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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
公国の領主

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帝国の策


「残念だけどリアンシが何をするつもりなのかは私からも伝えられないわねぇ」


「え」


頼みの綱のノーヒリス様にも開口一番に説明を拒否されてしまって、私はもう項垂れる首もない。


何をどうするつもりなのか、せめて誰か教えてほしい。リアンシのことだから絶対とんでもないことのはずです。

心の準備をしておかないとこっちが持ちませんよ。


「ごめんなさいね。不器用な子だから。自分の気持ちを真っ直ぐに伝えるのがとても苦手なの」


「それはわかりますけど……」


あの捻くれた性格の奥底に見え隠れするのは信用出来る誰かを見つけたいという寂しさのようなモノが垣間見える、気がする。


一時期の真白さんに似ているんです。本心を隠して、自分だけでどうにかしようとして、でもそれは無理なことが何処かでちゃんと理解していて。


でも周囲を頼れない。


真白さんの頼れない理由は自分の身の上から来た秘密からでしたっけ。

今では見る影もないですけどね。


「あの子はね、私の娘。プリムラにとても懐いていたの。王国の姫であるプリムラ、帝国の王子であるレクス、公国領主嫡男のリアンシ。3人で姉弟のように育ったのよ」


それはそれとなく察していたことの一つだ。


まだ妖精界が平和だった頃。帝国が王国領に侵攻する前までは妖精界には殆ど戦争の歴史が無いくらいには、平和な時間が長く長く続いていた。


プリムラさん、帝王レクス、リアンシの関係は碧ちゃん、朱莉ちゃん、私の関係によく似ていたのだと思う。


血の繋がる家族でもないけど幼馴染より関わりの深い、ちょっと変わった兄弟関係。


朱莉ちゃんが碧ちゃんの言うことだけはしっかり聞くように、リアンシはプリムラさんには強く出れなかったに違いない。


そして帝王レクスや私のような真ん中の人がそれを見て笑うのだ。


「でも、それは……」


「えぇ、それは呆気なく崩れたわ。王国がクーデターにより王を失い、その混乱に乗じて侵攻して来た帝国によって、いとも簡単にね」


そんな姉弟の関係は帝王レクスの蛮行によって。


リアンシにとっては兄が姉を襲い、国を壊した張本人。先の戦いでも散々見た口論の内容はまさにそれだったですし。


「そのせいであの子は他人が簡単に信用出来ないし、簡単に本心を見せるのが怖くなってしまったの。寂しくて悔しくて、大好きだった姉の姿を出来る限り模して、大好きだった兄を憎んだのが今のリアンシよ」


「……」


女性の姿をとっていたことに、そんな意味があったなんて。


私にはやっぱりかける言葉が見つからない。そんなことがあったら、私には耐え切れないかも知れない。逃げ出すことだって考えられる。


先の戦いの中で思ったことだけど、逃げることも出来ず。向き合う勇気も持てなかったリアンシのほんの少しの抵抗が、あの姿を取り続け、のらりくらりとやってるあの性格だったのでしょう。


「でも、もう大丈夫ね。過去のことに縛られるのをやめて、向き合って立ち上がることを選択させる勇気をくれた人がいるんですから」


「そんな人がいるんですか?」


「えぇ、ただ貴女が隣にいるだけであの子は立派な領主になれる。私が多少の無理をしてここに留まる理由もそろそろ無くなりそうね」


「……へ?」


あれ、この感じ。この前もあった気がする。なんだか物凄く嫌な予感というか、とんでもないことに巻き込まれる気配がビンビンとしますよコレ。


「ユカリ、準備出来た?」


「うひゃいっ?!」


目を白黒させているとリアンシがノックも無しに入って来る。

女性が着替えをしている部屋なんですからちょっとは配慮をしてください。


なんて、冷静なフリをしてますけど心臓はバクバクです。予想はもう出来てるんです。ここから何が起きるのか。


ただ、それを理解するのを拒んでると言うか、怖いというか。わからないんです、自分の感情が。


「よし、じゃあ行こう」


「え、え、え」


手を引かれ、ただ困惑の声しか上げられない。でも振り払う気も起きないんです。

だって、このまま行ったらきっと取り返しのつかない事になるんですよ?


もっと事前に色々話し合う必要があるはずですし、その方がきっと良いですし、こんな強引な進め方って無いなと思ってるのに。


頭は回ってるのに心と身体ははちゃめちゃで、流されるだけってわけでもないはずなのに。


手を引かれて歩いた先。大きな扉がひとりでに開いて、外の明るい光でほんの少しの時間だけ、視界が真っ白になった後。


眼下に広がるのは樹王種の城。その広場に集まったもの凄い数の民衆。


「まず、皆に言うことがある!!」


そこに向けて声を張り上げ、領主としての言葉を伝えるリアンシとその横で棒立ちの私。


「公国領主であるリアンシ・イニーツィア・ダイナ・スフィアはこのホンダ・ユカリ嬢と婚約することにした」


そしてとうとう言い放たれた言葉に、とうとう私はくらくらし始めるのだった。


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