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女学生失踪事件

そもそも、魔力と言うのは原則として年月とともに増えていくものであって、魔力を消費したりすれば一時的には減るものの、失うと言うのは聞いたことが無い。


魔力と言う摩訶不思議な力は、現状、恐らく人間では俺しか知らない事実だが、妖精界から流れ込んで来た空気のような物だ。これを貯め込むことが出来る一部の女性たちを、魔法少女、と呼称している。


魔獣も恐らく原理としては似たような物だろう。数多くいる生き物の中で、魔力を貯め込める何らかの要因を持っていて、その貯め込んだ魔力を暴走させてしまったのが魔獣なんじゃないかと、俺は思っている。


ある種、広義の意味では魔法少女と魔獣は同じ理屈で発生している、という事だ。まぁ、これはパッシオから魔力についての説明を聞いた俺が素人なりに思いついた、何の根拠もない仮説に過ぎない。そんな詮無い話は後にして、その基本的に貯まり、増えていくものであるはずの魔力を失う、と言うのは聞いたことのない事例だ。


膝の上に昇って来ていたパッシオにそっと視線を向けても、パッシオも小さく首を横に振って、そんな事例は聞いたことが無い事を教えてくれた。


「具体的に、失った。というのは」


「隠れとは言え魔法少女は魔法少女。最低でも彼女達は変身は出来るわ。神隠しに合った隠れの魔法少女達は、この変身すら出来なくなっているの」


「まぁ……、隠れという立場からすれば、活用法の無い魔力を失ったところで何がある訳でも無いし、そもそも日常的に変身することもないから、気付きもしないか」


「でも、魔力が無くなっているんですよね?仮に失うとしたらどうやって……」


「そう、問題はそこよ」


ビシッと指を付き出して光さんは問題として挙げられた、魔力を失う方法について魔法庁が立てた仮説を口にした。


そして、その仮説は以前、俺と千草がこの屋敷で初めて出会った時に立てた仮説が概ね正しかったと思われることを裏付ける結果になった。


「ズバリ、魔法庁が最悪の事態を想定して立てた予測は、あの男たちの手によって、隠れの魔法少女達の魔力が奪われた可能性よ」


「魔力を、奪う……?」


そんな事が、可能なのだろうか。奪ってどうする?いや、待てよ。いやでもそれだと、辻褄が合わない部分も出て来る。

今、俺の脳裏に過ぎった仮説が尤もらしい理由付けにはなるのだが、パッシオのあの時の探知によれば、あの時男たちから感じた魔力は魔法少女由来ではなく、妖精由来の物だったはずだ。


仮に、あの男たちが使っていた魔法。あれが魔法少女から奪った魔力から行使された魔法だとして、なら何故、あの時パッシオが感じたと言う魔力は、魔法少女から感じる魔力ではなく、妖精から感じ取れる魔力だったのだろうか。


「まさか、連中が使っていた魔法が?」


「えぇ、魔法少女達から奪った魔力で行使しているんじゃないかって、魔法庁は予測しているわ。そうでもなきゃ、男に魔法は使えないもの」


「だとすると、奴らは魔力に関する技術を持っているという事……」


「その通り。この推測が正しいのなら、奴らはまだ人類が持ち得ていないはずの万人が魔力を扱うための技術を持っているという事になるわ。しかも、秘密裏に集めている辺り、その用途は平和目的や技術発展のために使われることはまず無いと思っていて良いでしょうね」


俺が、俺とパッシオだけで共有している情報との齟齬に悩んでいる中、その情報を知らない二人は、魔法庁の推測と同じ様に、男たちが隠れ魔法少女達から魔力を奪い、その魔力を用いて魔法を行使している、という方向で話が進んでいる。


方向性は同じかも知れない。ただ、何かが違う。何かがワンクッション、間に挟まっている。ほぼ間違いなく、妖精絡みでだ。

拭えない疑念と、それを口にすることが出来ないもどかしさを感じながら、俺は同時にもう一つの最悪に気が付く。


それは狙われているのは隠れの魔法少女、という点だ。


「光さん、隠れの魔法少女って、魔法庁側でも敢えて把握していなかった魔法少女達ですよね?」


「えぇ、魔法少女としての才能はあるけれど、魔法少女にはならない。そう言う選択をした子達、もしくはそもそもに魔法少女になれることに気が付いていないかも知れないわね。そう言った、個人の選択の自由を尊重するために、魔法庁が保護をするのは魔獣退治を行うと決めた魔法少女達だけ。それ以外の魔法少女達については、原則として魔法庁側が個人情報を把握している事はほぼ無いわ。実際、それでも今までは問題が無かった」


つまり、魔法庁は神隠しから守らなくてはならない隠れの魔法少女達の情報はほぼ持っていないし、総数すら知らない状態。


今から情報を集めようにも、魔法少女にならないことを選択した彼女達が魔法庁に『私、魔法少女になれます』なんて今更教える訳もない。

だからと言って、隠れの魔法少女が魔力を奪われている可能性があり、奪われたものが犯罪に使われる可能性があるなど、民衆のパニックと暴動が起こりかねず、簡単に公表出来るものでもない。


後手どころの騒ぎではない。連中から少しでも情報を引き出さない限り、詰みのそれだ。

むしろ、今回気付けなければ、一切気が付くことなく、奴らの行動は着々と何かの目的に向かって進んで行ったことだろう。


状況は最悪。確かにどうしようもなく悪い知らせだった。


予約投稿が上手くいって無くて投稿遅れました


追記:ん?投稿出来てた?表記ぶれなのか、なんなのか……

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