女学生失踪事件
人的痕跡があればいいが、どうだかわからない。軽い調査はしていたらしいから、そっちはそっち。
こっちは魔法側から調査をしていくだけだ。
「ここがあの子の部屋よ。夜の1時ころに部屋を出て、中庭にいたことは分かっているんだけど、そこからは戻った様子がないの。家の外にも出た形跡はないわ」
案内された部屋は10畳ほどの部屋だ。自室としては十分に広い部屋だ。内装も控えめながら女の子らしいレースや色遣いが所々にあり、女の子の部屋という雰囲気だ。
委員長のお母さんの話を聞きながら、俺はパッシオを床に降ろして、魔力残滓などの魔法的な探知を任せる。
俺は机等を見ながら、なにか無いかと一応探してはみる。
「真白さんのペットさんもなんだか頼りに見えるわね。ちゃんと何かを探してくれているように見えるわ」
「パッシオはとても頭が良いですから、もしかしたらちゃんとお話を理解しているんだと思います」
「そうなの。ありがとうね」
「きゅい」
部屋の中をすんすんと鼻を鳴らしながらウロウロするパッシオは、少し顔を緩ませながら見てくれている委員長のお母さんに褒められて、小さく鳴いて返事をする。
ちゃんと返って来た返事に驚きながら、あらあらと声を出す様子は気丈なものだ。
泣いてしまいそうな感情を抑え込んで、委員長が無事に帰って来てくれることを願っているんだと思う。
俺たちはその願いに応える結果を出さなくちゃいけないと思う。
そうやって部屋を一通り調べ終え、次は中庭だ。調査していて驚いたのは、委員長の机の中に魔法少女についての記事や雑誌の特集をまとめた物が出てきたことだ。
少なくとも、魔法少女には多少なりとも憧れがあったのかも知れない。中にはアリウムに関する内容もあったので、少々気恥しい。横に『野良の魔法少女で、政府所属の魔法少女と肩を並べられるなんてすごい!!』なんて走り書きを見つけてしまったのだから、尚のこと恥ずかしい。
その魔法少女、めっちゃ近くにいますよ。しかも二人はクラスメイトだよ。言えないけどさ。
「きゅっ」
そんなことを思いながら中庭を散策しつつ、何か無いかと探していると、先に駆け出していたパッシオの鳴き声が聞こえてきた。何か見つけたのかな?
「何かあった?」
「魔力の残滓だ。属性は風。妖精と魔法少女の二つの魔力がどっちもある」
「どっちも?委員長が変身して抵抗したのか?」
「分からない。ただ、抵抗したのならもっと中庭が荒れてる筈だよ。ともかく、ここで魔法が使われたのは確かだよ」
小声で喋るパッシオの言う通り、あたりの植物や地面が荒れた様子はない。仮に咄嗟に魔法少女に変身したのなら、それなりの抵抗の痕跡があるはず。
それに、今度は妖精と魔法少女、二種類の魔力があると言う。
仮に委員長が隠れの魔法少女だとしても、色々と噛み合わない。多分、決定的に重要なピースが欠けているんだ。
ただ、ここに魔力があるということは、間違いなくあいつらによる隠れ魔法少女を狙った神隠しだろう。
それが確信出来ただけでも収穫だろう。
「他には何か分かった?」
「とりあえずこの魔力を覚えておくよ。かなめちゃんの匂いと魔力残滓もちょっとだけ分かったし」
「匂い、は緊急事態だから仕方ないか。魔力残滓があったの?隠れだと思うのに」
「こっそり隠れて魔法の練習をしていたのかもね。部屋の中にほんの少しだけね」
委員長本人の魔力が分かったのは良い情報だ。どこかから漏れ出ていれば、パッシオが追うことが出来る。
問題は、そもそも漏れ出るきっかけがあるのかどうかだけれど。




