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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
星の巫女

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星の巫女


ピケに事情は伝えてあるのか。それさえ確かめればあとの行動は特に苦労なく選択出来る。とにもかくにも聞かなくては。


そう思って勇み足で部屋の外に出ているピケに聞こえないように耳打ちしようとしたところで。


「……邪魔だった?」


部屋の外に出ていたはずのピケが部屋の扉を開けたところで所在無さげに立ち尽くし、私達に問いかけていた。


「何が?」


「いや、だって、その……」


首を傾げるスタンと、言い淀むピケ。そして私の体勢と言えば、スタンに耳打ちするために彼の顔に自分の顔を近づけている状態だった。


端から見れば、恋人がイチャついてキスしようとしているシーンに見えなくもないだろう。特にスタンに恋心を寄せているピケにとってはよりそういうフィルターがかかって見えてもおかしくない。


「とりあえず席外しとくから、2人はご自由に」


「ちょ、ピケ――」


誤解を解こうとピケを呼び止めるも、私の声は空しく届かず。ピケは部屋の扉を閉めるとアパートメント自体から出て行ってしまったようだった。


状況を整理改善しようとした結果。更に混沌と化してしまった現実に私はガックリと項垂れる。完全にやらかした。ピケとは友好的な関係を築きたかったけど、彼女にとって今はどんな状況であれ、私は恋敵に映っているに違いない。


本当に婚約者かどうかはあの状況ではどうでも良い。ピケにとっては想いを寄せる幼馴染についた虫だ。


露骨に距離を取られた現実がそれを更に実感させた。


「……さっきからどうかしたの?」


「お前が撒いた種じゃい!!」


「あいたぁッ?!」


事情を知らず、そしてこの状況の元凶であるバカの頭をひっ叩く。最初からスタンがするべき説明をしてくれればこんな事態にはなっていない。


毎度毎度、説明が遅いのだこの男は。ピケが思考と口が直結してしまっているのが悪癖なら、スタンの悪癖は説明をちゃんとしないことだ。

全く、この妖精達は……。


呆れる私を他所に、スタンはなんのことだかさっぱりわかっていないのか、ただ目を白黒とさせている。


ピケの恋心を勝手に伝えるわけにもいかない以上、全貌を話すわけにはいかない。だからといって説明も無しにスタンに苦情だけぶつけるのも筋違いだし、どうしたものか。


「どういう状況?」


「あー、とりあえず聞きたいんだけど。ピケには何処まで話してるの?」


「どこまでって?」


「私達の関係の話に決まってるでしょ。本当の方?建前?」


こういうことには察しの悪い王弟陛下だと内心で悪態をつきながら、このややこしい状況を改善するために最も必要なことをスタンから聞き出す。


これが分からないとどうしようもない。誤解を解く難易度が天と地ほどの差がある。


「あぁ、それなら知っているよ。ピケは確かに思考と口が直結してるけど、口が軽いわけじゃないよ。それがどうかした?」


「どうかしたじゃないわよ。その話、私全然聞いて無いからね?」


「あれ、そうだっけ?」


あれ、そうだっけ?じゃないのよ。この唐変木。パッシオを相手にしている時の真白お姉ちゃんが度々パッシオをベランダに吊るし干ししていた気持ちが今ならよく分かる。


可能ならこの場で逆さづりにしたい。このおバカにつける薬は何処かに無いだろうかと本気で思う。


天を仰いで我慢する私に怪訝そうに顔を顰めているけど、顰めたいのはこちらだ。スタンのせいでこっちが奔走しなきゃならないのは本当にこう、蹴っ飛ばしたい気持ちになる。


それをぐっと抑えて、はぁぁぁ~と長い溜息を吐くと、私はピケを探すために外に出る準備をする。


「ちょっとピケと話があるから、探して来るわ」


「それなら僕も――」


「スタンは話がややこしくなるから来ないで」


自分も手伝うと善意のつもりだろうけど、今回ばかりは邪魔でしかない。スタンにはこのアパートメントで大人しくしててもらおう。

幸い、この目のおかげで人探しは得意だ。見晴らしのいいところでもあれば、そこで探せるだろう。


「とりあえずここにいて。余計な事はしないこと」


「……はい」


ここまで来て、ようやく自分が何かしでかしたのに気が付いたらしい。スタンは私が言われたとおりに大人しく椅子の上で縮こまっていることを選んだ。

これで少しは動きやすくなるだろう。


軽く身なりを整え、外套を羽織って外に出る。まずは探すのにちょうどいい場所の選定だ。


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