表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

約1000字短編集

飲み会

作者: sika
掲載日:2017/12/21

 同僚の酒井が声を掛けてきたのは、退社時間が三十分程に迫ってきた頃だった。


「悪い三宅クン! メンバーが足りなくなった! また頼んでいいかなぁ?」

「別にいいけどよ、お前ホンット好きだよな。いつか体壊しても知らねえぞ」


「ははは、心配すんなって! 俺にとっちゃ酒はガソリンみてーなもんだからさ」


 んじゃ、後でな。そう言うと酒井は軽快な足取りでデスクに戻り、猛烈なスピードで仕事をこなし始めた。そのエネルギッシュな性格は少々鬱陶しい面もあるが、三宅成治にとってどこか羨ましくもあるのだった。


 多分に漏れず、今日も合コンだった。五対五で、相手は有名企業の社員。どこにそんなツテがあるのか三宅が尋ねても、酒井はいつも「ふっふっふ」と腕を組んで笑うだけだ。


「そういえばこの前、大丈夫だったのか?」

「へ? ああ、新見のこと? 何か骨折ったらしいけど、詳しくは知らん。酔っ払って足でも滑らせたんだろ」


「余所の会社の奴にまで声掛けてるもんな。そのバイタリティーをもっと仕事に活かせよ」

「へいへい。営業成績一位の三宅サマのお言葉、ありがたーく頂戴致しました」


 男性陣はこの日も、三宅と酒井以外は別の会社の人間だった。

 適当に名刺交換を済ませ、女性陣を待つ。どういう訳か酒井の選んだメンバーは、皆そこそこ顔が整い、話上手な者が揃っている。人数合わせに過ぎない三宅でも、気持ち良く酒を飲めることが多かった。


 女性陣が揃って到着すると、さっそく幹事の酒井がメニューの注文を始める。

集まった全員の顔を眺め、今日はハズレかもな、と三宅は思った。もっとも、当たりが続き過ぎても困ったことになるのだが。


「よぉ~し、今日はもう一軒行っちゃおう野崎くんの奢りで!」


 笑いが起こったその隅で、三宅はいそいそと帰り支度を始める。それを見ても、酒井は何も言わない。酔いが回っているのもあるし、そういう気遣いはできる奴だった。


 解散するとすぐに、女性が三宅の肩を軽く叩いた。一緒に飲んでいた女性だ――名前は確か園田と言ったか。


「一緒に帰りません? 送りますよ」


 園田はつまんだ車のキーをゆらゆらと振ってみせる。まさかの当たりだ。三宅は「悪いなぁ」と即答する。


「ちょっと三宅さんのこと、気になるし?」


 この馬鹿女は一体何を言っているのだろう。もう三宅に躊躇する心はなくなっていた。

 園田はふらつく足で、近くの駐車場に向かう。


 飲酒運転していた車に巻き込まれ、三宅は家族を失くしていた。両親、そして妹、祖母。

こいつは殺してもいいよな? 問いかけるように三宅は暗い夜空を見上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ