再生
幼い子供にとって、あの告白以来考える事は、死への決断だった。
死は両親に逢える唯一の方法と思っていたのだ。何も食べず、何も飲まず、ただ、"死”を待っていた。
日々痩せていく体に求めるものは、幸せな家庭、母親の温もり、父親の頼もしさだけだった。
あの家に、あの日々に帰りたい。そう思っていた。
ぼんやりと、窓を眺めていると、岸本が目の前に立っていた。
彼女は「来なさい」そう一言告げると、俺をベッドから起こし車椅子に乗せた。
今までの優しい笑顔とは真逆の冷たい視線だった。
屋上に連れて行かれると。何も言わず、目の前に広がる神秘的とも言える赤い夕焼けと壮大な空の景色を眺めていた。
一粒のしずくが、頬に落ちてきた。
後ろを振り返ると、岸本の目には涙が溢れていた。
「ごめんね・・・本当に嘘ついてて、でもあなたが死んだら、自分を犠牲にしてまで守ってくれた、お母さんはどうなるの?あなたに・・・死んで欲しいなんて・・・本当に思って無い・・・お願い分かって!!」
「生きるの!!」「大きくなって・・・立派な大人になって・・・その姿を・・・」
目の前の都会に広がる美しい夕焼けが、こんなにも滲んで見えた。
「ごめんなさい・・・僕、頑張るから」
「ありがとう・・・お姉さんもう泣かない」
「さぁお部屋に戻りましょ」