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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと拾った暗号
7/41

その3

 人の波に揉まれるとは、まさにこのことね……。

 新しく出来たショッピングモールは、私の想像を絶する混雑ぶりだった。

 混雑を危惧して、開店30分前に到着したのに、入口へと続く道には、

「アリスちゃ~ん? 大丈夫ですか~? 可愛いお顔が見えてないですよ~?」

 人ごみに紛れて、真衣のあざ笑う声が聞こえてくる。

「真衣! 手! 手ぇつないで! 本当にはぐれちゃうから!」

 私の声は必死だ。本当に潰されかねないのよ!

「はいはい」

 真衣は、ニヤニヤしながら、私が伸ばした手を優しく握り返してくれた。

 真衣の手は、思ったより力強かった。


 ヒィヒィ言いながらなんとか入店して、真衣と色々物色して回ることにした。

「あ、アリス。あのお店どう? ちょっと寄ってかない?」

 真衣が気になったお店は、いわゆるロリータ系の、ファッションを取り扱うお店だった。

「真衣、ああいう服も着るの?」

「ううん。全然」

 そうでしょうね。ちなみに今日の真衣は、くるぶしを見せたパンツルックだ。

「アリス、ああいうの似合うと思うのよね。っていうか似合うでしょ? 金髪ロリータなんだから」

「ロリって言うな」

 言われる身にしてみれば、屈辱的なんだから。

「とりあえず、お店の中見てみようよ」

「私は別に興味ないのに……」

 引きずられるように店内に入る。

「はぁ~。見てみてアリス。シンデレラみたいなドレス!」

 おとぎ話から飛び出してきたかのような、その淡いピンク色のドレスだった。 

「こういうお姫様みたいな服、一度は憧れるわよね~」

 真衣は、ブラックドレスの方が似合うわよ。

「女の子なら、一度はこういうドレスを着たがるわよね。そうでしょ?」

「……まぁ、子供の時はね」

 私も未だに記憶に残ってる。

 幼いころ、お父さんに駄々をこねて買ってもらったあのドレス……。

「アリスが大きくなるときまで、大切に取っておこうね」

 あのドレス……どうしたっけ……?

「アリス? どうしたのそんな真剣な顔をして。まさか、お買い上げ?」

「え? あ、いや、お買い上げって言われても……ちなみに値段は?」

「えっと……5万6千円」

「……」

 ちょっと高すぎるわね……(いや、もしかしたら適当な値段なのかもしれないけど)。

  

 

 その後、いろんなお店を回りながら、フードコートで一息ついたのは、謎解きラリーのイベントが始まる20分前だった。

「まさか、ここまで混んでいるとはね。予想外だったよ」

 真衣は、たこ焼きを食べながら苦笑した。

「ホントにね……どこのお店も混んでたし……」

 私は、たこ焼きをつま楊枝で転がしながら(私は猫舌なの)溜息をついた。

「お兄ちゃんは、この混雑具合を予想して、今日来なかったとか」

「お兄様なら、有り得るかもね」

「どうせ、本読みたいだけなのよ……はぁ、結構疲れちゃったから、もう帰りたい……なんて」

「同感……」

 真衣の目線が、私から外れていく。

「真衣?」

「アリス、あれ見て」

 真衣が指さした方向を見ると、

「あれって……夏美?」

 我らが委員長の姿が、そこにはあった。

「夏美も、今日ここに来てたんだ」

「……気にならない?」

「何に?」

「委員長の相手よ」

「相手って……」

 もしかして……デート?

「あんなよそ行きの格好しちゃってさ、絶対デートよ」

 確かに夏美は、綺麗な白いワンピースを着て、同姓の私から見ても、キマッテルって感じだった。

「アリス覚えてる? 昨日委員長を誘った時の事」

 確か夏美は、先約があるって言ってた……。

 それがデートってことなの? じゃあ相手って誰なんだろう……。

「どうする?」

 真衣は、新しいおもちゃを買ってもらった子供のような表情をしている。

「あ、動いた。追いかけるわよアリス」

「えっ、まだたこ焼き食べてるのにっ」

 真衣は、ツカツカと歩き始めた。

 全くもう……食べ歩きなんで行儀悪いのに……。

 私は、たこ焼きを口に頬張りながら、真衣の後を付いていく。


 夏美を尾行(と言っても、数百メートル)した結果、たどり着いた先は、

「あれ、ここ、謎解きラリーのスタート地点じゃない?」

「委員長も、謎解きラリーに参加するのね」

 見渡せば、かなりの人が集まってきている。

 家族連れや、カップルの姿も見える。

 夏美、一人で参加するのかな? それかデートの相手がいるのか。

「あれ? 夏美どこ行った?」

 ちょっと目を離したすきに……。

「私はここですよ」

「ヒッ」

 後ろから急に話しかけられて、変な声が出てしまった。

「アリスちゃんも、兼崎さんも、どうしてこそこそ追いかけてきてたんですか?」

「委員長、いつから気付いて?」

「フードコートの時から」

 最初からじゃないの。

「委員長……やっぱり侮れない……」

 真衣は、ブツブツとつぶやく。

「夏美も謎解きラリーに参加するの?」

「そうだよ」

「でも、昨日誘った時は断ったじゃない」

「それはほら、言ったでしょ? 先約があるって」

 夏美がそう言うと、ドタドタと足音が聞こえてくる。

「な、夏美! はぁっ、遅れた……すまん……」

「良いんだよ亮太君。私もさっき来たところだから」

「いや、俺から誘っといて、俺が遅れるなんて……って、アリス! それに兼崎! お前ら二人ともなんでここに!?」

 登場早々忙しいない奴ね亮太は。

「私と真衣は、謎解きラリーに参加するからいるの」

「……夏美、お前まさか、こいつらも誘ったのか?」

 こいつらとは随分ね。

「伊藤君、残念だけど、私とアリスは、たまたま、ここに居合わせてしまっただけよ」

 真衣は、ニヤッとした表情でそう言った。

 経験上、この顔をしている真衣は、何か良からぬことを考えている顔だ。

「たまたま……まぁ、仕方ない……」

「夏美、先約って言うのは、亮太の事だったの?」

「うん。亮太君から、誘われてたの。一緒に謎解きラリー参加しないかって」

「ふーん……」

「あっ、アリス、お前、俺を訝しむような目で見やがって……いいか? 俺は、親睦会的な意味を込めて、夏美を誘ったんだ」

「親睦会?」

「一年間、クラスをまとめる委員長と副委員長が仲悪かったりしたら、クラスメイトのお前らも嫌だろ?」

 一理はある。

「だから、俺は、夏美を誘ったってわけ! 証明完了!」

 亮太は、えっへんと言わんばかりにドヤ顔をする。

「あ、亮太君、こないだ亮太君に借りた本、返すね」

 夏美は、ポーチの中から、文庫本を取り出す。

「はい。面白かったよ。このミステリー」

 あの本は、夏美がこの前の朝、読んでた本だった。

「亮太って、ミステリー好きなんだ?」

「まぁな。だから、今回の謎解きラリーも自信あるぜ」

 ふ~ん。亮太がミステリー好きとは……人を見た目で判断するなとはよく言ったものね。

「あ、見てアリス。そろそろ始まるみたいよ」

 マジシャンのような恰好をした人が、マイクを持って出てきた。

「お集りの皆さま、今日はようこそおいでくださいました。まもなく謎解きラリーが始まりますが、お手元に、この、解答用紙はお持ちでしょうか? こちらがないと、謎解きラリーには参加できません。お持ちでない方は、こちらまでお越しください。繰り返します……」

「聞こえたか? 解答用紙だってよ。持ってるか?」

 私たち三人は首を振る。

「俺も持ってねぇ。取ってきてやるよ」

 二分後、亮太は、少し挙動不審な様子で、戻ってきた。

「……これ、はい」

「ありがとう」

 亮太は、まず夏美に渡すと、残った解答用紙を私と真衣に渡した。

「無くすと不味いらしいから、ちゃんと鞄とかにしまって……」

 亮太の声を遮るように、キィイインと、マイクがハウリングする音が響いた。

「うっ……」

 私たちは思わず耳を塞ぐ。

「申し訳ありません! ただいまより、謎解きラリーを開始いたします! まずは、こちら、正面のボードに掲載された問題から、順番にスタートです!」

 合図とともに、ワァッっと、人がボードへと詰めかける。

 え、なんで皆こんなに必死なの?

「よっしゃ、夏美、俺らも行こうぜ」

「うん。頑張って一位とろうね」

 亮太と夏美も、走って行ってしまう。

「ねぇ、真衣。なんでみんなこんなに必死なの?」

「え? 知らないのアリス」

「何がよ」

「一番最初に全問正解した人には、商品券5万円分が貰えるのよ」

「ご……」

 こんなことなら、お兄ちゃんを引っ張ってでも連れてくるべきだったか……・。

「私たちも頑張らないとね?」

「当然! 一位狙っていくわよ!」

「それで、さっきのドレスを買うのね?」

「それはないわ」

「それは残念」

 まぁ、実際五万あったら何を買うのかしら……。

 そんなことをぼんやり考えていると、床に落ちている。紙に視線が向いた。

「あ、危ない危ない」

 解答用紙を無くすところだったわ。

 私はその紙を鞄にしまった。

 よーし、絶対一位とるわよ!



 「問題です」

 私は、本から一切目を背けようとしないお兄ちゃんに言う。

「ひらがなの『く』と書かれた表札があります。この人の苗字は何て苗字でしょう」

 お兄ちゃんは間髪入れず、

「きのした」

「……正解。じゃあ次! 卵に二つ穴をあけると、何になる?」

「うさぎ」

「……正解……」

 ショッピングモールに帰ってから、謎解きラリーで出た問題をお兄ちゃんにぶつけてるんだけど、さっきからお兄ちゃんは秒で解いていく。

「やっぱり紐で縛ってでも、連れていくべきだった……」

 結局、私と真衣は、なんとか全問正解は出来たんだけど、順位は全然だった。亮太と夏美はどうだったんだろう? 結局、モール内を歩き回って疲れた私たちは、その後すぐに帰っちゃったからなぁ。

「うーん後、他にどんな問題があったかなぁ……」

 私は、鞄の中から解答用紙を取り出す……ってアレ?

「あれ、解答用紙が二つ……」

 私は、知らぬ間に鞄に入っていた紙を開いてみる。

「……なにこれ」

 そこには、二行に分かれた数字の羅列。そして、ヒントは鏡。とだけ書かれていた。(挿絵参照)

挿絵(By みてみん)

「お兄ちゃん……これ、なんだかわかる?」

 私は、お兄ちゃんに謎の紙を見せる。

「……」

 お兄ちゃんは、目をギョロギョロ動かす。

 そして、指で何かを数えだした。

「これは……アリス、お前この紙だけしかないのか?」

「え? どういうこと?」

「この紙には、対になる……そう、この紙を使って解く、もう一つの紙があるはずだ」

「え? そんな事言っても、鞄にあるのはそれだけだし……それに、これ、一体どこで拾ったか……あっ」

 そう言えば、謎解きラリーが始まる直前に、解答用紙を落としたと思って、拾った紙……もしかしてあの時の紙が……。

「お兄ちゃん、この紙、どういう意味なの?」

「……完全に正しいと分かるまでは、口にしない」

「めんどくさいから、とかじゃないよね」

「それもあるが……この紙に書かれているものはこの紙だけでは機能しないんだ」

「どういうことよ」

「そういうこと」

 お兄ちゃんはそれっきり何も話してくれなかった。

 お兄ちゃんのドケチ!

二日おきの更新で許してください

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