003 会話
Brute's man side.A
「……!?」
──銃声のした方に駆け付けた俺は、ただ驚いた。
そこに居たのは、眉間を撃ち抜かれた三体の感染者達と……一人の若い人間の女だったのだ。
「……。」
女は黙って俺に銃口を向けてきた。そしてそれに対し俺は両手を上げ、
「撃つな。敵意は無い……。」
と言う。すると女は驚いた表情を一瞬浮かべ、
「……あなた、言葉が分かるの?」
と言った。
──「ごめんなさい。……貴方は言葉が分かる人だとは思う、けど……その……何と言うか……。」
「……分かっている。"念の為"だろ?」
そう俺は彼女に言いながら両手を縛っている縄を見せる。彼女は少し苦笑すると、
「……ええ、貴方の言う通り……"念の為"よ。」
と言い、俺はそれに対して、
「良い心がけだ。」
と言って笑った。
……彼女は此処とは違う都市で、警察官として働いていたらしい。そしてある時その都市で感染者が現れ、やがて感染を抑えきれなかった都市を離れたそうだ。
そして感染者が劇的に増えた今は、町を渡り歩いて生きている……そうだ。
──定住しないのは正解だと思う。定住すれば、感染者はどんどん集まって来てしまうからな……。
──彼女は自らの名前を名乗らなかった。理由を問うと彼女は呟くように「……名前は捨てたわ。過去の色々な事を……思い出すから……ね。」と言い、顔を伏せた。
……ま、それについては俺も名前は名乗らなかったからお互い様か。ま、俺の理由は"知らない"だがな。
──とゆうか、こんな風に"誰か"とマトモに会話したのは何年ぶりなんだろうな……。
ふと俺は、そう思い最後に会話したのがいつか思い出そうとしたが、ダメだった。……もしかしたら、記憶を失った後、と言う事であれば初めてかも知れない。
──そんな"普通"であれば当然の事を、俺はずっとして無かったのか……。
そう思うと少し可笑しくなり、俺は笑ってしまう。
──と、同時に……他人と会話出来た事を、嬉しく感じた。
あと二話くらいで終わりかな?