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006 握手 前編

──パァン!


そんな乾いた音が部屋に響く。


「な、何!? ……って、感染者ッ!? 」


寝袋から飛び起きた彼女は自分の目の前に倒れている鶏の姿となった感染者と……まだ銃口から煙を出している拳銃を持った俺を見て、唖然としている。


俺はただ驚いていた。まさか……、


「まさか、バリケードが突破されるなんて……ッ! クソッ! 」


そう呟きながら俺は壁を叩く。

それに対して彼女はあくまでも冷静に、


「……そしたらもうここも危ないわね……。今から出発した方がいいかも。」


と言った。



──……確かにそうだ。



「……確かに、もう脱出した方がいい……。早く準備してくれ。君のバイクの所まで……。」


「もう準備出来てるわ。」


俺の言葉を遮るように、彼女はそう言って微笑んだ。


……そういや、いつでも逃げられる様に準備していたんだっけ……。


彼女はSMGを構えながら、


「……じゃあ、行きましょう?」


と言って笑った。



──この時、俺はもうすぐ彼女とは別れ、二度と会わないだろう……。そう、思っていた。



……しかし。



「……嘘……でしょ!?」


彼女はそう叫んだ。


車やバイクは俺たちが泊まっていた廃墟から少し離れた所に停めてある。そっちの方が奴らが近付いて来て脱出……なんて時でも奴らの所為で逃げられなくなるのを防ぐ為だ。


……しかし。


彼女のバイクが停められていた道は、無数の感染者でいつしか……埋め尽くされていたのだ。


「……こ、こいつら何処から湧きやがった……!? 」


俺はそう叫ぶ。


感染者は少しずつ俺たちに近づいてくる。……どうする!? あれだけの数じゃ二人掛かりでギリギリバイクまで辿り着けるかもしれないが……バイクまで辿り着いたとしても彼女は逃げられないだろうし……このままじゃ、二人とも……死……。


「……ねぇ。」



彼女の声で急に俺は我に返った。


「な、なんだ? 」


そう俺が彼女に聞くと、彼女は


「貴方の車……あれで逃げられない?」


そう言ったのだ。


「……!? 」


……そうか、それなら!


「……確か、車ってバイクが停めてあるこの道の真後ろに停めてあったわよ……ね?」


「あ、ああ……。」


「……あれで逃げましょう?……ただ、後ろにも結構感染者、居るのよね……。」


俺は後ろを見る。確かに数は多いが……なんとか突破は出来そうだ。


「……噛まれたらおしまい。ただ、この数を相手にして噛まれないのは……難しいわね。」


そう言って彼女は笑顔を見せたが……その顔には明らかに焦りの色が感じられた。


俺は少し考えた。そして……。


「……よし。じゃあ! 」


そう言って俺は彼女を抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこって奴……なんだろうな。


「……ちょっ!? 何するのよこんな時に! 」


彼女怒った様な声でそう俺に言う。それに対し俺は、


「……俺が車まで走る。君は目の前に感染者が来たら、撃ってくれ。」


走りでは多分、俺の方が早い。


「……それ、大丈夫なの?」


そう不安そうな顔で聞いてくる彼女。そんな彼女に俺は、


「心配するな。 多分大丈夫だ! 」


と言って笑いかけた。


それを聞いた彼女は少し笑い、そして、

「……根拠のない自信ね。 ま、いいわ。」


と言って銃を構える。


「……じゃあ、行くぞ?」


そう言って俺は……走り出した。

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