004 毒の缶詰
──俺が彼女に捕獲された日の夜。俺たちはビルの三階に泊まることになった。周りは完全にガードしてあり俺以外の感染者は侵入する事は出来ないだろう。
「……これ、食べる?」
「……ああ、食べる。」
「……以外ね。感染者は生肉しか食べないと思ってたんだけど。」
封を切った缶詰を俺に見せながら意外そうな顔をする彼女を見ながら、俺は苦笑した。
「……感染者がそういう加工食品を食べる事が無いのは、ただ単にそれを開けられる程の知能が無いからだ。
それに奴らはドアを開ける程の知能は無いからな。例えば中に生存者がいたらドアを叩いたりとかしてたまたま開く時もあるのかもしれないが……まあとにかく、加工食品がある室内に入ることも出来ないって事だ。」
そう俺が説明すると彼女は自分の分の缶詰を食べながら驚いた表情で、
「へぇー……、そうなんだ……。」
と言う。……って。
「……おいおい、どうやって俺は食べるんだ……? 」
そりゃ、両手を縛られてたら食べられないだろ……。
「あー。大丈夫大丈夫! ちゃんと考えてあるから。……はい、あーんして。」
そう言われたので俺は大人しく口を開け──って、待て待て。
「……ちょっと待てよ! 何!? 食べさせるって事かよ!? 」
そう俺が叫ぶと女は当然、という表情で、
「……そりゃあ、食べないと死んじゃうし。だからといって縄を解く訳にもいかないし……だったら、こうやって私が食べさせないといけないでしょ? 」
と言った。
「うぅ……。」
は、恥ずかしいんだが……。
「ほら、さっさと口開ける! 」
彼女はそう急かして来る。
──し、仕方ない……。
俺は大人しく口を開く。すると口の中にスプーンで缶詰の中身を入れられた……って!?
「ぎゃあああああああこれカレーだあああああああああぁぁぁぁぁ! 」
──辛いいぃぃぃぃ! しかもスパイスがっ! スパイスが嗅覚をおぉぉぉぉぉぁお!?
「えっ……ど、どうしたの? 」
あまりのショックで失神した俺をその後彼女はオロオロしながら見ていたらしい……。