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対策

2202年 9月25日

地球 安全保障省 統合作戦本部

スチュアート大統領


第16回臨時安全保障会議


「エウロパ基地からの報告によりますと戦闘機隊の攻撃は成功、エンジン並びに小惑星の破壊に成功したとのことです」


安全保障大臣から報告を受ける。開戦から約3週間が経ったが今までで一番の喜ばしい報告だ。今までは地球を渡せと言われたり小惑星が急に衝突軌道に乗っただのろくな事がなかったのだ。


「破片の影響もないのだな?」


「はい。戦闘機隊の攻撃の後、念押しのミサイルも撃ち込み完全に粉砕したそうです」


「よし、良くやってくれた」


報告を終え大臣は着席する。開戦前からこの方幾度もなく開催されているこの会議。各州の代表が集まる本会議とは違い大統領の他は各省庁のトップ、そして参考人で構成される。本会議へ向け予備報告と各種質問がここで行われるのだ。


「次は内務大臣だったか?報告を頼む」


「わかりました」


安全保障大臣の隣に座っていた内務大臣が起立する。


「今回ご報告する案件は2つ。一つ目は地下都市の建設、避難計画、二つ目は現在各地で発生しているデモについてです。」


内務大臣はそこで一旦区切り後ろに控えている職員に何か指示をした。職員は壁際の制御パネルに行き操作をする。すると会議室のテーブルの中央にホログラムによって地球が映し出される。


「先の小惑星による攻撃を受けて内務省では早急に避難計画を立てるべきとの結論に達しました。今回は3発と少数のようでしたので大事にはなりませんでしたがこれが何十、何百となりますと地球にも被害が及ぶ可能性もあります」


「確かにそうだな。宇宙軍には早急に攻撃の元を断つようにと指示したがいかんせん先の海戦の被害が響いて反攻計画が進まんのだ」


そこで一呼吸おき机の上に用意されていた飲み物を飲む。大臣は飲み終わるのを見計らって話を続けてくる。


「まず第一段階として地球外にいる民間人を地球もしくは月へと避難させます。これは既に殆どが終わっているので問題はありません。次に第二段階としてコロニー住人の避難です」


「コロニーから?あれは地球のすぐ側だから優先度は低いと思うが?」


交通運輸大臣から質問が飛ぶ。避難となった場合に使用する船舶の調達などは交通運輸省管轄になるからだ。


「いえ、コロニーに一発でも小惑星が当たってしまうと大惨事です。現在最大のコロニーにはラグランジュポイント2にあるコロニーで人口85万人ですが、小惑星衝突などという大事故ですと生存者ほぼ無しの事故になる可能性が非常に高いです」


「うーむ…、それは確かに問題だ。至急避難計画をまとめて次の本会議で報告してくれ」


「はい。さらにこれからも小惑星攻撃が盛んになることも考えられますので都市部からの人口分散や地下への避難も場合によっては進めます。そのための地下都市建造もすでに始まっております」


「その地下都市ですが場所は決まっているのです?」


教育科学大臣が質問をする。地下都市建設は今の所政府主導で極秘裏に進められているので関係者以外は知らない。各大臣には概要のみ伝えてあるが詳しくは内務大臣と私しか知らないのだ。


「全人口を収容するためにはかなりの箇所が必要でしたが…選定はほぼ終わっています」


すると中央のホログラムが拡大されあちこちに赤く光る点が現れた。これが地下都市の場所を示しているのだろう。


「北米大陸ではアラスカ、ロッキー、アパラチア、シエラネバダ、西シエラネバダ、東シエラネバダの各山脈とメキシコ高原にそれぞれ数カ所。

南アメリカにはアンデス山脈、ギアナ高地、サンパウロ付近。

ヨーロッパはスカンディナビア、アルプス、ピレネー、グランピアン、カルパティア、ウラルの各山脈です。

西アジアはカフカス、トロス、エルブールズ、テンシャン、カラコルムの各山脈とパミール、デカンの各高原。

東アジアはクンルン、ヒマラヤ、アルタイ、日本アルプス、ナンリン、アラカン、カムチャツカ、スタノボイの各山脈とチベット高原、石狩山地、紀伊山地、九州山地。

アフリカはアトラス、アバディア、ドラケンスバーグの各山脈とエチオピア高原です。

オセアニアはグレートディバイディング、オーストラリアアルプス、ビスマークの各山脈です」


聞きなれない地名も結構あったがそれは良い。問題はこれで全人類を収容できるのかだ。事前に受けた報告だと問題がないようだったが。


「北米、南米、ヨーロッパ、オセアニアは余裕を持って収容できるためアジア、アフリカからも受け入れて収容する予定です。またこれらの他にも地下基地として軍の方で計画しているとも聞きましたが如何ですか?」


そう言うと内務大臣は隣に座っている安全保障大臣を見る。


「その通りです。現在稼働している軍港(ここでは宇宙船を扱う宙港の事を指す)は関連施設を含め地下へと移設する予定です。既にハワイやサンディエゴでは移設が終わっておりその他も半年以内には完成します。それが終わったら軍の工兵部隊も地下都市建設へある程度応援へ回せるでしょう」


ここでまた内務大臣へとバトンタッチする。


「地下都市計画は以上のようになります。詳しくは後ほど詳細をまとめたデータを送るのでそちらをご覧ください。それともう一つの案件であるデモですが、各地で起こっていた極左派系のデモと極右派系のデモに参加していた両デモ隊が衝突しまして既に死者が出ており、さらには間に割って入った警官隊と暴徒化した一部のデモ隊とが衝突も起こしております」


「はぁー…。なんでそんなことが起きてるんだ?」


人類の一大事という時に何をやってるんだという暗鬱な気分になる。身内で争ってる場合ではないのだ。


「元々は全く別の場所で行っていたはずですが、少数のデモ隊が警備の目を盗み相手のデモ隊に乱入したそうで…。その後はもうなし崩しに衝突になったと報告が上がってきてます」


「警備は何をやっていたんだか…」


腹の底からため息が出てくる。


「仕方ありません。ゴム弾と電撃、警棒では限界があります。しかも無関係の市民が近くにいたため無闇やたらと撃つ訳にもいきません。さらに暴徒化した一部のデモ隊による略奪行為の被害報告も上がってきてます」


「暫くは警察でなんとか抑えてくれ。今陸軍は動かしたくない」


「わかりました。善処します」


そう言うと内務大臣は一礼して着席した。


「他に報告のある方は?」


「資源エネルギー省からも報告がありますわ。現在のペースで各惑星から資源の輸送をしていますと万が一避難が始まった場合に必要量を確保できないと思われます。軍艦製造のキャパシティーを幾らか輸送船に回すことは出来ませんか?」


「農林水産省からも報告です。資源関係と同じくこのままですと食料備蓄が追いつきません」


次々と質問や報告が出てくる。それに対して対応する大臣か答えていく。


「輸送船については軍の保有のものを幾らか回しますが新規建造はドックの数が足りません。民間船の徴用でなんとかなりませんか?」


「民間船の徴用となると資金が入りますね。財務省としてはどうですか?」


「すぐに動かせる資金となると機密費ですが…、足りなければ戦時債務を刷るしかありませんね」


「ならばその方向でおねがいしますわ」


どうやら輸送船の問題はなんとか片付きそうだが問題は食料だ。


「植物工場の増設でなんとかならんか?」


「植物工場では野菜、果物類しか賄えません。肉、魚類はなかなか生産ペースは上げれませんね…」


「うーむ…。最悪の場合は配給制も敷かねばならんな。そこの所も踏まえてもう一度考えてくれ。何か方法があるかもしれん、民間企業とも連携を密にしてやってくれ」


「わかりました。なんとかやってみます。」


「他に報告のあるものは?」


辺りを見回すがとりあえず緊急性を要するような報告は無さそうだ。


「では臨時会議はここまでとする。各員とも本会議に向けさらに負担をかけるが頑張ってくれ。全ては地球のために」


「「はい!」」



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