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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
公国の領主

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帝国の策


そこから先のことについては覚えていないとまではいきませんけど、ただただ茫然としてました。

完全に思考能力のキャパシティを超えると人間ってこうなってしまうんだなぁと実感した次第です。したくありませんでしたけど。


リアンシの方はと言えば、いつになく堂々と、領主らしいと言うと語弊がありますけど、いつものヘラヘラと、のらりくらりとやり過ごして大抵のことは役人にほぼ丸投げしていた先日までとは見た通りの人が変わった様子。


ハキハキと民衆に起きてしまったことの詳細と謝罪。そしてこれからの方針についてしっかりと伝えていたように思います。


覚えている限りだと、まずは帝国からの宣戦布告が為された旨。それと同時に行われた首都への攻撃。

その損害と事実上それをいち早く察知し、防いだ私の存在。


それらを踏まえたうえで、公国は帝国に対して徹底抗戦の構えを取る事。そのためには旧王国領のレジスタンスとの共同戦線を張る必要性がある事を民衆に説いて見せた。


公国と旧王国は元々特段友好的な関係であり、国民同士も仲が良いのは民衆全体がよく分かっていることだ。


それを守るレジスタンスとの協力関係を解消、あるいは細くしていくことは帝国の思う壺であり、帝国は何よりそれを恐れ、二方面から同時に攻撃を行われることを避けるために今回の攻撃が行われた。


民衆にそう伝えた内容はそれほど間違っていないように思う。本当なら首都に打撃を与えたうえでの揺さぶりが本筋だったはずだけど、打撃を与えられなかった以上精神的な揺さぶりのみになってしまった。


これをどうにか説得し、民衆の精神状態を立て直すのがリアンシの試みなんだと思う。


帝国が公国に大したダメージを与える前に撤退したのも、あれから攻撃の気配が無い事も、結局は帝国が公国の防衛能力に対処し切れていないことで起きていること。


あれはあくまで最初だから通じた奇襲であり、一度きりしか使えない搦め手。二度も三度も同じ手をくらうほど、公国の防衛力は甘くない。


何より、レジスタンスとの協力関係こそが、帝国の攻撃への早期発見に繋がり、私達が広い意味で公国の領土の防衛力向上に一役買っているのだと説明をしたリアンシは最後に国民の協力をお願いし、私を伴って広場を見下ろすバルコニーを後にした。


「どうしたんだい、百面相して」


「誰のせいだと思っているんですか?!」


そうして今、私はリアンシの私室で頭を抱え、この頭の痛い状況を作り出してくれたおバカ目掛けて思わず声を荒げます。


ホント、何てことをしてくれるんですか。勝手に婚約者に祭り上げるなんてとんでもないとしか言えません。


国民にレジスタンスとの協力関係の意義を示すにしたって、もうちょっとやり方と言うものがあったじゃないですか!!


「協力者ではありますが、都合の良いように使われるのは流石に不服なんですが?」


「え? 僕は本気で君と婚約するつもりだけど」


「は?」


割と真面目にコイツは何を言っているんだの「は?」だ。んんん? 私を利用してレジスタントの協力関係を維持する話ではなかったのか?


とまぁ、自分でも笑っちゃうくらい見当違いなのが分かる苦しい言い訳を試みる。本当はそっちだったら良いなぁ。

なぁんて淡い期待は見事にぶち破られた。


誤魔化そうとしていた心臓の音がまた大きくなる。目の前でニッと笑うリアンシの目がこちらを狙う猛獣のようにも、私を優しく撫でるようにも見える。


それをちらりと盗み見て、私は蛇に睨まれたカエルのように大人しく縮こまるしかない。


「ユカリってば案外押されると弱いよね」


「だ、誰のせいだと……」


「あははは。うん、僕のせい。これは僕のわがままだ。この話が本当に嫌ならユカリは拒否してくれて構わないよ」


異性に交際を迫られたことは何回かある。人間界において、私の体つきはハッキリ言って男受けのするそれだから。そういう関係になりたいという下心が見え見えの異性からのアプローチは何回か受けたことがある。


どれもこれも軽薄で、リアンシみたいなへらへらした薄っぺらい人達ばかりで心底気持ち悪いとその度に思って来たはずなのに。


「僕は君がいてくれなきゃ正直困る。君以外が僕の隣にいるなんて考えたくも無い。だからまぁ、一緒にいてくれるととても嬉しい」


いつものへらへらしたホントか嘘かも判断しかねるような笑顔じゃなくて、恥ずかしそうにはにかみながらこちらを見るその顔が、どうにも心にガツンと衝撃を与えてならないのはなんなんですか。


誰か教えてください。


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[一言] ···もう既に手遅れじゃん···WWW
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