暗躍
今回は宇宙軍から少し離れます。
いつもより大分文字数が少ないですがご了承下さい。その分、今月中にもう一話投稿予定です。
2202年 10月
地球
そこは薄暗く息苦しい部屋だった。窓は無く調度品も簡素なものしかない。そんな中に男が3人、机を囲んで座っている。
「…K、『神』から連絡があったと聞いたが」
一人の男が尋ねる。Kと呼ばれた男はタバコに火をつけ一息つくと答える。
「ああ」
「それで『神』はなんと?」
今度は別の男が尋ねる。Kはまあ焦るなと言わんばかりに両手を広げまた一服する。
「今度また大きな戦いが起こるそうだ。即ち我々にとってのチャンスともなる」
「それは何時だ?」
「追って連絡する、と」
K以外の2人は顔を見合わせ頷く。
「よし分かった。俺からも報告がある」
「なんだ?」
「2区及び3区は8割がたは掌握できた。ここは脅威として見なくても大丈夫だろう。だが問題は…」
「一区か」
「ああ、元々同士も少ない上一区の奴らは海外出身が多いからな」
「無理か?」
Kが尋ねると男は残念そうに首を振る。
「正直に言うと無理だ」
「そうか。他の地域はどうだ?」
「南北アメリカと欧州、東南アジアは手が回ってない。有力なのは中東とアフリカ、それから中米だな。特に中米ではかなりの有力者にパイプを作れた」
「わかった。出来そうな所から崩していけ。あまり時間はないだろうからな」
「OKだ」
そう言うと一人の男が部屋を出て行く。そして残った2人はさらに話し込むようだ。
「奴らには感づかれてないだろうな」
Kがそう言うと今までほとんど黙っていた男が答える。
「問題ない。既に内部に何人かの協力者がいる。何かあれば直ぐに連絡が来る手筈だ」
「抜かりなく頼むぞ」
「ああ」
「例の部隊はどうなった?」
Kがそう言うと男は小型端末を取り出しKに何かを見せる。
「順調なようだな」
「既に訓練も終わっている。直ぐにでも戦力になるぞ」
「まあ待て、そいつは切り札の一つだ。無駄に動いて面が割れては元も子もない」
「投入はここぞ、という時にか」
「ああそうだ」
男は小型端末をしまいこみKに尋ねる。
「それよりもだ。具体的な行動計画は立てているのか?」
そう男が聞くとKは首を振る。
「まだだ、手持ちの戦力が把握しきれていない」
「なるほど。それについては次の会合までには纏まりそうだ。それからはよろしく頼むぞ」
「わかってる。全ては『神』と人類の為に」
Kが呟くと男もそれに返す。
「『神』と人類の為に」
用事は済んだのか、言い終わると同時に踵を返しもう一人の男も部屋から出て行く。一人残されたKは既に燃え尽きかけているタバコを揉み消しもう一本に火をつける。大きく吸い込み煙を吐く。そしておもむろに立ち上がると二人の男が出て行った扉とは反対側にある扉の中へと消えていった。