第3話 ★出会い★
ブクマよろ。
★9274♪
身体強化で脚力や体力が上がった僕は、その力を活かし、家を出てから今もずっと全速力で走っています。
ここまでで約二十キロメートルを十五分で走っているので、このペースでも大丈夫でしょう。
ただ走っているだけなら飽きてきたので、今は木をつたっていくように跳んで進んでいます。
やろうと思えば、どんなに細い小枝でも、体重に負けて折れる前に踏ん張って跳んだらいいので、折れる前に渡っていけます。
それからまた一時間ほど経ち、少し休憩することにしました。
僕は無限収納の中からお母さんの作ってくれたパンを取り出した。中にクリームがたっぷりと入っているのが特徴のお母さん特性クリームパンだ!
僕はお母さんが作ってくれるパンの中でも特にこの特性クリームパンが好きなので今日もお母さんにお願いして作ってもらいました。
「ご馳走様!」
クリームパンを計三つ食べた僕は食後の運動を少ししてから、また、シルバー王国へと向かおうとした。
シルバー王国に着いたらまずは首都には行かず、周辺の街を探してそれから手頃な宿を探すつもりです。
レンブラント魔術武術学術総合学園の入学試験は今日からあと一週間先なので、それまで泊まっておく宿が必要となります。
勿論。お母さんからもらったお金もあります。
それも………かなりの大金です。
このお金があれば僕は一生を楽に暮らせることとなるでしょう。
お金のことについても少し話をしておきます。
まず一般的な貨幣としては【銅貨】です。
【銅貨】は名前の通り銅で造られた貨幣です。
そして、【銅貨】十枚分の価値がある貨幣が【銀貨】
【銀貨】十枚分の価値がある貨幣が【金貨】です。
そして、一般の人は普通、お目にかかることが滅多にないのが、【金貨】千枚分の価値がある【白銀貨】となっています。
この貨幣は人族の全ての国で、共通して使われています。
中には、貨幣を魔法で作ろうとした人もいるらしいのですが、白銀貨のみ、それぞれの国の王族が魔力を込めているので、大きな取引の際は、一度確認することもあるそうです。
そして、小さな村や集落では未だに貨幣が流通しておらず、いわゆる物々交換で集落同士で交流したり、村人同士で交換しているらしいです。
これは国の問題とされて、大厄災が起こる前から討論されていだそうです。
お金の基準としては、およそ街で買えるパン一つが銅貨一枚で、一般的な家が白銀貨三枚で買えます。
これも、家の大きさや内装。材料など、さまざまな条件によって値段はバラつきます。
中には自分で自分の家を作る人もいるそうです。
勿論。許可は必要ですが……
そして、僕がお母さんからもらったお金は白銀貨三十枚です。
……もちろんですが、一般はこんな大金を持ち歩くことはありません。ましてや、まだ十二歳の子供にです。
僕も、そんなに入らないと言いましたが、お母さんたちが『別にいいわよ。家にはまだいっぱいあるんだから』と言われ、渋々ですがこの大金を受け取りました。
そして、これだけの貨幣があれば、貴族が住んでいる屋敷も楽々買えるでしょう。
そして、シルバー王国では爵位制度が使われています。
獣族の国や、シルバー王国以外の国の中には使われていないところもあります。
例えば、完全武力主義の国などです。
例を挙げますと、獣族の国の殆どは、
『強いものは偉い!!!弱いものは偉くない!!!』
といった思想を持つ、いわゆる弱肉強食の世界なのです。
その為、王族などそういった一族は存在しません。十年に一度行われている大会にて、次の王を決めてあるらしいです。
そして、あまり詳しくは知りませんが僕が前に読んだ獣族の本によると、王族というのは一応いるにはいるらしいです。しかし、殆ど表舞台には出てこないそうです
昔読んだ本と、無限収納の中に入っているお金の使い道などを考えながら僕はひたすらにシルバー王国へと向けて走っていきました。
それから三時間後、時刻がちょうど正午に差し掛かった頃、僕は森で見つけた特段大きな木の近くでお昼ご飯を食べようとしていました。
あれからほぼ同じペース、あるいは段々ペースを上げながら走っているので予定より随分と早く着くと思います。
途中、何回か魔物と遭遇したのですが、これといった強敵も無く、魔物と激しく戦った末、森が破壊されてしまうのは嫌なので、とりあえず全ての魔物を一撃で倒して、その倒した魔物は無限収納を使い、一応中に入れています。
そして、今日のお昼ご飯は、僕の大好きなドラゴンのステーキです!!!
ちなみに無限収納の中にはまだ、ドラゴンのステーキが三食合わせて一ヶ月分くらいの量が眠っています。
全てお母さんが一から作ってくれた母性溢れるステーキなのです!
作った状態で保存して(無限収納の中に入れて)あるのでいつでも焼きたてが食べれます!
しかし、ここでお母さんの天然ぶりが出てしまい、無限収納の中に入っている食べ物が、ドラゴンのステーキだけ………なのです。
流石に大好きな食べ物でも、朝昼晩。毎日食べるというのは、なかなか飽きてくる話です……
なのでまず、シルバー王国の街に着いたらちょっと違った料理も食べてみようと思います。
お金もたくさん持っているので、多少奮発してもいい事でしょう!
どんな料理が出てくるのか、今から考えただけでも楽しみです!
僕はステーキを取り出しました。
ステーキは、木でできた皿のような板にぴたっと、取り付けた熱々の鉄板の上に『どでん!』とのっていました。
僕は、出来立て熱々のドラゴンのステーキを木で作られたナイフとフォークで丁寧に一口サイズに切り分け、口の中に放り込みました。まだ、肉は熱く肉汁もたっぷり出てきます。
やっぱりドラゴンのステーキはとってもおいしいです!
「う〜ん……いつかドラゴンさんに出会ったらちゃんと御礼を言わないとだめですね〜………」
★★★★★★★★★★
「ふぅ〜…ご馳走さま」
ドラゴンのステーキを食べ終えた僕は残った食器を水魔法を使って洗い、もう一度無限収納の中に直しました。
それではここで息抜きとして、少し無限収納のシステムについての話をしましょう。
無限収納は、自分が取り出したいものを間違えず、すぐに取り出せる為に、ある程度しまっているものを分別してくれるシステムになっています。
分別する範囲やジャンルは人それぞれの好みらしいのですが、僕は大雑把に、【武具類】【生活用品類】【魔物類】で分けています。
ちなみにお母さんは意外に整理整頓が好きらしく、約二十個のジャンルに分けて収納していました。
それに、どれをどこに直したかを全てばっちし覚えているのがお母さんの凄いところのところなのです。
『母』恐るべし……
★★★★★★★★★★
「うっ、うわあああああ!!!助けてえええ!」
「………」
昼食をとってからおよそ一時間が過ぎようとした頃……僕はとあるハプニング?に巻き込まれていました。
遡ること大体五分前……
僕は昼食をとってからもどんどん王国へと向かって進んで行き、その速さはもはや風となって進んでいきました。
しかし、そんな僕を止める声が僕の耳に聞こえてきました。
実を言うと、少し前から【気配探知】に人が一人引っかかっていたので気にはなっていました。
まぁでも、この近くの魔物は皆弱い敵が多いので大丈夫だろうと思った矢先にこの悲鳴です。
取り敢えずその方向へ向かってみると、僕より三つ四つほど歳が下だと思われる男の子が大きなヘビの魔物に襲われていました。
あいつはこの森に生息している【バジリスク】と呼ばれている魔物です。この地帯ではどちらかというと、だいぶ弱い部類に入ると思いますが……まあ、この歳ですから仕方ありません。
…………そう心の中で呟いたのが、つい先ほどです。
さて、ここからどうしましょうか。
助けるのはもちろんなのですが、あいつの肉は調理が難しく、お母さんでも狩ってきたら苦笑いするくらいです。そんな魔物を僕が調理しようなんて、絶対無理です。
上手く調理できれば、とても美味しいのですが……いくらお母さんに料理の心得の一つや二つ覚えていても流石にあいつだけは調理したくありません。
しかし、バジリスクの体汁には解毒作用が含まれており、どんな毒も搔き消すということで、ものすごい価値があります。
それとは真逆に、猛毒作用のある毒を体内に溜め込んでいます。
一見。簡単そうに思えますが……そんなことはありません。
何故なら……………
★★★★★★★★★★
「うっ、うわあああああ!!!」
『ギュルルギャララアアア!!!』
「ーーー【覆う氷】」
ーーーピキーーーン
「………へ?」
突如、ついさっきまで暴食なまでに暴れていたバジリスクの周りに球体を作るかのような氷ができたかと思ったら、その球体が割れ、氷漬けになったバジリスクが出てきた。
それを見た男の子が何事かと、辺りをキョロキョロ見渡しています。
そして、氷魔法でバジリスクを凍らせたのにも理由があります。
バジリスクは自分が倒された時、その死体からとても耐えられないような臭い匂いを放ちます。そして、その匂いには、仲間を呼ぶ効果もあるので、その匂いで失神したところを他のバジリスクに襲われるということです。
それに、バジリスクは死んでしまうと、解毒作用のあった体汁が、一転。猛毒作用のある汁へと変わってしまうのです。
その毒にも需要性はあるのですが、その毒は皮膚に触れるだけで、その効果を発揮し、触れたところからどんどんと体を腐食していきます。
これが、バジリスクの討伐が難しいとされる原因です。
なので、バジリスクを倒すには氷魔法がとても有効です。
補足なのですが、一般にはバジリスクの肉は食べられないものとして扱われています。
理由は簡単で、体内にある猛毒が身体中に回っていき、その肉にも毒が回ってしまうからです。
そんな肉を食べられる状態にできるというのは………
「………やはり、『母』恐るべし…」
★★★★★★★★★★
そして、バジリスクを凍らせ、そこへ駆けつけてきた僕と少年の目が会います。
「君、大丈夫?」
「え?あ、うん。大丈夫……」
(見た感じ怪我とかは無さそうですね)
男の子の服や顔には所々泥などが付いており、服も所々破けていました。
目が赤いので、つい先程までずっと泣いていたのでしょう。というより、今も半泣き状態です。
茶色い髪の毛の先っぽがくるっと左や右に流れており、眉毛も細く、長く…目を見る限り、なんだが、か弱いような気がします。
「この氷…君がやったの?」
「うん。僕が魔法でやった」
「す…すごい……。僕なんかまだ全然魔法なんか出来たことないのに……」
「そうなんだ、まあでも、特訓さえすればきっと君もできるようになりますよ!」
この男の子、僕から見た見た目ではおよそ八歳。
その歳で魔法を使えない人は平均的にいうと少ないです。
派生魔法と言われれば一気に難易度が上がるので使える人の方が珍しくなるのですが……
(それにしても、これまでずっと人間 の反応なんか全く引っかかからなかったのに……なんでこの子はここにいるんだろう……)
「えーっと、どうして君は……というより、名前を言ってなかったね。僕の名前はルフィス・カイです」
「ぼっ、僕の名前は【フィーカルト・アメシス】って言います。気軽にフィーと呼んでください」
「わかったフィー。それじゃあフィーに質問するけど、どうしてフィーはこんなところにいるの?」
この質問は極めて普通のことだと思う。
冒険者……とは思えない容姿の子供が一人、こんなところにいれば、そう質問するのも必然だろう。
「えっと、それが……分からないんだ」
「分からない?」
「うん。目が覚めたらここにいて、それからこの森をさまよってたらあのヘビみたいな魔物に襲われて、その時にルフィスが助けに来てくれたんだ」
「そうなんだ…」
どうやら迷子……と言うわけでもないらしい。
それにしても目が覚めたらここにいたというのは、どうゆう意味なのかイマイチわかりません。
もしかしたら、親に捨てられたのかも知れませんが……
それともう一つ。この状況を説明できる理由があります。
その理由が果たしてあっているのか、僕は確信に迫ってみました。
「フィー、君は自分のスキルが何か知っているかい?」
スキルのせい。ということならば、この状況を説明することが出来ます。
スキルというのはおよそ十歳になるまでにもらえると言われている不思議な能力のことです。
スキルは最高三つ。少なくとも、必ず一つは授かります……いや、授かるはずです。
スキルの中には【ユニークスキル】と呼ばれる産まれながら授かっているスキルもあり、世界にたった一つのスキルのことを言います。
なので、スキルについてはまだまだ研究が続いています。
スキルには、ある一定の条件を達成しないと発動しないものもあります。
例えば、『初めて剣を触った時、魔力量が大幅に上がる』などの効果です。
この場合、条件というのは『剣を触る』ということです。
このスキルは実際にあり、そのスキル名を【剣豪】といい、魔力量が上がると同時に、身体能力も上がるといった内容の効果があります。
「ううん。多分僕はスキルをまだ授かっていないと思うよ」
そして、自分のスキルは自分で確認することが出来るわけではありません。
自分のスキルを見る方法は、二つです。
まず一つ目。【鑑定】スキルを持っている人に自分のスキルを見てもらう。
【鑑定】スキルというのは、相手の使える属性。基本魔法。派生魔法。神級魔法。から、相手のスキルまで、鑑定スキルの種類によって見れます。
【鑑定】のスキルを持っている人は鑑定士という職業に就くことが多いので、【鑑定】のスキルを持っており、尚且つ、スキルが見れる人に頼むか、そのような人が営む店に行くかして、みてもらう方法です。
ただし、それを逆手に、【鑑定】スキルを持っていないのにも関わらず、鑑定士を偽る人もいるので、正確性はあまり保証されません。
そして二つ目。王国の教会にある触れると自分のスキルが分かる水晶に触れることです。
この水晶は別名【知の宝玉】といい、製造方法などは、明らかにされていません。
ただし、正確性は百発百中で、必ず当たっていると言われています。【知の宝玉】をその正確性から、神様の落し物と評するものもいます。
それに、スキルだけでなく、ありとあらゆるものが触れるだけでわかるので、お金に余裕が無い人でも、一度、訪れる人が多いそうです。
つまり、お金に困っていて、尚且つすぐにでもスキルを調べたい人は鑑定士に依頼する。
逆に、お金に困っていない、絶対に当たっていることを最優先としている人は、教会に行く。
といった風に分かれます。
「そっか、それで君はこれからどうするの?」
「う〜ん。取り敢えず、家に帰りたいけど…ここがどこか分からないし……」
「え〜と、じゃあ、どこに住んでいるの?」
「シルバー王国の中にある小さな村だよ」
「あっ、それじゃあちょうどいいですね、僕と一緒に行きましょう」
「え?!いいの?」
「うん。僕もシルバー王国に行く予定だったから」
取り敢えず、今からはフィーと一緒にシルバー王国へと向かい、フィーを家族の元へと連れて行くことも目的とします。
とはいえ、シルバー王国の中にある小さな村を残り一週間で見つけるというのはいささか難しい問題でもあります。
国土面積が人族の大陸の中で一番広いのですからね。
「よしっ、それじゃあ今から行きましょうか」
「うん!」
そう言い、僕はフィーの頭にぽんっと、手を置いた。
フィーもにこにこと笑っている。
「ーーー【神速】【障壁】
僕は光をも超えうる速さで森を一気に駆け抜けた。
もちろん。フィーを抱えたままだ。
「はっ…速い……」
そんなスピードで走っていては、今度は空気が的となってしまう。
なので僕は、光魔法である【障壁】を使い、空気の抵抗をなくしました。
そのおかげで、普通なら体の方が持たなくなってしまい、体が壊れてしまうことも防げました。
そして僕は、あえて王国へと一直線に向かわず、魔物がいる方へとわざと向かいました。
それも、一目見ただけで、死を感じてしまうほどの強さを持った敵です。
僕は【気配探知】の対象を狭めることで、逆に、【気配探知】の範囲を大幅に広げました。
【気配探知】は、【殺気拡散】と同じように、魔法を使えなくても習得できます。
ただし、霊魂魔法を習得している人に限っては、その範囲や細かい設定などを大幅に高めることができます。
なので、霊魂魔法を使えない人には、【魔力感知】の方が圧倒的にデメリットが少なく、便利なので、ほとんどの冒険者は【魔力感知】を使っています。
そして…僕の気配探知に一体の大物が釣れました。
僕はフィーになるべく方向転換したことを気付かれないよう、徐々に迂回していき、そいつの目の前へと現れました。
あまりに大きな体躯からそいつは、そう名付けられたそうです。
その名も……【森林大熊】
別名。森のヌシ。
全身がまるで山のような形、色をしており、背中には一本の大きな木が立っています。
今は寝ていてわからないですが、眼力が鋭く、新米の冒険者なら、その眼を見ただけで、その恐ろしさに精神力を削り取られ、そのまま気絶する人もいるそうです。
ナワバリ争うが激しく、巨大な体ゆえ、全身傷だらけなのですが、その傷が森林大熊の威圧感をより一層重く感じさせられます。
「ル、ルフィス!あっ、あれ何っ?!」
「あれは森林大熊ですね。森のヌシとも呼ばれている、とっても凶暴で凶悪なことで有名な魔物です」
「えっ?!」
あえて、“凶暴”“凶悪”という言葉を使うことで、フィーがあの魔物を物凄く強いと思うように仕向けました。
まあ…今言ったことは全部本当のことなんですけど……
森林大熊の見た目からわかる強さと、僕の言った言葉で、フィーのあの魔物への印象は『暴悪』そのものとなったでしょう。
つまりこれで完璧です。
僕はあえて森林大熊に向けて、殺気拡散を弱く放ち、挑発効果を煽ります。
勿論。山のヌシこと森林大熊さんは、その殺気に苛立ち、その巨大な体を持ち上げて、鋭い眼力をこちらに向けてきました。
「ひっっっ!!!」
その眼力にフィーは気絶寸前まで精神力を削り取られました。
否、僕が精神力を高める魔法を常時フィーに放っていなければ、もう既に、フィーは気絶していたでしょう。
「大丈夫です、ちょっと待っててください。今からあいつを倒してきますから」
「ひっく…ルフィス、は、大丈夫な…の?」
僕を信じているようですが、今の眼力の前に、やはり僕のことが心配になったのでしょう。
そして、ここまでの一連の流れも僕の作戦通りです。
森林大熊は怒りに身を任せながら、こちらへと向かってきました。フィーの顔がだんだん青ざめていくのが分かりました。
僕は、森林大熊の突進を、軽々とフィーを抱えながら空中で一回転し、森林大熊の背後を取ると、こんどは本物の殺気拡散を放ちました。
その瞬間。森林大熊の体毛がビクッと震え、突進していたはずの体が砂埃を舞いながら急に止まり、こちらを振り返ろうともしないで、森の中へと猛ダッシュで逃げて行きました
「ル…ルフィスさん…すごい!」
今回の目的は、フィーを完全に信用させることです。
凶悪な魔物に物理攻撃も魔法も一切使わずに、逃がせたという事実がポイントです。
殺しても良かったのですが、ポイントとしては、あの、『暴悪』な魔物が恐れをなして、自分自身の判断で逃げた。ということです。
この方が、僕の強さを見せる為には、手っ取り早く、尚且つ見ただけでわかる方法です。
殺す方が良かったのかもしれませんが、あの巨大な体ですので、森に被害が及ぶ可能性を考えると、殺気拡散で自分の立場を思い知らせることが良いと判断しました。
「さて、あの魔物も追い払ったことですし、王国へと向かいましょうか」
「はいっ!ルフィスさん!」
そして、この、フィーとの出会いが、後々の入学試験に大きく関わってくるということを僕は、まだ知る由もありませんでした……
★★★★★★★★★★
フィーと一緒にシルバー王国を目指し始めてからおよそ一時間半。ようやくシルバー王国へと到着しました。
到着したといっても、まだ周り一帯は全て草むらで、
僕たちは、『ここからシルバー王国』という看板とそれを基点にぐるっと地平線の彼方まで伸びた木製の柵を越えただけです……ただし、この柵には、魔法が付属されており、国境線を表すものとなっています。
さらにここから、シルバー王国の首都である王都シルバーへと向かい、さらにその途中でフィーの家族が待つ、村も探さないといけないのです。
大丈夫だと思いますが、やはり、一番の敵は【時間】です。
制限時間は試験日から考えていあとわずかです。
約束したとはいえ、到底、一週間ではこなせないようなミッションです。
それでも、必ず送り届けて見せます!