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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
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パッシオとのデート(この際便宜的にこう呼ぶことにする)を終え、ヴィーゼの街であてがわれた宿の一室に戻った私は戻るなりベッドにダイブして、大きく息を吐いた。


あの後、幾つかお茶を購入し、グリエの実家であるお茶屋からお邪魔した私達はあてもなくぶらぶらとヴィーゼの街を気ままに散策した私達。


何をするでもない。適当にぶらつきながら、気になったお店に入っては物色をしては、買い物をしたりしなかったり。


新しい物を買えば、どこからともなく美弥子さんが現れて、買った商品を回収していく。


慣れれば特に思う事もないんだけど、一体どこで見ているんだろうとやはり思う。

気にしたら負けという事で割り切るのが一番だと思っているので何も言わないけど。


「はぁ……」


そんなことよりも私を苛んでいることが1つ。説明をする必要もない。パッシオのことについてだ。


自覚をしてからまだ大した時間が経ってないとは言え、意識するようになってからというもの彼への感情は肥大化するばかりだ。


いや、肥大化ではないか。きっと元から私が彼に向けて持っていた感情を私がようやく認識出来るようになっただけだ。


それが私の想像以上に大きく、強く、そしてどうしようもなく制御しがたいものだというのにやっと私が気付き始めただけ。


世の女の子達は、こんなに強くて、苦しい感情を学生時代から持っている人が多いのだろうことを考えると、尊敬する。


確かにバレンタインデーが一大イベントになる気持ちも今なら分かるかも知れない。


制御しがたいこの感情を、恋心を満たしたいという気持ちを。でもどうすればいいのかわからないこの焦燥を、好きな人にチョコを渡す日という共通のイベントを通すことで御しやすく、伝わりやすく、何よりやるべきことが分かっているというのはとてもありがたいものなのだろう。


過去にパッシオに向けて、チョコを渡した経験はある。でもあの時はこんな感情なんて露程も知らない。


本当に赤ん坊みたいな恋愛観しか持ち合わせていなかった当時の私からしたら、あの時のチョコはせいぜい普段のお礼くらいの軽いものだった。


「今は渡せる自信無いや……」


今渡すなら本当の本当に、ちゃんと気持ちを込めて渡す。


それ以外の選択はないし、それが最善だと思うし、みんなも応援してくれるだろう。

パッシオも喜んで受け取ってくれる自信はある。


でも肝心の渡す勇気が、決断を下せる自信は全く無い。


伝えるということがあまりにも怖過ぎるから。


伝えることで変わってしまうことがあることを理解出来てしまうからこそ、その変化がどんなふうになるのかの確証も無いし、迷惑をかけるというマイナスの想像しか浮かばないから。


きっと考え過ぎだ。それは何となくわかってる。

これはきっと杞憂に終わるんだろうなという楽観的な思考を何度もしようと試みた。


それでも頭の硬い、根が臆病な私が私の心に蓋をしようと積極的に動いている。


「はぁ……」


こんなに焦がれているのに、近くにいるのに、遠く感じる大事な相棒。


今までこんな気持ちにはならなかったのに、どうしてこんなに陰鬱なんだろう。


そのクセ、パッシオと一緒にいる時の自分の浮かれ具合と来たら、笑えてくる。


本心がどこにあるのか、本当はどうしたいのか。


わかっているつもりなのか、わからないフリをしているのか。

もしかするとまだ気が付いてない自分の気持ちがあるのか。


自分で自分に答えが出せないことが、きっとこの不安の正体なんだろうな。


そしてこの不安に向き合って、ちゃんと行動を起こせるのが恋を成就させられる女の子なんだろうな。


「半端なくらいなら、いっそただの女の子が良かったな」


半端な生まれも、半端な立場も、半端な性別も。


何にもなくて、ただの女の子だったらこんな気持ちにはならないのかな。


「でも、そしたら……」


そしたら、パッシオには出会えない。ただの女の子じゃあ彼の隣に立つどころか、目にか入れてもらえることも無かっただろう。


それは嫌だな。


ここ最近は布団に入る度にぐちゃぐちゃに考えが巡るだけでまとまらない。


そんな自分に嫌気が差しながら、微睡みの中に落ちていくのも嫌な気分だった。


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