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文才無くても小説を書くスレ参加作品

背負うモノ

 文才無くても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:抱負


「アザラシで良くない?」

 冷えたポッキーを咥えながら彼女がそう言った。

「抱負だって言ってんだろ」

「だからよ」

 炬燵に両手を突っ込んで頭と口からのポッキーを付き出しながら

「シンプルで分かり易くて可愛いのがいいでしょ」と言った。

 そういえば蜜柑が置いてあった。

 手は自然と筆を半紙の横に置いてそれに伸びる。

 やや柔らかくなった蜜柑は酸味が抑えられて甘味が際立つ。

 無心で向いた蜜柑の一房を口に運ぼうとして、横からトドの様な動きのモノがそれを咥えて奪って行った。

 彼女である。

 せっかく可愛いというのに動きがもうトドである。

「トドみたいなのはどうかと思う」

「アザラシはトドとは違いますー」

「似たようなもんだろ」

「全然違うよ。鳴き声とか」

 そうですかっとため息をつきながら、俺は次の一房を指でつまむ。

 そしてまた奪われた。

「なにをするか」

「アザラシ」

「アザラシをしているのか」

「そうじゃなくて、抱負のをアザラシにしなよって」

 食べながらでないと提案ができないのかとか、手で持てよとか、指が濡れてるとか言いたいことはいろいろあったが

「文字通り抱えるものだぞ、アザラシを抱えろと?」という一言を優先した。

 だが、優先した事が正しかったかどうかは分からない。

「可愛いからイイよね?」という、首を傾げながらの理屈の見えない問いかけに頭を抱え、ただ

「可愛くなければ追い出しているところだ」と答えるのが精一杯だった。

 三回目にしてようやく蜜柑を口に出来て、しばし静かな時間を堪能していると、またトド――いや、アザラシが動いた。

 腕を仕舞った頭ばかりの姿で炬燵布団を持ち上げないようにズリズリと、どういう体勢だか炬燵の足も通り抜けて横に来ると

「うりゃ」とのたまわって右肩に頭突きを仕掛けてきた。

「なにをするか」

「アザラシ」

「アザラシをしてみたのか?」

「それもあるけど、さっさと抱負のにアザラシって書きなって」

「抱えろと仰るか」

「抱えろと申す」

 こういう意味の分からない会話で、とりとめのないままに時間が過ぎるのも好きではある。

 あるが、こうしている最中にもうりゃうりゃと頭が擦り付けられるのはさすがに困る。

「書けない」

「なんでだよ」

「意味が分からん」

「おバカさんだ、このおバカさん」

「お馬鹿さんで悪かったな」と、うりゃうりゃと追撃を繰り返す頭を腕で跳ね除けた。

 あまり表情が変わらないその顔の、瞳が僅かに見開かれる。

「うりゃ」

 一度だけで終わる、その軽いもたれ掛りは止めなかった。

 ただその遠慮がちな接触が、接触後の沈黙が、彼女の気持ちを伝えてくるようで居た堪れなく感じられた。

「抱負の負が、背負うモノって意味だからって……」

 沈黙を続けていられなくて、適当に口を動かし「負けるって文字は縁起が悪いから別の文字を考えようっていう前提でだな」

 誤魔化すように彼女の頭をグリグリと押さえつけながら言った。

「なんで、“負う”の代わりにアザラシが入ってくるんだよ!」

 彼女は俺の激しいツッコミも意に介さない様子で言った。

「アザラシの鳴き声が“オゥ”だから」

 ほのぼのだと思ったか。


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362 自分 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 投稿日:2017/01/01(日) 13:54:49.99 ID:

新年あけましてお題下さいおめでとうございます


363 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 投稿日:2017/01/01(日) 15:18:32.13 ID:

抱負


364 自分 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 投稿日:2017/01/01(日) 20:24:24.69 ID:

把握

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