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報告

2202年 8月24日 (火)

国連本部 緊急指揮センター

スチュアート大統領



「状況を報告したまえ」


指揮センターに入ってまず発した言葉はそれだった。その言葉を受けて情報端末を持った補佐官が説明を始める。


「はい、連邦宇宙局(FSA)からの報告によりますと太陽系外周付近に集結していた未確認飛行物体(UFO)は移動を開始、内惑星系に向け進路をとっているとのことです」


「通信は成功したのか?」


「いえ、なんら応答がありません」


補佐官が残念そうに答える。まあ、ある程度は予想できていたことだ。


「そうか…。各州行政府に通達、緊急安全保障会議を開催する」


「了解です」


どうしたものか……。


テーブルにあった熱いコーヒーを飲み一息つく。彼らは果たして人類の敵なのか、それとも友好的な相手なのか。太陽系に来る目的は?資源、土地、文化…はたまた星間戦争にでも巻き込まれたのか。それともまだ人類が知り得ない何かがある…。とにかく現状では情報が少なすぎる。


「エドワード大将。外惑星艦隊は出したのかね?」


指揮センターの傍で何やら連絡を取っていたエドワード大将はすぐに答える。どうやら既に色々と動いているらしい。


「はい。既に警戒に当たっていた102巡航戦隊と101駆逐隊が対処に当たっています。また、主力艦隊も既に出航、現在は土星宙域を航行中です。問題がなければ、15日後には接触できる見込みです」


太陽系外惑星艦隊。それは国際連邦宇宙軍に属する太陽系内に侵入する外敵等の排除を目的として結成された多州籍艦隊である。東アジア、北米、ヨーロッパ艦隊が中心で、航続距離が比較的長い巡洋戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦などで構成されており、総勢70隻を誇る。またその他にもレーダー等の探査機器を多数備えた探査船団も含まれており索敵能力もかなり高い。エウロパ、タイタンに主力基地を置いておりここで各種整備を行ったのち発進する手筈となっている。


「わかった。それと、連邦各軍の配置情報も欲しい」


「はい。少々お待ちを」


指揮センター前面のスクリーンに地球を中心とする太陽系外周までの宙域が映し出される。土星宙域にあり、すでに移動を開始している青い点が外惑星艦隊だろう。その他にも火星宙域や静止衛星、月軌道上に幾つかの光点がある。


「現在火星では内惑星艦隊の集結も始まっております。こちらは整備点検のためドック入りしている艦は除外されますが、6割の戦力が48時間以内に集結する見込みです。また、月基地では航空団の発進準備がされており、こちらは後12時間で全部隊が即応体制へと移行できます。その他にも、静止衛星軌道、月軌道上の戦闘衛星、リニアキャノン並びに各種ミサイルも起動シークエンスに入っております。地上においても陸海空軍全ての部隊が第一級戦闘配備についています」


現在、国際連邦軍は2つの艦隊と3種の対地球外武装を持っている。艦隊は外惑星艦隊と内惑星艦隊に分かれており、外惑星艦隊は先ほど説明した通りである。もう一つの内惑星艦隊は航続距離は多少短いが高火力、重装甲の戦艦、高速高機動の駆逐艦の他、外惑星艦隊と同程度の巡洋艦が配備されており、総合的な戦力では外惑星艦隊を圧倒している。


防衛兵器の一つ目は月基地に配備されているSA-19ワイルドタイガー。無人攻撃機で対艦ミサイル「プロミネンス1B」及び短距離レーザーSSL-12Bを装備している。このプロミネンスは巡航速度40Sノット。徐々に加速していき突入時には80Sノットにも達する。炸薬量は125Kg。ちなみにC型もあり、これは巡航速度を55Sノットまで上げ炸薬量を200Kgまで増やしたものであるがまだ実戦配備はされていない。短距離レーザーは主に近接防御用であり対装甲能力は低い。その代わり低電力でも作動し連射力、射程共に問題ないことから正式採用に至った。


2つ目が月軌道上や静止衛星軌道上を回っている攻撃衛星だ。航空団とは違い光学兵器が主武装となる。月軌道上にはSLL-23Aが配備されている。これは超長距離レーザーを8本装備しており、目標表面で集束し一気に焼き尽くすレーザーである。また静止衛星軌道上には中距離レーザー装備のSML-15A並びに迎撃用レーザー装備のSML-15Dが配備されている。


3つ目に赤道直上の静止衛星軌道上に設置されているリニアキャノンだ。これは電磁投射砲の一種であり、発射される弾頭の炸薬は少ないが圧倒的な物理エネルギーで装甲を貫通、内部で起爆する。運用試験では50万km先の宇宙空間にある厚さ1500mmの特殊鋼板をやすやすと貫通している。(参考までに、現在地球艦艇での最高装甲圧はサウスダコタ級の最大310mmである。エネルギー兵器が主流となる宇宙空間において意表をつくことができると予想されている兵器でもある)

現在は4基が配備されており、どの方角でも最低3基は攻撃ができる様になっている。


「うむ。新しい情報が入り次第、随時知らせてくれ」


「はっ。では私は一足先に統合作戦本部へ戻ります」


「わかった。よろしく頼むぞ」


そう言うとエドワード大将は指揮センターの扉を開けて外へと出て行く。


「それと補佐官」


傍にて待機していた補佐官に声をかける。


「なんでしょう?」


「いざという時の為に避難計画の策定も進めてくれ。もしも戦闘が起こった場合、各惑星在住の研究者、職員を速やかに地球もしくは月へ避難させること。また、各コロニーに置いても避難計画を策定、提出するように。地球上においても、……最悪の場合地下都市や他星系への移民も考えねばならん」


本当に最悪の場合だが、もし未確認船団が敵であり、地球艦隊がこれを阻止できなかった場合にはどうなることか。人類の殲滅が目的であれば意図的に小惑星を落下させてくる可能性もある訳であり、そもそも地球を乗っ取るつもりならば太陽系からの脱出も考えねばならない。もちろん最大限の抵抗は行うが種の保存ということを考えると選択肢は一つでも多い方が良い。


「地下都市……ならば既存のシェルターを改築すれば1年あれば何とかなるとの試算が出ておりますが、移民となると…。超光速航行の技術が無い現状ですと世代交代宇宙船、もしくはコールドスリープを用いるしかないかと。…詳しくは技術本部に聞いた方が早いですね」


「はは、確かにそうだな」


「では私も統合作戦本部へ行ってます。大統領も早めに来てください」


「ああ」


そう言うと補佐官は指揮センターから出て行った。


(2202年か……。例の記録通りだが、やはり彼らは来た。そうなるとあの出来事も……。宇宙に進出して早241年、だがまだまだ謎が多い……。歴代大統領と国家元首の努力を無に返さないためにも、私たちの世代が頑張らねばならんな……)


私は机に置いてあったもうすっかり冷えてしまっているコーヒーを飲みほす。人類5000年の歴史。そして宇宙に進出して241年。人はまた新たなる試練を迎えようとしている。そしてなんとしてもこの歴史を絶やしてはならない。

そう誓うのであった。





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