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オーディル・オーダー ~俺は異世界で神に試練を与えられる~  作者: 薤露_蒿里
第一章:異世界でだって生きている。
2/5

第一話:姫様は魔性ロリでした。

 ――異世界時間4/1 PM:17:02:18――


 ステンドグラスから溢れる光は、まるで玉座の後ろから刺す後光のようだ。そのせいだろうか、少年は荘厳さを感じた。


 地面にまで至るその光は太陽の仄かな暖かさを孕んでいる。日本より少し暑い、おそらくこの世界はきっと春なのだ。そう思わせる、暖かで柔らかな日差しが様々な色を孕んで降り注いでくれる。


 温められた床から、心地のいい僅かな温もりを孕んだ風が天井へと登る。それが、心地よく癒しの空間を作り出す。王城であるにも関わらず、まるで協会のようであるとすら錯覚させられた。


「よくぞ、よくぞ召喚に答えてくれた。儂は国王、ガレス・エインズワースだ。勇者よ、願わくばその名を聞かせたまえ」


 勇者の召喚を成就させたのは、人の技ではなく神のそれである。だとすれば、それは、人の身である国王にとって尚も礼を欠くべきではない存在。故に、国王は最大限に礼を尽くしたのだ。


「はっ! 我が名は、苗木優伸と申します!」


 苗木優伸少年は、この事象に対しある種の憧憬を抱いていた。幾多の創作が、幾多の遊戯が異世界に転生した勇者の物語を語っている。だからこそ、ここであるのなら主人公になり得るそう思えばどこまでも深い憧憬を抱かずにはいられなかったのだ。


 故に、優伸はその瞳に光を灯し、飽くなき羨望に酔いしれた声で答えた。


「ナエギ殿、勇者である其方に望むはひとつ。魔王の討伐である」


 それは、優伸の望んだ通りの言葉だった。勇者となり、魔王を討伐せしめる。それこそ、優伸の望んだ異世界召喚である。故に、優伸は期待に胸を膨らませる。


「お父様、私を紹介してはくださらないのですか?」


 国王の玉座のとなり、小柄な少女は国王に問い、訪ねた。


「いま紹介するところだ、少し待ってくれるか?」


 国王は、その顔に満面の笑みを浮かべた。どうやら、少女は国王に溺愛されているようである。


 一度咳払いし、国王の国王たる威厳を取り戻して優伸に向き直ると改めて語りだす。


「紹介しよう、彼女はクリスティアナ・エインズワース。儂の娘でな、少々お転婆ではあるが、役に立つはずだ。これでも腕の良い魔術師故な……」


 国王は、少々親馬鹿のきらいがある。可愛い娘を、自慢するかのごとくその表情は自信に満ち溢れていた。


 その様子に少し頬を赤らめながらも一歩前に躍り出て、流麗な動作でスカートの端をつまみ軽く一礼をした。頭を下げる動作につられて、可愛らしく二つに結ばれた長い金糸ような髪がなびく。俗に言う、ツインテールという髪型である。


「ご紹介にあずかりました、第二王女クリスティアナでございます。どうぞ、よろしくね」


 弾むような、どこか歌うような語尾には蠱惑的な響きが含まれていて。それは、まるで男を惑わす毒牙の如く艶っぽく響いた。幼い見た目が故だろうか、それは危険な色気であった。


「失礼ですが、お幾つでしょうか?」


 王女の風貌は、十二~三歳といった非常に幼いものだった。背も低く、大きな瞳がより幼さを際立たせている。優伸はそんな少女を戦闘に駆り出すのは、道徳に反すると思い問いただそうとした。


「これでも私、オトナなんですよ。もう、十六です。……それから、そんな言い方いや。これから仲間になるんですから、私のことは気軽にティアナと呼び捨ててね?」


 愛も変わらずクリスティアナの語尾には歌うようなリズムが含まれている。並みの少女がそれを行ったとして、さほど感情を揺さぶられることはないだろう。だが、その度に動く髪が、瞳が、可愛らしさと色気を両立させて男の本能を苛烈に刺激する。それは、まさに黄金比であり、計算でやっていたとするなら稀代の悪女、そうでなくとも魅了の魔女である。


「分かりました、ティアナ」


 優伸が言うとクリスティアナはひどく拗ねたような顔をした。


 優伸は察した、慇懃な態度を取る限りクリスティアナは決して機嫌を直さないだろうと。とはいえ、ここは王城であり、彼女は王女である。


 念のため優伸は、国王に目配せをして確認を取ろうとした。すると、窮地に陥った優伸を察し、国王は代弁を始める。


「ティアナよ、王城にて王女に礼を尽くさぬわけには行かぬ。せめて、外までは今の態度で我慢してやってくれ」


 優伸はそれを聞いて、助かったとばかりに胸をなでおろした。


「分かりました、国・王・様! 堅物は放っておいて行きましょ? 勇者様」


 それでも尚も、クリスティアナ王女は気に食わないようだ。彼女はお転婆であり、少々わがままな面を持つ。とは言っても、可愛らしいものだ。それこそ、幼い少女が持つ特有のわがままに聞こえる程度である。


 拗ねた様子で、あえて父を国王と呼び、拗ねた顔に一瞬いたずらな笑顔を浮かべると、クリスティアナは優伸の手を引いて足早に扉に向かって歩いていく。


 優伸には、それが微笑ましいとすら思えて手を引かれるがまま成されるがまま歩いて行った。今は、このわがままに付き合おうと微かに微笑みながら。


 過ぎていく景色と、同じ速度の風。そのせいでなびくクリスティアナの髪が二人の隙間を埋めていた。

後々ものすごい名前の長いヒロインが出てきます。クリスティアナは序の口ですよ。

ピカソみたいな長さにしました。設定ではその子自身が自分のフルネーム覚えてないという設定で。

乞うご期待。

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