閑話1
さて、今月二度目の更新です。前回から引き続き主要キャラクターは出てきませんが、次回からはまた普通の路線に戻る予定です。
次回は来月初めを予定しております。
22××年
ある科学者の音声記録
22××年8月、地球連邦所属。2202年勃発した太陽系戦争についての詳細を、私の知りうる範囲でここに残すことにする。これが後世の子孫に少しでも役立つことを願って…。
私は……ザザッ……と言う。戦争当時は………ザザッ……大学で教授として研究を行っていた。私の専門は宇宙生物学。もちろんクライスラル帝国の研究にも携わった。さて、私の事は置いておき、今回の音声記録のメインテーマであるクライスラル帝国について話そう。
クライスラル帝国はこの広い宇宙を漂流する超巨大移動国家であり……ザザッ……なのだ。1隻の超巨大母船を中心に多数の……ザーッ……艦や中型艦、小型艦で構成されている。その目的は地球並びに太陽系全体の征服であり、また……ザザッ……なのでもある。
彼らと人類が初接触したのは2202年、冥王星沖での事だ。そこで彼らは一方的な通告を行い、戦端を開いてきた。だが人類は初戦において辛くも勝利し撃退に成功する。そして、そこでの戦闘を分析した結果、クライスラル帝国に関わる驚くべき発見が幾つもあった。
まず、彼らが扱う技術は人類の持ちうるそれと大きな格差は無かった。使用された武器、兵器も、我々が解析できないものはほぼ無かった。そしてそれは……ザーッ……を除いて……ザザッ……であった。
しかし、人類が唯一解析できなかった……ザザッ……により、さらなる混乱を生むことにもなった。……ザーッ……については後ほど詳しく説明するとしよう。それと、これは知り合いの物理学者から聞いた話だが、彼らの使用する数理、物理、化学は我々のものとほぼ同じらしい。つまり、我々には理解できない魔法やら超能力やらは持ち合わせていないと考えられる。ならば十分に対抗可能ではないか、と考える者が多かった。
〜中略〜
また、彼らは人類と酷似していることも判明した。これは宣戦布告を行ってきたクライスラル人の映像を分析して得られた結果なのだが、骨格や皮膚、毛髪等、一見地球人となんら変わりはない。もっともそれは……ザザッ……なのだからであろう。
しかし、これ程まで酷似した生物が、この広い宇宙で同時期に進化し、それが出会うという可能性はどの位あるのだろうか。私は限りなくゼロに近いと考えている。
〜中略〜
そしてクライスラル人との初接触で一番驚いたことといえば言語である。なんと、我々が理解できる言葉で話しかけてきたのだ。彼らがヘリオポーズあたりで停止していた時に我々人類の電波を捉え、それを使って言葉を解析していたのかもしれないがそれは……ザザッ……。しかし彼らが話す言葉を我々の保有する翻訳機で訳せた事は事実に変わりない。私は言語について詳しくないのだが、ある言語学者によるとクライスラル語は……ザーッ……と……ザザッ……に似ているという。本当かどうかは定かでは無いが。
〜中略〜
クライスラル帝国の侵攻を阻止する方法は当時、いくつかあった。一つは彼らの母船ごと破壊する方法であった。これは最も確実な方法である反面、リスクも大きかった。彼らの戦力がどれほどあったのかは当時、誰にもわからなかった上、母船を破壊する方法も……ザーッ……だった。また、母船には民間人も多数生活していると見られ、人道的に問題があるという声もあった。
2つ目は、現代版の「兵糧攻め」を行う事だ。彼らの母船の大きさやその技術から推察するに、食料等は船内で生産できているとしても、鉱物、エネルギー資源は有限だと考えられていた。そのため冥王星軌道を防衛線として彼らに損害を与えつつ、太陽系内に侵入させないことにより彼らの資源的疲弊を誘い継戦能力を奪う戦略であった。
3つ目は……ザーッ……で、これは当時起こった……ザザッ……の影響で考案された。この無謀なる提案だったが……ザザッ……ザーッ……。
〜中略〜
最後に一つだけ言おう。どんな時も決して諦めるな。最後まで希望を持て。科学者である私……ザザッ……精神論を言う……ザザッ……だが、実際……ザーッ…………ザザッ……。
私たち人……ザザッ……最後……ザーッ……希望……ザザッ……そし……ザザッ……旅……ザザッ……………ザーッ………………頼……ザザッ……ザザッ……ザーッ……………。
このテープはここで途切れている。この失われた部分の内容は本人しか知り得ないだろう。そう、この先も永遠に…。