのです。神の力を乱用するような下賎な者どもと仲良くしては穢れてしまいます」


まるで話にならん。何なんだコイツらは。


何故こうもクズなのか。まるで引っ掻き回して楽しむだけ楽しんで、後始末など知ったことかと言うような気配すら感じる。


エルフの未来などハナから考えていないのだ。考えていれば、そんな言葉は出て来ない。


「欲に塗れたクズどもが……!!」


「おやおや、里の未来を憂う私達に随分と酷い言いようだ」


「里を出たがっている者は他種族と仲がよろしいようで」


「仕方ありませんよ。偉ぶってるだけの小娘なんですから」


ゲラゲラと下品に笑う連中達に私は歯噛みすることしか出来ない。


父上に視線を向けてもGOサインが出ないからだ。


周囲のエルフ達も心配そうにはしているが、巻き込まれるのは御免なのだろう。

遠巻きに眺めているだけで、それ以上は何も無かった。


ゲラゲラと笑いながら立ち去って行くのをただ見てるだけの自分が情けなくて仕方がない。


「父上!!何故あの者達を放っておくのです!!」


「リリアナ」


「アレが里の癌だというのは誰が見てもわかります!!父上が何も言わずに誰が言うんですか!!」


その怒りを父上にその場でぶつける。こんなことは初めてだが、もう我慢がならない。


これ以上奴らを放っておけば取り返しのつかない何かが起こる気がする。


それを今止めなければいつ止めるのだ。誰が止めると言えば、里長である父上ではないのか。


自分の不甲斐なさ、父上の不手際に怒りが爆発した私に父上は困ったような表情をするだけで何も答えが返って来ない。


「父上!!」


「……もうしばらく待て。私にも考えがあるのだ」


「待てません!!」


考えがあるなら自分だけにとどめておかないで、私や近しい者達にも伝えるべきです。


堪忍袋の尾の至るところが切れた私を宥めたのは、騒ぎを聞きつけてこちらにやって来たスバル達なのでした。


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