その1
季節は六月。中間試験も終わって、学校内には穏やかな空気が流れている。
制服も夏服に変わって、気分は爽やかよ。
「っていう訳で、10月にある文化祭に向けて、うちのクラスで何するかを、この時間で決めたいと思います」
夏美は黒板に、文化祭の出し物、と書く。
「一応、事前のアンケートから、候補としては、お化け屋敷が一番多かったので、このままだと、お化け屋敷になる予定ですが、みなさんどうですか?」
夏美は、クラスに問いかける。
ざわざわと、話し声が始まる。
私も、後ろ席にいる真衣の方を向く。
「真衣は、どう思う?」
「私は、文化祭の時期は、ショーの準備があるから……って、アリス? あなたもでしょ?」
「そうだそうだ……そう言えば手品部だったわね」
部活的な事、今まで一度もやってない気がする……。
思い出される記憶は、一緒にお菓子食べたり、お茶飲んだり、宿題やったり……。
「……なぁお前ら! 一つ聞いてくれ」
亮太は、突然大声を出した。クラス中の視線が亮太に向く。
「まだ、俺たちは、一年生だから、文化祭はあと三回ある。でも、このクラスでやる文化祭は、一回しかないんだ。だから、俺はやるからには全力でやりたい」
亮太の奴……。
「だからその……とりあえず、みんなで協力してやりたいんだよ!」
若干の静寂の後、クラスの男子から
「そうだそうだ!」
「やってやろうぜ!」
と声が上がってきた。
なんで亮太が、こんなに頑張るのか知っていた私は、文化祭へのやる気がちょっと出てきた。
夏美の方を見ると、夏美は、優し気な瞳で亮太を見ていた。
「そういう訳で、野郎ども、お化け屋敷でもいいし、お化け屋敷以外でも、何か案はないか? 何でもいいぜ?」
亮太の言葉を皮切りに、どんどんと意見が出てくる。
「ガチで怖がらせるお化け屋敷にしようぜ!」
「ストーリー性があった方が良い!」
「お化け屋敷も良いけど、喫茶店なんでどうだ!」
「ウェイトレス希望!」
「メイド希望!」
「どっちの衣装も任せて下さいまし~!」
「男子欲望出し過ぎ~」
「タピオカジュースとかが良いなぁ」
「料理とかなら、任せてほしいなぁ」
思い思いの声が教室内に響き渡る。
「ねぇ、亮太君」
立ち上がって発言したのは、東北出身の七戸真由美だ。名字はしちのへって読むんだって。
「実は、私、二年生の先輩に聞いたんだけど、うちの学校、文化祭の出し物が被ったときって、上級生が優先なんだって」
「えっ、そんなルールがあるのか?」
「先輩に聞いたから、多分確実よ」
「マジか……夏美、文化祭の出し物の確定日っていつだっけ?」
「ちょうど一週間後だね」
「うーん、もし、被ったときのために、案を二つぐらい出さないとなぁ……」
三年生と一年生が被ったら、そりゃ三年生を優先するよね。
「あ~そしたら、とりあえず出し物の案を二個出すぞ!」
再びワイワイと盛り上がるクラス内。
結局、お化け屋敷と喫茶店の二つの案で行くことに決まった。
帰りのホームルームが終わって、帰る準備をしていると、真由美が話しかけてきた。
「アリス~ちょっといい?」
「どうしたの?」
「アリスってさ、お兄さんがいたよね、この学校に」
「うん。一個上にいるよ」
「やっぱり? 深夏が言ってたんだよね~名字が一緒だし、そうかなって思ったんだ~」
真由美は、ケラケラと笑いながら私の肩をバンバンと叩く。
真由美は相変わらずテンションが高い。
「それで、何の用なの?」
「あぁ、そうそう。本題があるのよ。ここじゃ何だから、ちょっと外でしたくてさ。この後大丈夫?」
「この後は……」
私は真衣の方を向く。
「私も今日、買い物あるから、部活は無しね」
真衣は、ニコッという。部活の有る無しは、真衣の機嫌でだいたい決まる。
「大丈夫みたい」
「やった~。じゃあ早速行こう? 行きたいお店があるのよ!」
真由美は、私の手を引いて歩き出す。
「ちょ、ちょっと、結局本題って何なのよ?」
私は引きずられながら(真由美の力はとても強い)叫ぶ。
「もしかしたら、アリスのお兄さん、彼女が出来るかもよ」
「……は?」
何を言ってるの……? この田舎娘は?
古戦場始まるので、更新が止まります




