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決定

遅くなって申し訳ないです。次回の投稿も1週間には行えると思います。

2202年 9月2日 (木) GMT21:50

地球 国連本部 第3会議室

スチュアート大統領


「それでは会議を再開します。まず、先ほどの市民への情報開示による現状を内務大臣より報告してもらいます」


目配せをすると内務大臣が立ち上がり報告を始める。


「情報開示より4時間余りが経過しましたが、現在のところ目立った騒ぎは起きていません。マスコミの過剰報道も記者会見での情報待ちと見られ起きていません。この歴史的事件としてはかなり落ち着いていると考えます」


「各業界や市民からの声は?」


北米代表のフランクリンが聞く。


「特に目立った動きはありません。一部ではこの要求に対しての抗議集会なども起こっていますが矛先を向ける相手が宇宙の彼方にあるので小規模で止まっています」


内務大臣が答える。それを聞いてフランクリンが考えを述べる。


「問題はその矛先が内側に向いてしまうことだがな。不安に狩られた民衆というのは存在がはっきりする人や団体に矛先を向けがちになる。そこも含めての声明を考えんといかん」


これは私も同意見だ。人間は本能的に見えない恐怖というものに弱い。そして恐怖に狩られた人間は我を忘れて暴れ出す。それを防ぐためにも適切な情報開示や政府としての意思表示が必要となる。


「問題はその声明です。安全保障大臣、先ほどの会議から何か進展は?」


今度は安全保障大臣が電子端末を持ち立ち上がり、説明を始める。


「はい、外惑星艦隊の調査によりますとクライスラル帝国は超光速航行技術を保有していない可能性が極めて高いとの事です。我々との技術格差はそれ程無いと見て良いでしょう」


「なんだって⁉︎」


会議室にどよめきが走る。ざわざわと騒ぎ立てる中、荻原が手を挙げ質問をする。


「その根拠はあるのか?ただの憶測では話にならんぞ」


荻原からの突っ込みを受けた安全保障大臣は会議室中央にホログラムを映しながらこれに答える。


「はい。外惑星艦隊に所属している探査船5隻による三次元電波観測、赤外線探査、可視光調査等を行ったところ、敵……失礼、クライスラル帝国の艦艇に使用されている武器並びに機関は地球のものと原理は一緒と思われる特徴が幾つも見られました。念のため後方の巨大宇宙船も調査いたしましたが結果は同じでした。即ち我々と同じ数理、物理学の上に成り立ってるものと思われます。なのでその分ですとこちらの保有兵器でも十分対抗ができると思われます」


ふむ、と全員が考え込む。我々との技術格差が殆ど無いのなら話は別だ。


「ならば話は簡単。拒否するまでのことだろう」


「それでは此方が戦争を望んでいるようにとられるのでは?」


「確かにその可能性もあるが、元をたどれば奴らの無茶な要求が原因だ」


侃々諤々の会議が続く。4時間の激論の末、最終的な声明が決定した。それは以下の通りである。


「『貴国の要求は不当かつ横暴なものであり決して認めることのできないものだ。もし要求を退けないのなら我々は断固としてこれに対抗する意思がある。なお退去する場合は必要資源、物資を常識的な範囲内で供給、支援する用意はある。貴国の賢明なる判断を期待する』ではこれが地球側の総意ということになります」


会議室を見回す。納得してウンウンと頷くものや若干内容に不服があるのか曇った顔をしているものもいる。


「クライスラル帝国の最終通告期限まで残すところ10時間程度となりました。人類史上初めての星間戦争になる可能性もあります。しかし何としてもこの難局を乗り切るという断固たる意志を持ちましょう。戦争は避けなければなりません。そしてその為の努力を惜しんでもいけません。しかし、戦争を避けるあまり過度な要求や侵略を受けることは決して許されない。それを理解し、交渉に入ることで初めて対等な平和というものを築けると思います。考え方は人それぞれ。ですが最後に、どのようにあれど地球を、民衆を守る気持ちは忘れてはいけません。それを忘れた時、私たちは人類の守護者からただの殺戮者へと変わってしまうのです」


最後の締めの言葉を述べる。全員が起立して拍手が沸き起こる。






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