エルフの里
エルフの里は私のイメージとは違うものだった。
明るく、自然の中で素朴な生活をしているんだろう的な予想を勝手にしていたけど、現実として今見ているエルフの里はなんというかこう、ワイルドだ。
真っ直ぐで細い竹みたいな植物の枝か幹かを組み合わせて作った壁と大きな葉っぱを何枚も重ねて作った住居は原住民か、あるいは縄文時代の竪穴式住居を思わせるものがある。
本当に、これは人間界でいうエルフの。しかもアニメや漫画のイメージだとエルフは綺麗で頭が良くて、自然が好きで、魔法がとっても得意な種族だ。
「こっちにもこういう生活している人、いるんだね」
「ん?まぁ、種族によるだろ。エルフはこうやって森の奥で生活してるんだ。余所者が大っ嫌いで、里の近くをちょっと通るだけで攻撃してくるもんだから、他の種族からは嫌われ者なのさ」
現実に私が出会ったエルフは、一言でいうと本当に原住民。
魔法を便利に使っている様子すらなく、人々は自然の中で手に入れた物を加工して、道具として利用しているみたいだった。
それもわざと不便にというか、出来るだけ加工の程度を落としているような気がする。
なんというか、魔法を使えばもっと丁寧な物が出来てもおかしくないのに、それを敢えてしていないみたいなものが建物も含めてたくさんある気がする。
「嫌われ者か。まぁ、そう言われても仕方がないだろうな」
リベルタさんに嫌われ者呼ばわりされたことで周りのエルフの人達はピリピリし始めるけど、リリアナさんだけは自嘲気味に鼻で笑っていた。
この人だけはどうにも雰囲気が違う。何というか、自分達が外から見た時にどう思われているのかをちゃんと感じてるのかも。
「当たり前だろ。たまたま近くを通った、遭難した奴でも関係無しにとっ捕まえちまうんだからな」
「え、捕まえたらどうするんですか?」
「拷問されてから街道に転がされるか、そのまま魔物の餌にされてるか、だな」
それを想像してうげーっと思わずリアクションしてしまう。
そりゃ嫌われるよ。いや、中には悪意がある人もいたかも知れないけどさ。
ただの迷子でも拷問なんて流石にそれは、ねぇ?
「……あれ?もしかして今その途中?」
「ぶふっ。あはははっ。今それに気付くのか。中々大物だな、君の連れは」
「大将……」
もしや今の私たちがそれなのでは?と天地明察したら何故か笑われた。何故だろう。だってそういうことだよね今?
「ひー、久々に大笑いしたぞ。スバルだったか、面白いな君は」
「いやー、それほどでも」
「たぶん褒めてねーから」
何だか大笑いしてくれたのなら良かった。怖い顔をしているより、人は笑ってた方が良いもんね。
よくわかんないけど、私で笑ってくれたのなら良かった。うんうん。
そんな感じでエルフの里を歩いて行くと、奥の方に一際大きな建物が見える。
と言っても、周りに比べるとだ。ほら、周りの建物はとってもシンプルな構造ばかりだから建物自体があんまり大きくない。
せいぜい小さな倉庫くらいの大きさのものが大半の中、私に馴染みがある二階建ての一軒家の大きさの建物があれば、それは大きな建物だよね。
「とりあえずは里長に判断を仰ぐ。精々弁明することだ」
「大将の無害さは分かったと思うが?」
「私からは何も言えん。意見は出来るが、決めるのは里長である私の父だ。せめて怒らせないようすることだな」
そう言って、リリアナさんからの説明は終わってしまった。
建物に着き、大きな声でお父さんだという里の長さんを呼ぶと、建物の中からヌッと大きな身体が現れた。
えっ?熊か何かで?




