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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
星の巫女

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星の巫女


「スミアも慌てるのね。いつも澄まし顔してるから、動じないと思ってたんだけど」


「私だって恥ずかしいって感情くらいあるよ!!」


あの後逃げるように全てをスタンに押し付け、ピケを連れて近くにあるカフェまでやって来ていた。


最初にピケが私から逃げ込んだカフェだ。適当に注文をして、変わらず笑うピケと突っ伏している私。


数日前とはまるで逆だ。


「て言ったって、スミアはモテるでしょ?」


「モテないよ。なんなら友達だってロクにいないし」


同年代の人達とは正直言って話が合わない。テレビでやっているドラマに出ている俳優がカッコいいとか、アイドルが可愛いとか。


全然わからない。そんな人の上辺だけ見て、何が良いんだろうと常々思っている。


お姉ちゃん達と喋っていた方がよっぽど楽しいよ。色々知れて、勉強になるし、それが誰かのためになるなら尚更いいと思う。


「冷めてるわねー。人に興味があるんだかないんだか。人の為に頑張るクセに、人を選り好みしてるなんて」


「そりゃ、だって。私はそういう立場だし」


10歳頃からそうやって人を助けて来た。私のアイデンティティの一つだ。それに別に嫌いなわけじゃない。どうやったら仲良くなれるのかがわからないだけ。


……コミュ障とか言わないでよ。年上ばっかりに囲まれて生きて来た弊害ってやつなんだから、仕方ないでしょ。


「ははぁん。アンタ、さては自分の感情とかに気が付かないぶきっちょね?私は言い過ぎてダメだけど、スミアは言わな過ぎてダメってわけだ」


「うっ……。良いよ、別に。そうやって生きてたってお姉ちゃん達がいるし」


「そのお姉ちゃんとやらがいつまでもアンタのお守りをしてられるわけないでしょ。いつまでも隅っこ暮らししてるんじゃないわよ。アンタは日向で生きるだけの出自と才能を持ってるでしょうが」


ダメ出しの連続、しかも事実としてそうだと思わされる本質の部分を突かれると私としては反論の余地も無い。


いつまでもお姉ちゃん達におんぶに抱っこで良いわけもない。いつかお姉ちゃん達だって私のことを面倒見てくれるわけじゃない。


それこそ、千草お姉ちゃんは婚約者の五代さんがいるし、真白お姉ちゃんだってパッシオがいる。

真白お姉ちゃんは否定するだろうけど、あれで結婚しなかったら周りがド突き回す。主にパッシオを。


他のお姉ちゃん達だって、そういう人はいずれ出来てもおかしくないし……。


「アンタだってお姉さん離れするかも知れないでしょ。そういう意味ではスタンは良い相手じゃない」


「だからって、そんな簡単に人を好きになれないよ」


「少なくともアンタの周辺にいる同年代の男子よりは仲良いんじゃないの?アンタみたいな人と距離を取りたがるタイプが特定の誰かと行動を共にしてること自体が、アンタが少なからずスタンへの好感度が高い証拠じゃない」


言われてみればそれは確かに、そうだけど。そうじゃない。


それを恋愛に直結させられても困る。私は別にそういうのは興味が無いんだって。


「それは、否定はしないけど……。それが恋愛的かどうかはまた別じゃん。ピケみたいに好きだから一緒になりたいって感情は無いよ」


「別に恋愛こじつけはするつもりは無いわよ。ただ、アンタ達はお似合いよってだけ」


「それはピケがスタンを諦める理由を見つけたいだけじゃん。私を勝手に理由にしないでよ」


「理由には十分なのよ。諦めるからこそ、アンタ達はお互いに相応しいんじゃない?って推薦してるだけ。無理強いは勿論しないわ」


別に恋愛がしたくないわけじゃない。興味はないけど、出来たらそれはきっと良いものなんだろうなとは思う。


ただしそれを周りから強制させられるのは嫌だ。私は私の意思で動きたいよ。姉離れとか言われるならなおさら。

知り合ったばかりのピケに言われる筋合いは無い。


お互い、語気が強くなってきて半分くらいは口喧嘩みたいな雰囲気になりつつある。

ピケは多分純粋に私とスタンの事を思って言ってくれているのは分からなくはないけど、良いお節介だよ。


諦める理由に使われるのも御免だ。自分の気持ちのケリは自分の中だけで着けて欲しい。私をダシにされるのは癪ってヤツだ。


それを伝えても、ピケは自分の意見を引っ込めようとはしなかった。しなかったけど、その代わりにピケの表情は今までの喜怒哀楽がハッキリしたモノじゃなくなって。


「……なんて言えば良いのか分からないのよ。この感情がなんなのか、分からない。ただスミアに嫉妬してるのか、諦めたいのか、背中を押したいのか。ただ、一つ言えるのはさ――」


「……言えるのは?」


「これから大きなことに立ち向かうアンタ達の人生。その重要な部分に、私は絶対に居ないって事が分かってる。そういうことなんだよね。スタンがお兄さんに立ち向かおうとしていることも、アンタが追ってる敵との戦いってヤツもさ」


悟ったような、悲しんでいるような、そんな何とも言い難い表情で私に笑いかけていて。

それを見た私は、どうしてか何も言う事が出来なくなってしまって。


少し縮まっていたかに思った、彼女との関係に、どうしようもないような溝があるように思えた。


好きとか、嫌いとかそんな単純なものじゃない。例えるならそう、劇の舞台に立つ役者か、観客席に座る客か。


ピケはきっと、自分が舞台に立てることは無いとわかってしまったんだと思う。


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