パロット・フィッシュ・ハリケーン
「前から思ってたんだけどさ……」
雲が空を覆いなんとなく憂鬱とさせるそんな午後の今日、文章を書くのに悪戦苦闘していると後ろから声がする。もうこいつがいる生活にもすっかり慣れた、今じゃ後ろから注意や訂正が入ったりしてもまたかよくらいにしか思わない。
「少女たちは少年の夢を見るかってタイトル寒いわよ?どこむけなの?」
いったいぜんたいどうしてこうドストレートに人の頬をぶん殴ってくるんだろう。お前には人の心がないのかと問いたい。
「どうせ電気羊なんてよんだことないんでしょ」
ストライク!!
「ひねったように見せてただのぱくりだし、しかも原作を絡めたオチとかネタがないじゃない」
ストライクツー!!
「加えると、ラブコメとかローファンタジー好きな層は率先して古典SFなんて絶対読まないわよ」
ストライクスリー!!バッターアウト!
「じゃあお前ならどうするんだよ」
負けてたまるかとばかりに即切り返していく。こんなことでへこたれていたらこいつとの毎日はやってられない。
「そうね、潔く文章系タイトルにするわ。何年か前に流行ってからそれはもうどじょう1000匹釣る気なのかってくらい横行したけどわかりやすいし。基本的にライトなもの読みたい層って自分が読みたいものがタイトルでわかったほうが助かるのよ、書店でも目に入ってすぐ手に取りやすいし」
それっぽいことを今日もつらつら並べていく。よくもまあ屁理屈が次から次へと出てくるもんだと感心したいくらいだ。けど……
「お前それじゃ返事になってないだろ、お前ならどうつけるかを聞いてるんだよ」
そう言うと、勝ち誇った目でこちらをにやにやと見てくる。
「仮にも作家志望なのに人にタイトル付けさせるー?」
ぐっ・・・
「自分が書いた作品なんて自分が生み出したものなの、他でもないあなたが生み出したもの。だから最終的にどうなるかはわからないけどそれでも第一稿は自分でつけてあげるべきよ」
「今のままじゃダメか?」
「別にいいと思うわ、私が編集なら即効没にするけど。デビューするくらいよく書けててもタイトルだけは100%なおす」
子供みたいに無邪気な顔で笑いながら邪悪なフレーズを次々に並べていく。でもまぁ仕方ないか、こいつのおかげで感想がついたのは事実なんだし。
今の自分って編集ともめてる作家っぽいかもなんてちょっと恥ずかしいことを考えながらおれはまた筆を進めていくのであった。
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