迎撃
諸事情により月1投稿となりそうです。申し訳ありません。
迎撃
2202年 9月24日 GMT13:15分
土星付近
外惑星艦隊司令 オルデン・ルーカス
「レーダーに小惑星を確認。情報通りです」
「よし、各艦迎撃陣形に移行。手筈通り仕留めるぞ」
「了解!」
外惑星艦隊は小惑星迎撃の為土星付近まで艦隊を進めてきた。陣容は巡洋戦艦5隻、重巡洋艦5隻、軽巡洋艦10隻。先の海戦程の戦力はないが打撃力は十分にある。荷電粒子砲を搭載していない軽巡洋艦は撃破後に飛び散るであろう小破片の破壊が主任務だとなる。
「アステロイド1、ポイントA2を通過。迎撃地点まで3分。続いてアステロイド2、ポイントA3に到達。迎撃地点まで28分」
刻一刻と変わる小惑星の位置情報が読み上げられる。今回の作戦で破壊する小惑星は3つ。比較的小規模な小惑星であるアステロイド1とアステロイド2、それより大きいアステロイド3だ。アステロイド1及び2は艦艇に搭載している荷電粒子砲により破壊が可能との試算が出ている。
「全艦荷電粒子砲発射用意」
「了解、発射準備。艦内余剰エネルギーカット、メインエンジン出力最大」
艦内の余分な電力がカットされ荷電粒子砲へと回される。暗くなった艦内には非常用の赤色灯が灯る。艦橋もレーダー等の電子機器を除き全ての電源が落ちる。
「薬室内圧力上昇中。104…112…エネルギー充填120%です」
機関長からの報告が入る。これで撃つための準備は整った。
「アステロイド1、艦首前方4万6千Km。相対速度42」
「艦首軸線調整。上下角プラス2度、左右角マイナス1度。……艦首軸線に乗った」
レーダーからの情報を元に航海長により慎重に艦が回頭させられる。僅かにでもずれたら完全に破壊はできないので万全を期す。
「ターゲットスコープオープン。総員対ショック、対閃光防御」
それぞれがゴーグルをかける。艦橋の窓にも遮蔽スクリーンが降り、視界が非常に暗くなる。
「電影クロスゲージ明度20。荷電粒子砲発射用意」
砲雷長の座席の前にトリガーと照準器がせり出してくる。
「発射10秒前。10、9、8、7、6、5…」
砲雷長によりカウントが行われる。そして、カウントが進むにつれ緊張が艦橋をを満たしていく。
「4、3、2…」
誰かがゴクリ、と唾を飲む。
「1…」
艦首付近の光が強烈になる。
「0!」
カチリとトリガーを引く音がする。艦首の光が膨れ上がり次の瞬間、強烈な光線が放たれた。
外惑星艦隊10隻から同時に放たれた荷電粒子砲は収束しつつ小惑星に着弾する。表面の岩塊を砕き内部へと突き進んでいく。やがて反対側へ光線が突き抜け、小惑星が崩壊を始める。崩壊した小惑星は小破片となり四方八方へと散らばった。
「各艦エネルギー再充填、第二射に備えろ。軽巡部隊は小破片の軌道計算の後、危険軌道にあるものを破壊しろ」
艦隊各所で警戒をしていた軽巡が一斉に動き出す。7インチ、6インチ砲が唸りを上げ破片を破壊していく。アステロイド1の迎撃は成功裏に終わった。しかしこれで終わりではない。
「アステロイド2、ポイントA2通過まで後23分。続いてアステロイド3、ポイントA3まで後19分」
新たな報告が来る。あと二つ、気を抜くわけにはいかない。
「エネルギー再充填まで残り8分」
「よし、総員第2種戦闘配置のまま待機」
「了解」
「エウロパ基地より入電。ADM-3の発射準備完了との事ですれ
「わかった。予定通り発射してくれと返信しろ」
「はい」
アステロイド3にはポイントA2でミサイル攻撃をかけることが決定されている。荷電粒子砲により中規模の破片へと砕いたのちADM-3で完全に破壊する計画だ。
「エネルギー充填率75%。完了まで残り4分」
このまま順調に行くかと思われたが、現実はそう上手くはいかない。
「フィリピンズより入電、我エネルギー回路に異常あり。荷電粒子砲発射不可能なり」
「原因はなんだ?」
「エンジンのコンデンサーがイカれたみたいです」
巡洋戦艦1隻の火力は惜しいが無理をさせる訳にはいかんな。
「フィリピンズは直ぐに作戦宙域より退避、エウロパ基地へ帰投するように」
「了解」
通信士が交信を始め、しばらくするとフィリピンズが退避行動に移り始めた。
それから20分後、外惑星艦隊はフィリピンズの穴をしっかりと埋め、二つ目の小惑星の破壊にも成功する。またもや飛び散った破片を迎撃する軽巡部隊を尻目に艦長が呟く。
「さて、次は大物ですね」
そう。アステロイド3は今まで迎撃した二つとは大きく異なる。兎にも角にも、デカイ、の一言に尽きる。艦隊単独での迎撃は不可能との算出が出ているのでエウロパに配備されているADM-3も併用しての迎撃となる。また、万が一に備え内惑星艦隊や本星防衛部隊にも戦闘配置命令が出ている。
「全艦エネルギー充填完了。いつでもいけます!」
「アステロイド3、攻撃ポイントまで残り4分」
刻一刻と小惑星が迫ってくる。しかしここにいるクルーは殆どが冥王星沖で実戦を経験した者であり程よい緊張感を保ちつつもリラックスできている。最高のコンディションだ。
「各部署最終チェック」
艦長の命令に各部署のリーダーが報告をしてくる。
「機関異常なし、出力95%を維持」
「荷電粒子砲及び各砲とも異常を認めず」
「レーダー、電子機器全て異常なし」
「各システムオールグリーン。問題ありません」
どうやら問題はないようだ。後はタイミングさえ問題なければ上手く行くだろう。
「アステロイド3、攻撃ポイントまで30秒!」
すでに肉眼でも視認できるほど接近してきている。
「軸線固定。総員対ショック、対閃光防御」
「電影クロスゲージ明度20、発射10秒前。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!」
砲雷長がトリガーを引くと同時に強烈な光が艦橋を包む。
発射された荷電粒子砲は一直線にアステロイド3に進み、見事に命中した。