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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと拾った暗号
6/41

その2

翌日、私は、いつもより40分も早く学校に向かった。

 なんで朝っぱらから、わざわざ早起きして、学校で清掃なんて! 

 と、思ってたんだけど、早朝、人の気配のしない学校って言うのは、結構新鮮で、なんだか気持ちいい。

 鞄を置きに行くために、クラスへと向かう。

 きっとクラスにも誰もいない……いや、同じ美化委員の彼がいるかもな。

 そんなことを思いながら、クラスに入ると、

「……あれ? 夏美? おはよう」

 予想外の人物がいた。

「え? あぁ、アリスちゃん。お、おはよう」

「うん、おはよう。あれ? 美化委員の活動って、委員長もやらなきゃいけないんだっけ?」

「う、ううん……別にそういう訳でもないけど……」

 夏美は苦笑いを浮かべている。

「あ、そうそう! 今日は、朝から本でも読もうと思って」

 夏美は、鞄から文庫本を取り出す。

「え? でもこんな朝早くからわざわざ学校で……」

「えっと……うん、その通りなんだけど……」

 夏美はしゅんとしてしまった。

 え、なにこの罪悪感。

「あ、アリスちゃん! ほら、そろそろ清掃活動の時間じゃない?」

「ウソっ」

 時計を見ると、集合時間の二分前だった。

「あっ、やばっ……早くいかないと!」

 私は急いで教室から走り出した。

 

 美化委員の朝清掃は、全学年の美化委員が、二週間に一度、校内で特に汚い場所とか、あんまり掃除しない場所を、わざわざ早起きして掃除する……なんか罰ゲームみたいね。

 私だって、年に一回しか活動しないって噂の出版委員会とやらが良かったのだけど、じゃんけんに負け続けた私は、一番はずれとされる、、美化委員になったのよ。

 下駄箱に戻ると、一つの大きな背中が見えた。

「あ、おはよう椎名君」

 私は、自分と30センチ以上離れた椎名君に話しかけた。

「あ、小山内さん。おはよう」

 椎名君は、小さくしゃがみ込んでから、私に返事をしてくれた。

 彼は椎名太平君。同じクラスメイトで、同じ美化委員。

 性格は、温厚な感じで、喧嘩とかしたことなさそうだなぁって勝手に思ってる。

 あと、あの糞生意気な副委員長の亮太と凄く仲がいい。中学からの友達らしい。二人が並んでも、同級生っだって普通は分からないだろうけどね。

 さっきから散々言ってるけど、椎名君は背が高い。本当に高い。

 前に聞いたときは、185cmだって言ってた。ちなみに私の身長は142cmよ。なによ、泣いてないわよ。

「今日って、どこを掃除するんだっけ?」

「今日は駐輪場の落ち葉掃きだよ」

 椎名君が、私にわら帚を手渡す。


 あんなにあった桜の花びらも、すっかり無くなってしまって、緑の葉が広がっている。

 一か月って、長いようであっという間よね。ついこの間まで中学校の制服を来ていたはずなのにな。

 日々をのんびり過ごしてたら、いつの間にか一年、二年と経ってしまいそうだわ。

 私はビニール袋に大量の落ち葉を詰め込み、同じ作業をしていた椎名君に話しかける。

「椎名君、こっちは大体終わったけど、そっちも終わった?」

「あぁ、大体終わったよ。ゴミ捨て行ってこようか?」

「うーん、まだ行かなくてよくない? 終わったふりして、ギリギリに行こうよ」

 どうせ早く終わらしたって、他のところの手伝いをさせられるのがオチだ。

「それもそうか」

「……」

「……」

 うっ、なんか気まずい……なんか話題……

「あ、あの、椎名君って、子供の時から、そんなに背大きかったの?」

「あぁ、小学校を卒業するときには、170は超えてたかなぁ」

 小学校で170……巨人みたいね。

「何食べたらそんなに大きくなるのかしらね」

「特に気を付けてたわけじゃないけど……牛乳は結構飲んでたよ」

「牛乳ね……」

 私は、牛乳が嫌いだ。なんだかよく分からない味がして、子供の時から飲めないでいる。

「小山内さんは、背を伸ばしたいの?」

「あったり前でしょう! 私はこのちんちんくりんな自分の体がコンプレックスなんだから」

「そ、そうなんだ、コンプレックスなんだ……」

「そうよ。私も真衣とか夏美みたいに、スタイル良かったら、こんな悩みすぐに解消するのに」

「でもほら、女の子は、大きすぎるよりは、小さい方が……」

 椎名君……慰めのつもりだろうけど……

「それは、慰めのつもりなんだろうけど、身長の大きい椎名君に言われても、なんだか悲しくなるだけよ」

「い、いや、俺は、割と本心を……」

 私が一つ溜息をつくと、聞いたことがある声が聞こえてきた。

「太平! おはよう!」

 声をかけてきたのは、亮太だった。

「亮太、おはよう」

「朝から掃除とは、大変だなぁ」

 楽しそうに語らいあう二人は、年の離れた兄弟、もしかしたら親子に見える。

「ねぇ、亮太」

「なんだいチビ」

「は?」

「チビにチビって言って何が悪いんだ」

「あんたも十分チビでしょうが!」

「俺の方が背がでかい!」

「たった数センチでしょ! だいたい、この学校で一番背が低い男子はあんたでしょ!」

「お前は、この学校で一番チビだ!」

「あんたが二番目だけどね!」

 うぅ~、亮太のやつ、毎回毎回こうやって絡んでくるのよね。

「……まぁ、こんなくだらない言い争いは無駄だな」

 あんたから吹っ掛けてきたんでしょ!

「俺はもう、諦めたんだ。この身長は。いや、諦めたくないけど、受け入れるしかないんだ」

 亮太は、拳をぎゅっと握る。

「男は見た目じゃなくて度胸! 覚悟があれば生きていける!」

 亮太は大声でそう言うと、高笑いをしながら、昇降口へと歩いて行った

「あいつ、毒キノコでも食べたのかな」

「さぁ……」 

 私と椎名君は、呆然としながら、その様子を眺めるしかできなかった。      

 

 

 お昼休み、いつものようにクラスで真衣とお弁当を食べていると、

「あ、アリス、明日って暇してる?」

「うん。どこか行く?」

「ちょうどいいチラシを朝貰ってね」

 真衣が取り出したチラシには、最近オープンした、大型ショッピングモールの名前が書かれている。

「オープン記念で、無料で参加できる、謎解きラリーっていうイベントが開催されるらしいのよ。それに行ってみない?」

 チラシによると、謎解きラリーは、順番に問題を解きながら、いかに早く全問正解できるかを争うらしい。

「謎解きラリー……私たち二人でクリア出来るかな?」

「ふふっ、私たちには強力な味方がいるじゃない」

 味方?

「アリスのお兄様よ。お兄様がいれば、あっという間にクリアできると思うわ」

「そのお兄様呼び、ちょっと恥ずかしい……って、ちょっと待って」

「何よ」

「まさか、明日、お兄ちゃんもあわせて、三人で出かけるつもり?」

「うん。手品部の親交を深めるためにも」

「あー……お兄ちゃんと一緒に買い物とかはちょっと……」

 この年になって、一緒に買い物はちょっと……ね? 兄妹もちの人ならわかるでしょ?  

「えぇ? アリスって、お兄様と仲悪い訳じゃないでしょ?」 

「そうだけど……なんか気恥ずかしいというか……あ、それにお兄ちゃんを誘っても、絶対本読むのに忙しいとかなんとか言って、着いてこないよ」

 お兄ちゃんが休日出掛ける先は、本屋しかない。

「そうかしら? お兄様も、両手に可愛い女の子を連れて歩けるなら、その気になるんじゃない?」

「お兄ちゃん……恋愛感情とかあるのかな……」

 浮いた話を一つも聞いたことがない。

 っていうかお兄ちゃんって友達とかいるのかな……。

 なんか急に不安になってきた。

「アリスは、謎解きとかって得意なの?」

「え? えーと、そうね……私もお兄ちゃんの推理小説とかは結構借りて読んだりするけど、そう言うのが得意かと言われると……真衣は?」

「私はからっきしよ。ミステリー自体は私も結構好きなんだけどね」

 真衣が苦笑してると、

「何の話してるの?」

 夏美が、話しかけてきた。

「夏美、これ、こないだオープンしたショッピングモールでやるイベントなんだけど」

 私は、チラシを夏美に渡す。

「……やっぱり、このイベントのことだったんだ」

「委員長? どうかしたの?」

「あぁ、これは亮太君が……って、これは秘密だった」

 夏美の顔には、しまった! と大きく書かれている。

「えっと、気にしないで~。二人とも、これに参加する予定なの?」

「一応ね。あ、夏美ってこういうの得意?」

 夏美はなんでもそつなくこなすイメージだ。

「う~ん、こういうの好きだけど、得意かと言われると……」

「委員長、もし暇なら、明日、私たちと一緒にこれ参加しない?」

 真衣が提案する。

「ごめんなさい、明日は先約があるのよ」

「そうなの? 残念ね。委員長がいれば、お兄様が来なくても、一番乗りでクリアできると思ったのにな……」

「お兄様?」

「それは気にしないで」

「う、うん。あ、兼崎さん、今日の部長会、ちゃんと出てね」

「え? あぁ、うん……」

「サボろうとしちゃだめよ?」

 そういう夏美の顔は笑っているけど、目が笑っていない。

「そろそろ、五限の準備しないと。移動教室だからね」

 夏美は、そう言うと、席に戻って行った。

「……なんでサボろうとしてたのバレたのかしら……」

 真衣は、手鏡で自分の顔とにらめっこをしている。

 普段の行いのせいだと、言ってあげた方がいいのかな……。

やっとメインキャラが全員出てきました(多分)

明日も更新予定です(多分)

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