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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと占い師
1/41

その1


 人生は、自分で決めるものだって偉い人はよく言うけれど、ある程度のレールは生まれ落ちたその瞬間に決まっていると、私は思っている。

 その最たるものが親だ。子供に親は選べないのだ。

 あ、別に、小難しい話をしたいわけではないの。

 ただ私は、自分の髪の毛と、瞳の色。そしてこの名前は、もうちょっとだけ、どうにかならなかったのかと、よく考えてしまう。

 似合っているよ。と言われてしまえば、それで終わりなんだけど、私が、

自分を好きになるにはまだ時間がかかりそう。

 

 1 

 

「くっ」

 私は、一度目のジャンプで、下駄箱の扉を開き、

「ふっ」

 二度目のジャンプで、踵を踏んづけていない上履きを下駄箱から取り出す。

 私はローファーから上履きに履き替え、ローファーを手に持つ。

「よっ」

 私は、下駄箱にローファーを投げ入れ、一息ついた。

 朝から下駄箱のでぴょんぴょん飛び跳ねるのも私ぐらいだろうな……(しかも足元のすのこが結構うるさい) 

 今度、先生に言って下駄箱の位置、変えてもらおうかな。

 そんな、全校生徒できっと私だけが考えている……いや、うちのクラスにはもう一人同じことを考えている奴がいたわね。 

 ゴーンゴーンと、予鈴が響いた。

「やばっ」

 私は、小走りで階段へと向かう。

 一年生の教室は、五階建ての校舎の五階。しかも私の所属する8組は一番端っこの最悪なポジショニングだ。

 私は、だらだらと階段を登る上級生たちをかき分け、階段を駆け上がる。

 階段を一気に五階もあがるのって正直しんどいと思わない? 夏場はこれだけで汗をかきそうよ。今から不安だわ。

 なんとか五階に上がっても、教室は一番端にある。ラストスパートだ。

 とうに予鈴は鳴り終わっている。

 まだ四月中なのに、遅刻は嫌だ……お願い先生、まだ居ないでください!

 ガララッと勢いよく、ドアを開けた。

 教室内では、クラスメイト達が談笑していた。

 ホッと一息して、私は、窓際の席へと向かう(思ったけど、さっきから端ばっかり目指してる気がする)。

「おはよう、今日はギリギリだね?」

「先生、来てなくて良かったね」

 二人のクラスメイトから、声を掛けられる。

「ちょっと遅刻したのと……相変わらず下駄箱が……」

 私がそう言うと、

「ぷふっ、ちっちゃいからね。アリスは」

「アリスちゃん、やっぱり先生に話した方が良いんじゃないの?」

 対照的な二人の反応。でも一致してるところが一つある。

「二人とも……子ども扱いは禁止!」

 私の叫び声が教室に響いた。



 自己紹介をしましょう。

 私の名前は小山内アリス。おさないありすよ。本名よ。

 幼いアリスではないわ。絶対に間違えないで。

 髪の毛の色は細い金髪。目の色は黒よりの青。

 父親がイギリス人で、母親は日本人のハーフなの。

 あと身体的な特徴としては、悲しいことに身長が142センチ。未だに小 学生に間違われるわ。体重とスリーサイズは秘密。

 好きな物は醤油ラーメンとわらび餅で、嫌いなものは牛乳と納豆。

 性格は正直者ってよく言われる。褒めてるのか馬鹿にしてるのかよく分からないわね。

 私が通っているこの学校は、県立M高等学校。どこにでもある普通の高校よ(偏差値も普通)。

 えっと、あとなにか書かなきゃいけないことあったかな……。あぁ、私には一つ上のお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんもこのM高等学校に通ってるわ。

 ……うん、私の自己紹介はこんなものよ。

 他の登場人物は追って紹介するわ。




 朝のHRが終わって、机の上に突っ伏していた私の背中を、誰かが指で突いた。

「いたっ、誰よぉ」

 反射的に後を振り向く。

「アリス? 朝から元気ないのね? ご飯抜いてきた?」

 真衣のセミロングの髪が小さく揺れる。

「幼いアリスちゃんは毎日牛乳飲まないと、大きくなれませんよ?」

 真衣は悪戯っぽく微笑んだ。

「私の名前は小山内アリスね! イントネーションが違うから! あと、牛乳は嫌いだって、前にも言ったでしょ」

「だからこんなにちんまいのね」

「うるさい。今日は朝から走って疲れてるんだから、ほっといてよ」

「アリスで遊びたいの」

 真衣は屈託のない笑みでそう言った。

「ねぇ、あんたって今まで友達少なかったでしょ」

 私は、自分なりに精いっぱい皮肉を込めて言う。

「すごーい。名探偵なのねアリスは」

 真衣はわざとらしく拍手をする。

「そういうところが、アレなのよ真衣は……」

「こんな私と仲良くしてくれるアリスが好きよ」

「はいはい」

 この、兼崎真衣という女は、出席番号的に、私の真後ろの席に存在するクラスメイトで、高校生活最初の友人(ちょっと後悔したりするけど)。

 性格は、皮肉屋というか、一癖ある奴で、想像した受け答えをあんまりしてこない奴と言うべきかしら。

 あぁ、なんというか飄々としてるのよ。そう。言葉で性格を表せないところが、正に真衣という女なの。

 そんな変な奴だけど、なんでか馬が合うのよね。気を使わないで良いというか、なんていうか。

「でもまぁ、毎日端の教室まで来るのは、正直面倒よね」

 真衣は、苦笑いでそう言った。

「でしょう? しかも五階よ」

「アリスは歩幅が小さいから、階段上がるのも一苦労ね」

「一言余計なのあんたは」

 あぁ、書き忘れたけど、この兼崎麻衣とかいう女は背が高い。

 いや、私からすれば、自分以外の生徒は全員背が高いんだけど、真衣の身長は165を超えている。

 そしてなにより、スタイルが良いのよこの女は! きっとバストサイズはC……きっとそれ以上あるわ。

 あまつさえこの女の顔は可愛いんだから、天は二物を与えずっていうあの格言はきっと嘘ね。

「どうしたのアリス? 私の顔に見惚れてるの?」

 真衣は、小さくウィンクをする。今まで見たウィンクで一番きれいなウィンクだった。

「そういうことでいいわ」

「アリスの方が、可愛い顔してるよ」

「はいはい。ありがと」

「つれないなぁ~。あ、ところでアリス。部活は何部に入るか決めた?」

「部活……あぁ、そろそろ期限なんだっけ」

「そう。今週末……だから、今日入れてあと五日まで」

「真衣は、何部に入るつもりなの?」

「私は……考え中。アリスは?」

「私は……私も特に決めてないなぁ……」

「そうなんだ~……ふ~ん」

 真衣はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。

「良いこと聞いちゃった」

「良いことって……」

 私の言葉を遮るように、一時限目の開始を告げるチャイムが響く。

「あ、先生きた……」

 真衣は、後ろの席へと戻ってしまった。

 良いことって何なのかな……?

可能な限り毎日投稿します

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