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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと拾った暗号
8/41

その4

ありえんほどのミスをしたので再投稿です

週が明けて月曜日、教室に着くと、真衣と夏美が二人で向かい合って、なにか考え事をしていた。

「おはよう二人とも。朝から何とにらめっこしてるの?」

「あ、アリスちゃん、おはよう。ごめんね席借りちゃった」

 私は、そのまま夏美の膝の上に座らせてもらう。

「軽いねアリスちゃん」

「……一応好意的に受け取っておくわ」

 夏美のことだから、きっと皮肉めいたことを言いたかったわけじゃないと思うし

「アリス、これ見てよ」 

 真衣は、先ほどから二人を悩ましていたであろうそれを持ち上げる。

「これ、謎解きラリーの日に、委員長の鞄に入ってたんだって」

 その紙には、数字の羅列だけが、六行に渡って記されていた。

挿絵(By みてみん)

「いつの間にか、鞄に入ってて……それも不気味なんだけど、この数字の意味もさっぱり分かんなくて……」

「……」

「アリス? どうしたの? そんなにビビっちゃった?」

「こ、これよ……」

 私は、驚きで体が震えていた。初めての経験だった。

「これだわ! これが、お兄ちゃんの言ってた、対になる紙なのよ!」

 私は、思わず立ち上がって大声を上げてしまった。クラス中の視線が私に向けられるが、気になんてしない。

「実は、私も似たような紙を、あの時拾ったの」

 私は、鞄から(一応真衣とかにも相談するつもりで)持ってきていた紙を取り出す。

挿絵(By みてみん)

 私は、早口で、お兄ちゃんが言ってたことを二人に話す。

「なるほど……対の紙か……流石お兄様ね。事実、こうして、謎の暗号が出てきたわけだし」

「アリスのお兄さん、本物の名探偵みたいだね! すごいなぁ」

 実際は、本にしか興味持たない変人だけどね……。

「でも、お兄ちゃんの言う、対の紙が、夏美の持ってた紙とは限らないけど……一応、そうだと想定して、この暗号を解読してみようよ」

 さながら謎解きラリーの延長戦だ。

「……」

 真衣は、腕を組んで考え込んでいる。

「……むぅ」

 夏美も、頬に手を当てて考え込んでいる。

「……全然わかんない……」

 駄目だ……ちらりとも閃かない。

「大体、ヒントは鏡って何よ! 鏡がどうしたって言うのよ!」

「うーん、亮太君なら解けるかな?」

 夏美はぽつっと呟く。

「亮太が? あいつにこんな暗号が解けるのかしら」

「ふふっ、アリスちゃん、亮太君は意外とこういうの得意なのよ。謎解きラリーの時だって、大体の問題は、亮太君が解いちゃったんだから」

 意外な事実だ。

「ま、まぁ、あの問題は、私と真衣の二人で全部解けたし……」

 私が、減らず口を叩いていると、噂の人物がクラスに姿を現した。

 亮太は、いつもより顔が暗くみえた。目の下にクマも見える。

「亮太君、おはよう」

 夏美が声をかけると、亮太は、

「お、おおおおおおっ、お、はよう……」

 明らかに様子がおかしい。

「大丈夫? もしかして、気分悪いの?」

「いや……良くはないけど……」

「実は、亮太君に見てもらいたいものがあって」

「え……」

「これなんだけど……」

 夏美は、二枚の暗号を亮太に見せる。

「……夏美は」

 亮太は振り絞るように、

「これ、解読できたのか?」

「解読出来たら苦労しないでしょ」

 夏美の代わりに私は応えた。

「アリスっ! お前には関係ないだろ!」

「はぁ!? 何よいきなり! 関係ないことないし! 片方は私の鞄にはいってたんだからね!」

 なんなのよ亮太の奴っ! 関係ないですって? 勝手に決めつけないでよね!

「お前の鞄から……? ちょっと待て、それはどういう意味だ?」

「この二つの暗号、私とアリスちゃんの鞄から出てきたのよ」

 夏美がそう言うと、亮太は苦虫を500匹ぐらい噛み潰した顔をした直後

「あぁ……そう言うことか……」

 そのまま膝から崩れ落ちた(本当にガックリって擬音が付きそうだった)。

「そういうことかって、亮太、お前まさか分かったの? この暗号?」

「うるせぇ……放っておいてくれ……」

 亮太は、自分の席に座ると、そのまま机に突っ伏した。

「ちょっと! 分かったなら答えなさいよ!」

「まぁまぁ。アリスちゃん。亮太君も疲れてるみたいだし……」

 むぅ~。どうして私の周りの男は、真実を口にしないの!?

「いいじゃないアリス。きっと放課後になれば謎は全て解けるわ」

 真衣は、自信満々の様子でそう言った。

「どういう意味よ?」

「対となる紙が見つかった今、お兄様の素晴らしい推理を聞けるんじゃないの?」

 真衣は、ワザとらしい演技でそう言った。

 



 HRが終わるとすぐに、私と真衣、そして夏美の三人は、我が部室に向かった。お兄ちゃんにはあらかじめ、放課後部室に来るよう、メールを送ってある。

 部室前に着くと、そこにはお兄ちゃんが既に待っていた。

「お兄ちゃん……相変わらず早いね」

「今日は家で本を読みかったんだが」

 いつも読んでるでしょ! という突っ込みを私はかろうじて飲み込んだ。

 真衣がカギを開けて、部室に入る。

 二つあるソファーに、私と夏美、お兄ちゃんと真衣が並んで座る。

「お兄様、コーヒーとお紅茶は、どちらがお好みですか?」

「コーヒー」

「かしこまりました。アリスと委員長は?」

「私は紅茶!」

「えっと……私も紅茶で……」

 真衣は、ポッドを手に取り、水を汲みに行った。

「アリスちゃん……どうして学校にティーセットがあるの?」

「真衣の私物よ……先生には絶対言わないでね」

「うん……」

 夏美が困惑するのも無理はない。

 私も、ちょっと慣れてきたけど、先生に見つかったときの恐怖を考えると、ちょっと落ち着かない。


「はぁ~……おいしい~」

「兼崎さんの淹れてくれた紅茶すっごくおいしい……」

「ふふっ、良いの使ってるからね。お兄様? コーヒーは美味しいですか?」

「……ちょっと苦い」

「あら、それは申し訳ありません。今度からもう少しお砂糖をいれておきますね。あぁ、チョコレートはいかがですか?」

 なんだか、真衣はお兄ちゃんに甘すぎる気がする。

 真衣は、お兄ちゃんを尊敬してるらしいけど、これじゃあ甘やかしてるだけなんじゃ……。

「って! のんびりしてる場合じゃないのよ!」

 そうだ! 本題を忘れていた。暗号よ暗号!

 私は、二枚の暗号をお兄ちゃんに叩きつける。

「お兄ちゃん、この紙。この紙がお兄ちゃんの言う対になってる紙なの?」

 お兄ちゃんは、二枚の紙を交互に見比べる。

「……なるほど。やっぱり当たってたか」

 お兄ちゃんは深く頷いた。

「俺の推理通り、この二枚の紙は、対になってるものだ。まぁ、対と言うより、アリスの拾った紙の方は、これをヒントに近いけどな」

「これ、どうやって解くのよ!」

「アリス……お前、もう少し、自分で考えたらどうだ? 自分で考えないと、立派な探偵になれないぞ」

 私は、探偵になりたいわけではないんだけど。

「ヒントって言うのは、鏡の事なんですよね?」

 夏美がお兄ちゃんに尋ねる。

「正確には、鏡に映すと分かるってことだけどね」

 鏡に映す?

「これを言っちゃうと、ほぼ答えだし、解いてしまうか」

 お兄ちゃんは、一つ咳払い。

「さて――」

 お兄ちゃんは、ヒントの方の暗号を手に取る。

「このヒントの方の暗号を解くカギは、ずばり数字の数にある」

 数字の数……数字は1から26まであるわね。

「26と言えば、あるものを思い浮かべます」

「あ、アルファベットかしら?」

 真衣は、ハッとしてそう言う。

「その通り」

「えへへ」

 真衣はなんだか嬉しそうだ。

「この数字は、アルファベットを表しています」

「じゃあ、1はAで、2はBってこと?」

「そう、簡単なら良いんだが、そうではない。まぁ、1はAを表してはいるんだがね。だからまずは、何故二列に並んでいるかを考えるんだ」

 二列……つまり、アルファベットを二つに分けるってこと?

「アルファベットを何らかの法則で二つに分ける。そしてヒントは鏡」

 お兄ちゃんは、私たちの顔を順番に覗く。

 もう分かるだろ? そう言ってるみたいだ。

「アリス、アルファベットを順番に大文字で書いてみてくれ」

 私はノートを取り出して、順番に書く。


 ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ


 「それを鏡に映してごらん」

「え、手鏡で良いの?」

「なんでもいいよ」

 言われた通り、私は、アルファベットに鏡を映す。

「鏡に映ったアルファベットを二つに分けられないかい?」

 鏡に映ったアルファベット……一体何を分けるって

「ああーっ!」

 夏美は突然大声を上げた。

「分かった! 分かったよ!」

 夏美は、本当に嬉しそうな顔をしている。

「左右対称だよ! アリスちゃん!」

 サユータイショー……

「ほら、大文字のAって、左右対称でしょ? 鏡に映してもAって見えるじゃない。でもBはどう? 鏡に映るとBには見えないでしょ?」

「……あっ、あっ、そっか、そっか!」

 私は、ようやく意味が分かってきた。

「なるほど……左右対称……、左右対称のアルファベットは、A H I M O T U V W X Yの11個だから……もしかして、これが、1から11に当たるってことですかお兄様?」

「そう言うことだね。逆に言うと、左右非対称のB C D E F G J K L N P Q R S Zが、12から26に当たるというわけ。図にするとこうだね」

挿絵(By みてみん)

「ということは、もう一枚の方は、この法則に当てはめれば良いわけね……なになに……」

 21は、えっとNで、1はAでしょ……だから、な、つ、み、へ……

「え、一行目……夏美へって書いてある……」

「あ、アリスちゃん、それ本当なの?」

「……次も解読しましょ……えっと……ほうかご……」

 え、ちょっと待って……この暗号……もしかして……

「お兄ちゃん、これ、全部解読したんだよね?」

私は、どうにもならない気持ちで体が震えている。

「ああ」

 お兄ちゃんは、それがどうしたって顔でそう言った。

「お兄ちゃんの馬鹿! 信じられない! こんなことって……」

「アリス? これ、なんて書いてあるのよ?」

「……夏美へ、月曜日の放課後、伝えたいことがあります。って書いてあった……」

「え、それって……」

「もしかして……ラブレター?」

 真衣と夏美は、驚いた声を上げる。

「ご丁寧に、差出人の名前も書いてあったよ」

「誰なの……?」

 夏美は、期待とか不安とか色々混じった顔をしている。

「亮太……」

「え?」

「この暗号の差出人は、亮太だよ」

 私の眼には、何故か涙が浮かんでいた。

挿絵(By みてみん) 

二日おきの更新予定です

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